中野ブロードウェイ文章発掘記 〜滅びた文明と尊い信仰〜
ここはかつて地球と呼ばれた星らしい。
文明が滅びて1万年が過ぎたこの星に我らは調査に降り立った。
かつては、この星もおそらくインターネットや紙、木簡のような媒体に情報が記録されていたはずだ。
だが、そんな保存性の低いメディアは今となっては残っておらず、残されたのは石板に職人の手で刻まれたごく一部の文章だけだ。
我々はこの星で3つの石板を発見した。
ギルガメッシュ叙事詩、エジプト壁画、そして、中野ブロードウェイ文章だ。
本当は、この星における知的生命体の衣食住の情報こそ文化人類学の研究において価値が高い。だが、彼らが後世に残したがるのは、決まって神話の類である。まあ、それはそれで研究対象ではあるが。
果たして、地球の人々は何を信仰していたのだろうか。
中野ブロードウェイ文章は腐女子なる人物が筆者である。腐女子というのは個人の名前なのか社会的階級や家系を表す固有名詞なのかは今日の我々には推測するすべがない。
このアジアと呼ばれる地域には、老子、孔子、孫子といった人物が諸子百家と呼ばれ尊敬されていたとの調査が別働隊から入っている。この腐女子という人物もおそらくは⋯…。
しかし、インターネットなどがありそうなくらいには、文明がある程度、進んだと思われる時代に、石板に文字を刻むのである。並々ならぬ熱意を持った人物がこの物語を後世に残そうとしたに違いない。
この神話には2人の男性神が登場する。ムフィとベジタブル。どうやら、ドラゴンピースなる神話体系から派生したものらしい。だが、その原著の情報は今となっては消失している。この文章には本来の聖典があって、これはその外典の位置付けだろう。内容としては男性神同士が、嫉妬と誤解を重ねたあと結ばれるという内容のもの。なるほど、多神教か。
このことから、この文明において、同性愛というものが神聖視され、宗教的儀式と密接に結びついていたことがわかる。ありし日の文明の姿が目の裏に浮かぶようだ。
「男でも女でもいい。お前が好きなんだ」というセリフが刻まれている。
おそらく、当時の人々は、性の概念を超越することで悟りのようなものを開いたのだろう。
おや?通信機器が光る。部下から連絡が入った。どうやら新しい文書が手に入ったらしい。急がねば。
「トーキョービックサイト文書?」




