第02話 現実(ゆめ)の君へ
放課を待つ間、尋真は澪の言葉をずっと反芻していた。
嘘だろ?
もしここが夢だとしたら、どうしてここまで首尾一貫していて、論理的だっていうんだ?
それに、小さい頃からの人生全体の記憶だってある。これが最も強力な証拠のはず……
え?
記憶……
尋真は突然立ち止まった。
待て、自分の記憶は、どうしたんだ?なぜ急にこんなに混乱しているんだ?
今は高三で、二年前に入学したのは確かだ。
では、入学前は?
入学前、自分は何をしていた?何を経験した?
なぜ……なぜ思い出せないんだ!
「なぜだ!」尋真は机をバンと叩き、震えながら立ち上がった。
「和泉君……?」授業中の教師も他の生徒も、一様に驚いた顔をしていた。
だが尋真はもうそんなこと構っていられない。放課後まで待つこともできず、そのまま教室を飛び出した。
今すぐ澪を見つけ出し、今すぐはっきりさせなければならない!
彼女が何年何組の生徒か知らないけど……それなら一教室一教室、聞いて回ればいい!
どうせここが本当に夢なら、少しくらい放肆な行為をしたって構わないだろう!
尋真は次々と他の教室のドアを押し開けた。
「霧島澪!」
奴の名前を呼びながら、彼女を探す。
しかし尋真が高三の階全体を探し回っても、まだ奴を見つけることはできなかった。
「なんだよ……まさか二年生か?」尋真は息を切らしながら階段の上で立ち止まった。
「ねえ、私を探してるの?」
「え?」
聞き覚えのある声に、尋真は振り返った。
案の定、その穏やかで甘い顔立ちに似つかわしくない不良風の格好をした少女が、腕を組み、階段口に寄りかかって、見下すように自分を見ていた。
「で、そんなに急いで私を探して、何がしたの?」澪は軽く笑った。
尋真は目を細めた。「俺は……記憶をたくさん失っている」
「それこそ、ここが夢だって証拠じゃない?ここはお前自身の人生じゃないんだから、お前の記憶にあるのは夢が構成した虚構の断片だけってのは、ごく普通だよ」
「だが、この夢はあまりにも首尾一貫しすぎていて、リアルすぎる!俺の友達も、クラスメイトも、みんなすごくリアルだ!」
「はっ!じゃあ監獄のあの囚人たちはリアルじゃないっていうの?単に学校の人たちの方がより普通で、より日常的で、より常識的な認識に合ってるってだけじゃないか!」
「……ま、そういうことか」尋真はため息をつき、ゆっくりと階段を上り始めた。
そして澪のそばまで来た時、彼の眼つきは急に冷たく変わった。
別人に変わったかのように、尋真の表情はもはや優しさを残しておらず、手を上げて信じられないほどの速さで澪の首を扼した。
「ドン——」澪は乱暴に壁に押し付けられた。
「ねえ、さ……」尋真は無表情で彼女を見つめた。「じゃあ、お前の論理に従えば、俺がいる学校は俺自身の虚構の夢ってことになる。なら、自我を持ち、俺に警告を発しているお前は……どんな役割を演じているんだ?
あるいは、俺さえここが夢だって気づいていないのに、この夢の中の役柄であるお前は、どうやってそれに気づいたんだ?」
「く……はあ……」呼吸困難に陥った澪は苦しそうな声を漏らしたが、尋真を見つめるその淡紫色の瞳は病的な興奮に満ちていた。
彼女は両手で尋真の手首を掴んだ。「本当に鈍いね……私はここが夢だって言っただけで、お前専用の夢だなんて一言も言ってないよ?なぜ最初から他の人間も虚構だって決めつけるんだ?」
「!」
「私に関して言えば、もちろんわざわざここに侵入して、お前が目覚めるのを手伝いに来た人間だよ、バカ。」
尋真は手の力を少し緩めたが、眼差しは相変わらず冷たかった。
少し考えて、彼はずっと聞きたかった質問を口にした。「つまり、俺たちは前から知り合いだったのか?なぜわざわざ俺を助ける?」
「その答えは、やっぱり自分で探したほうがいいわ」
尋真は突然ぎょっとした。
なぜなら、澪は笑っているのに、目の端に涙の光を宿していることに気づいたからだ。
「尋真、現実で、私を見つけて」
彼女は尋真を強く押した。
尋真は胸に巨大で窒息感を伴う力を感じ、まったく制御不能に後ろへ仰け反った。
眼前は早送りを押されたかのように、すべてがグロテスクでチグハグな残像へと変わった。
「なに……が……」
尋真が我に返った時、彼は地面に転倒していた。
いや、ベッドに転倒していた、と言うべきか。
彼は監獄に戻っていた。
周りの環境は、すべて自分の独房の様子に変わっていた。
戻ってきた……のか?
尋真は黙って自分の両手を見つめた。
そうだ、戻ってきた。澪の言う現実世界に。
しかし、記憶は?
彼は目を閉じてしばらく考え込み、最終的に淡い陰鬱を帯びて目を開けた。
やはり、記憶は相変わらず断片的で、なぜ自分が投獄されたかさえまったく思い出せない。
だが、澪が最後に彼を押した時に言ったあの言葉が、少し気にかかる。
「現実で彼女を見つけろ……?」
あ、そうだ!まずこれはさておき、そういえば……あの頭が180度回転した看守はどうなったんだ?
このことを思い出し、尋真はようやくベッドから起き上がった。
扉から外を覗こうとしたが、手をかけた瞬間、「きいっ」という音とともに、ドアが押し開けられた。
「え?」尋真は非常に意外に思い、というよりむしろ震撼した。
「看守がドアを閉め忘れる」なんて、どれほど確率の低いことだ?!
だが、看守の頭が180度回転することを考えれば、こんなこともさして珍しいとは言えないだろう。
そこで、尋真はまっすぐ外へ歩き出した。
ドアの外は一片の静寂で、灯りもなく、巡回する看守もおらず、まるで誰もかいなくなったかのようだった。
「もう夜になったのか?」
尋真はガラス越しに隣の独房を覗いたが、人は見えなかったようだ。
また、赤く点滅している監視カメラを見上げたが、まだ正常に作動しているようだ。
まあ、とにかく、まずはここから脱出する方法を考えよう。
看守はいなくなったが、脱獄するのはやはり非常に難しい。
警備室と所長室は行政区域にあり、その区域は囚人区域とは隔離されている。囚人区域から行くには、まず鍵を手に入れなければならない。
尋真は周囲を観察しながら、二つの区域を隔てる大きなドアの方へ歩いていった。
二歩も歩かないうちに、足元の感覚がおかしいことに気づいた。
尋真が下を見ると、本来なら滑らかで平らなはずの地面が、いつの間にか土道のように……腐敗していた。
一歩踏み出すたびに、「べちゃっ」という粘っこい音がする。
足を上げると、黒赤い正体不明の液体が靴底から流れ落ちた。
尋真がそれが何なのかよく見ようとした瞬間、かすかな音が少し離れたところから聞こえてきた。
瞬間的に、尋真は音源の位置を特定し、頭の中に二つの考えが瞬時に浮かんだ——
先制するか、弱さを見せるか。
尋真は後者を選んだ。
「だ、誰だ……そこにいるのは!」
彼の顔には、本物と見紛うほどの慌てた表情が浮かんだ。




