7話 掃除をしよう
「うわぁ…」涅槃像のように寝そべり、テレビを観ているぷらたんをみて心を痛める。
背中が、汚いのだ。薄ピンクだった毛の一部が真っ黒になっている。動物園のペンギンコーナーのような臭いもする。ずっと見ないふりをしてきたわたしが悪い。
わたしは掃除が苦手だ。きれいにしても、いつのまにやら散らかっている。床に物を置く癖がよくないのだと思う。けれど、置くのをやめられない。仕事帰りは、ハンガーに服をかける力も、郵便物を整理する頭も残っていない。
原因がわかっているのに解決できないことなどあるのだな。いや、これ以外にもたくさんあるか。
よし、掃除をしよう。
まずは、掃除機をかけよう。「ぷらたん、掃除機かけていい?」「えーテレビの音聞こえなくなるなの」旅番組なんて音がなくても楽しめるだろう。「すぐ終わるからいいでしょ」「ぶー」不機嫌そうにほっぺを膨らませている。今時こんなにテレビを楽しめるなんて少しうらやましい。
クローゼット付近にたててある掃除機を手に取りスイッチを押す。少し音を鳴らせた後、すぐに鳴りやむ。そういえば充電をしていなかった。萎える。すごく萎える。「んー? やるならはやくしてよお」いつもならここで挫けてやめてしまうだろう。けど、ぷらたんの一言でイラっとしたので意地でも掃除をしたくなった。
掃除機がないなら、コロコロをすればいい。掃除機よりもめんどくさい作業であったが、やりはじめると意外と楽しい。髪の毛、ぷらたんの抜け毛、ほこり、想像以上にたくさん取れた。床がどんどんきれいになっているということだ。達成感がある。
軌道に乗ったわたしは洗濯、食器洗い、郵便物の整理を次々とこなした。疲れるが、気持ちいい。憂鬱なときは掃除をしろと誰かが言ってたのを思い出す。確かにその通りかもしれない。
さて、最後の大仕事が残っている。風呂嫌いのぷらたんをどう入れさせるかだ。ずっと彼の風呂嫌いには困っていたが、めんどくさくて放置していた。今日を逃したらまた、放置してしまいそうだ。この薄汚くてペンギン臭を漂わせている生き物を薄ピンク色の石鹸のにおいがする生き物へ変えてみせる。両こぶしを握りしめ、決意する。
考えろ。ぷらたんが興味ありそうなものはなにかないか。「あ!」だいぶ前にスーパーで何となく買ったものを思い出した。お風呂場へ行きそれを手に取る。「ぷらたーん。見て見て」「んあー?」だるそうにテレビを観ながらこたえる。
それをぷらたんの顔の前にぶらぶらとゆらす。「え! え! テレタビーズだ!」ぴょんと起き上がり、興味津々な顔になる。「バスボール。溶けると中から小さいフィギュアがでてくるよ」「ほしいなの! くださいなの!」「いいよ。もう沸かしてあるから、お風呂に入ってきなよ」「ありがとう!愛花ぁ!」
キラキラ宝石みたいに目を輝かせながら、ぷらたんはお風呂場へ向かった。単純でかわいい。こんなに簡単ならもっと早くすればよかった。
「中身、ランダムだから何出てきたか見せてねー」「うん!」わたしはティンキー・ウィンキー推しだ。ぷらたんはポー推し。理由は聞いてないが、雰囲気が似ている。人は自分と似ているものに惹かれるらしいからたぶんそうなんだろう。どちらかが出てきてくれたらうれしい。




