僕が志望校に合格した瞬間 存在そのものが消えてしまう彼女
僕の名前は裕介。高校3年生。
東都大学合格を目指して受験勉強中な中、彼女ができた。
彼女の名前は、裕子さん。とても、ミステリアスな女の子で未来予知能力があった。
サッカーの国際試合の結果から、身近なクラスメイトが引っ越しという身近なことまで、次々と当てることができた。
彼女はとても知的でそれでいてかわいい。彼女と手を繋ぎたい。デートしたい、そしていつかは押し倒して。
「だめだ」
彼女を汚してしまう妄想をする日々に罪悪感を抱えていたある日、彼女の方から告白された。
「私とお付き合いしてください!」
僕たちは勉強会と称し、お家デートを重ねた。彼女の教え方は目覚ましく、僕が、わからなくて詰まっているところを手にとるように把握していた。みるみる学力も上がっていくし、いいにおいにドキドキするしで。ああ、神様、僕はこんなに素敵な女の子と幸せになっていいのでしょうか。
☆ ☆ ☆
私の名前は裕子。ある重大な使命を課されている。
このままでは、彼氏の裕介が3ヶ月後で死んでしまう。だから、阻止しなければならない。
このままの歴史だと彼は東都大学の前期試験に落ち、後期試験は滑り止めの北都大学を受験する。受験会場に向かう最中、車にはねられるのだ。
なぜ、そんなことを知っているか。それは、私の前世が裕介だったからだ。
私は、彼が悩んでいること、女の子に対する欲望から勉強に詰まっているところまで手にとるようにわかった。なぜなら、過去の自分の悩みだからね。
だから、彼女として近づき、勉強をおしえて、東都大学に合格させる。それが、私の使命だ。
だが、おそらくは、その瞬間、私の存在は消える。なぜなら、歴史が変わり、裕介が女子に転生する世界線そのものがなくなる。
でもいいの。第三者目線で見た元の自分は思いの他、優しくて紳士的だ。彼が、順風満帆な人生を送れるなら、私は、犠牲になって存在が消えてもいい。
ああ、神様。なぜ、僕を美少女に生まれ変わらせたのですか。その方が彼には近づきやすいけど、でも、失ったときの彼のショックは、きっと、とてつもなく大きい。
☆ ☆ ☆
合格発表の日、自分の番号が張り出されているのを見つけた。
「やったー!」
幸せの絶頂!
「裕子に知らせなきゃ!あれ?」
彼女の電話番号とSNSアカウントがない。おかしい。胸騒ぎがした。彼女の存在が消えてしまったような。
そんな!僕は彼女の存在がない人生なんて意味がない。彼女をお嫁さんにもらうためにここまでがんばってきたのに!
嘘だ!嘘だ!嘘だー!
あれ?スマホのバイブが鳴っている?
知らない番号だ。
「ごめーん。電話とかSNS全部リセットしなくちゃいけなくて。急遽、正式に私の戸籍とか別人としての存在とかいろいろとOKになってさ」
「裕子!」
「改めて君の彼女にならせてください」
「こ、こちらこそ」
よくわからないことを言い出すが、生きていて本当によかった。
「これまでは君の興味関心に合わせてれば可愛い女の子できたけど、これからは、正式に女の子の勉強しなきゃ。君のことが好きだから、アイデンティティと性自認、ちょっと君好みにがんばって変えてみるね」
よくわからないことを言い出すが、生きがいができたような顔をしていた。
僕は彼女と結婚し、二人の子どもをもうけた。
ミステリアスな彼女の能力の正体はわからなかった。
だが、僕も彼女も子どもたちも幸せな日々を過ごしている。




