女体化心霊少女と男体化言霊男子13 プレゼント交換アプリの悲劇
「あんた、また新しいアプリ作ったの?」
「へへーん。とっておきのビジネスなんだ。その名もプレゼント交換アプリ!」
私の名前は英子。大学のビジネス学科に通っている。MBAという国際的に通用する経営者の資格に向けての勉強をしつつも、学内起業を企んでいる。
今の時代、世界を華やぐSNSアプリや動画アプリのように、新しいサービスを作って、世界中の人に使ってもらう。それが私の夢だ。
小さくビジネスをはじめるのは現代の起業の鉄則。社員を雇わず、一人であれこれできないといけない。ITインフラからプログラミング、法務から営業まで自分自身でやる。
小学生の頃のクリスマス会を思い出す。プレゼント交換楽しかったんだよね。あの喜びをみんなで分かち合いたい。そう思ってサービスを開設したんだ。
サービスはクローズドなところからはじめた。有名大学の子たちが会員となり、コミュニティ機能で仲良くなった人同士、予算3000円、5000円、10,000円のコースで自分がいいと思ったモノを交換し合う。
みんなが幸せになってみんなが喜んでくれる。そんな風に思っていた。
半年後。
『段ボールの空箱プレゼントされたぞ!ふざけんな!』
『マツタケって書いてあったから開けたら、テーマパークの予約なし入場券がはいってたわ。待つだけってメモが……。ふざけないで!』
クレームのメールが殺到し、対応に追われている。
どうしてこんなことになったの? サービスの最初の1ヶ月はみんな喜んでくれてたのに! 徐々に会員を増やしてスケールアップしたらこんなことに。
もしかして、悪霊に憑かれている? 霊媒師を呼ぶことにした。
「祓い給え! 清め給え!」
「除霊・・・・・・終わったの?」
巫女衣装の女体化男子に私は質問する。
「一応、Webキャッシュサーバサービスに悪霊はついていたから除霊しといたけど、キャッシュサーバって、プレゼント交換サービスだけじゃなく、よそのWebサービスにも広く使われてるものだから、クレームが多い原因ではなさそうなんだよね」
といいながら、言霊少年に目配せすると少年は語り始めた。
「僕、頭のいい人たちの世界のことはわかんないけど、来週のこの授業になんか、言霊が漬いているようにみえるんだよね」
と、言いながらシラバスを指さす。
一般教養のマクロ経済学か。単位とは関係ないけど、空き時間だから、試しに1回だけ受けてみようかな。
市場の失敗という回だった。
教授は説明する。
「1970年、アカロフというアメリカの経済学者は、市場の失敗というテーマの論文を書いた。どんなに善意で経営をはじめても必ず失敗してしまう、そんなビジネスのお話だ。当時、中古車屋はトラブルが多かった。思ったように買い手がつかなくて売買が成立しない。それはなぜなのかを分析したんだ。車を売りたい人は、傷があったり、走り過ぎて燃費が悪いという車のマイナスの情報を隠したがる。買い手はそれを知りようが無い。粗悪な車を買わされる経験を積んだ消費者は、中古車全部が信頼できないと思ってそっぽを向くようになった。これを粗悪品市場っていうんだ。参加者が増えるとそうなりやすい。人間を商品に見立てると怒られるかもしれないが、マッチングアプリも近年、同じ構造の問題を抱えている。市場の失敗は、法律で禁止されたりするほどじゃないけど、参加した人を不幸にするくらいのものだってことは、昔から学者たちはわかっていたんだ」
腑に落ちた。私のビジネス、そういうことだったんだなあ。
人間を幸せにしようと思っはじめたものでも、最後には不幸になる呪われた仕組み。
きっと、世の中、他にもそんなものいっぱいあるんだ。
よし、失敗は成功のもと。
次こそ、人間が欲望を追求しても幸せになるアプリ、作ってやるんだから。




