女体化心霊少女と男体化言霊男子14 イケメンの心の傷
<面食>
「お願いします! 僕をイケメンに整形してください!」
「今の君は、十分すぎるほどイケメンだよ? 自信持ちなよ」
「お世辞はいいんです。もっと、目を大きく! 切れ長に!」
「困ったなあ⋯⋯」
私は、整形外科医の面食、美男子の患者、池田くんから整形の依頼を受けていた。
醜形恐怖症。自分のことを醜い肉体だと思い込む思春期によくある心の病だ。
朝から晩まで鏡とにらめっこするようになり、そして、人によっては、たとえ、美男美女であっても整形を望むようになる。
池田くんがイケメンなのはお世辞ではない。そりゃあ、女の子が「きゃー!」って黄色い声援をかけ、「彼女にしてください!」とラブレターを渡すような有名人のようなわかりやすいモテ方はしないだろうけどさ。
女子会とかで噂話出そうな感じではあるよ。
ここまで変な思い詰め方していると、メンタルクリニックに誘導したくなるけど、この調子だと余計、本人が心を閉ざしてしまう。弱ったなあ。
「もういいです! きっと、僕は呪われているんだ! よその病院に行く!」と飛び出す。
「あ! こら!」
まいったなあ。未成年は親の同意が必要だから、普通の医者はあの子の手術、断るけど、今の時代、どんな脱法手術があるかわかんないわ。
心配だよ。
どこに相談すればいい? 学校? 児童相談所? 市役所の福祉窓口? 生活相談員? 警察?
どこもうまくやれないように思えた。
そういうところで、働いている人たちが悪いというわけではない。制度の中で動ける範囲は限られているのだ。助けたくても助けられない。
今の日本の限界を感じる。
でも、もし、社会の制度に組み込まれていないアウトローであれば⋯⋯。
<霊子>
「今日の依頼は何?」と魂太。
「整形外科医に頼まれて家庭訪問。醜形恐怖の霊が取り憑いていないかってさ」
「ふーん。なるほどねえ。ちょっとだけカルテと問診票のコピー見せて」
「はい。一応、個人情報保護法上、本当は私たちが見ちゃダメなものだからこっそりとね……」
左右を見て、誰も歩いていないところを魂太にチラ見せする。
「なるほど⋯⋯。問診票の文字に言霊が」
そう言うと魂太はどこかに走って行ってしまった。
「あ、こら! 落としたら女医さんが、責任問われるからちゃんとバインダーに挟んでリュックに入れなさい!」
「わかった!」
もう! 勝手なんだから。
「祓い給え! 清め給え!」
除霊完了。
「で、幽霊はいたんですか?」と池田くん。
「浮遊霊はいたけど、心霊写真に映り込むくらいで害はないはずなんだよね。どう? 整形したくなくなった?」
鏡を見せる。
「うわああ、僕はなんてキモいんだ。変なところにほくろついてるし、左右対象じゃないし! 整形するんだあああ!」
「やっぱり幽霊のせいじゃなかったみたい」
そのとき、ピンポーンとインターフォンが鳴る。
魂太が女の子を連れていた。制服は着てたけど、池田くんとは違う高校だねえ。
「ひさしぶり」
「あ、鹿毛口さん⋯⋯」
どうやら中学の頃の同級生らしい。
「なんつーか。ごめん。中学の頃、キモいだなんて言って。そんな心に深傷をおってるなんて知らなかったんだ」
なるほど、彼女に昔、言われたことを気にしてたのか。
「でも、本当に僕がキモいからそんなことを⋯⋯」
「そんなわけない! 掃除サボってるの注意されてむかついて、うまく言葉で言い返せないから、キモいって言葉使っただけなんだよ。女子がキモいって言葉使うときは、だいたいムカつくの意味なんだよ。本当にキモいやつなんて話題にもしたくないよ」
「言霊が消えた」と魂太。
なんか、些細なすれ違いで人間の心ってすれ違うんだなあ。
私たちの冒険は続く。




