CASE:悟
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時刻は15時45分。ちょうど終礼が終わったところだ。
俺は悟。自分で言うのも何だが、ものすごく頭が良い。
今日も教室で微分積分の勉強だ。
「おい、悟、勉強よく飽きないな……」
こいつは、俺のクラスメイトの閏土だ。閏土はテスト前にいつも焦っている。テストの時期から逆算して対策すればよいのに、なぜ勉強しないのか、頭が良い俺でも理解できない。
「ひえー、むずそうだな……よくやるな」
楊ちゃんもそう言った。別に今やっているのは大学で習うレベルの微分積分だ。この程度、俺にとってはウォーミングアップでしかない。
「x=±113√2/2、と……」
「じゃあ俺らは帰るわ」
閏土と楊ちゃんは帰ることにしたようだ。
しかし彼らは教室を出て、ロッカーのあたりで駄弁り始めた。これも予想の範囲内。俺は物理学の専門書を取り出し、学び始めた。今は素粒子物理学を極めている。
今読んでいるところにはスーパーカミオカンデの話がのっていた。スーパーカミオカンデの原理がしれて、ものすごくためになる。いずれ、空気中の素粒子の動きを予測することで未来予想などにもつながるのだろうか。
そんなことを考えていたその時だった。16時5分だった。
ドォン、と大きな衝撃が俺を襲った。閏土と楊ちゃんも驚き、慌てふためいている。
しまった、想定外だ。地震が起こった。
俺は慌てて机の下に潜り、閏土と楊ちゃんを誘導した。
「カバンで頭を守れ!!」
俺は一旦落ち着いて状況を整理する。
……この感じだと、マグニチュードは9.0、震源地は愛媛県のあたりだな。過去最大級の地震だ。
ここの震度は6強。となると、10秒後にテレビが頭上に落ちてくるだろう。
俺は急いでテレビから遠い机に移った。
直後、ガシャン、と鈍い音がした。
テレビが落ちてきたのだ。
やはりこういうとき、勉強していてよかったと感じる。
俺は冷静に机の下に伏せている閏土と楊ちゃんに声をかけた。
「大丈夫か?」と声をかけると、二人は恐怖で顔を青くしていた。
だが、俺は気を引き締めた。これから先、どうするべきかを考えなければならない。
「とにかく、建物から出るんだ。避難経路を確認しろ。」俺の声には迷いがなかった。
こういった時こそ冷静に行動しなければならない。自分の知識を活かして、まずは生き延びることが大事だ。
楊ちゃんが震えながら口を開いた。「でも、外に出るのは危険じゃないか?まだ揺れてるし……。」
「揺れてるからこそ、だ。建物が崩れる前に避難した方がいい。」俺は言いながら、すぐに机の下から出て、あたりを見渡す。
「閏土、楊ちゃん、早く!避難用のバッグは持ったか?」俺は急かした。どんな状況でも、冷静に行動できる者が最も生き延びる。俺は既に避難準備が整っていた。
外に出たところで、道はガタガタ揺れ、周囲の建物が崩れそうになっていた。倒れた街灯や落下したガラスが道に散乱している。
「急ぐぞ、あそこに避難所がある。あの公園まで走ろう。」俺は指示を出し、先頭に立って歩き始めた。閏土と楊ちゃんも後に続く。
「お前、冷静すぎだろ……」と、閏土が呟く。
「こういう時に慌てても何もできない。冷静に判断して動ける奴が生き残る。」俺はさらりと答えた。自分でも不思議なくらい、冷静でいられる自分に驚きつつも、今はその冷静さが最も必要だ。
公園に辿り着くと、避難している人々が集まっていた。騒然とした雰囲気の中で、テレビの放送が流れているが、内容が不安を煽るものばかりだ。
「愛媛県南部、マグニチュード9.0の大地震が発生……」その放送を耳にした瞬間、俺はふと考える。震源が愛媛だということは、これから津波の危険もあるだろう。
「閏土、楊ちゃん、30分後に津波の可能性がある。今のうちに高台に避難しろ。」俺は冷徹に指示を出す。
閏土と楊ちゃんは黙って頷き、俺に続いて高台を目指して歩き出した。途中、周りには自分と同じように冷静に行動する人もいれば、パニックになっている人もいた。
「こっちだ!」俺は道を先導しながら、周囲に注意を払う。避難所が満員で、人々が一斉に動き出す中で、冷静に方向を示し、無駄な時間を取らないようにした。
しばらくして、ようやく高台に到着した。息を整え、周りを見渡すと、すでに多くの人々が避難してきていた。だが、まだ安心はできない。地震の後も余震が続く可能性が高い。津波の警報も出ている。これから何が起きるか、予測するのは難しい。
「おい、悟、冷静すぎて逆に怖いんだが……」楊ちゃんが少し怖がったように言う。
「だが、冷静に対処しないと、俺たちは生き延びられない。」俺は再び言い放つ。頭の中で次に何をすべきか、どう行動するべきかを考え続けていた。
これから、世界がどうなろうと、俺は生き抜くために最善を尽くす。それが、俺が今持っている唯一の責任だ。
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