女体化心霊少女と男体化言霊男子11 ハイスコアと実績解除
<霊子>
「ゴール! 1位! まあ、俺のドリフトさばきならこんなものだね」
「5位かあ。さっきより順位あがったけどさ。魂太ははやいなあ」
私たちは家庭用ゲーム機でレースゲームをしていた。
「へたくそ」
「む。でも、私も負けてないわよ。実績解除がこれだけあるんだから」
ゲーム機に溜め込んだトロフィーを見せびらかす。
「話がずれてるよ。レースゲームなんだから、ハイスコア、短時間でゴールした方が偉いに決まってるだろ」
「むー⋯⋯くやしい」
「へへーんだ」
こんな会話で彼氏といちゃつく休日。会話でちょっと負け役になって一歩引いてあげる優越感も含めて私にとって心のオアシスだ。ちょっと反論しつつ、彼を立ててあげられたのうれしい。女の子になってよかったあ。
「なににやにやしてるの?」
「なんでもない」
「人生って長距離走だから、意外と実績解除型の方がいいかもしれないよ?」
「パパ!」
魂太くんのパパに声をかけられる。
「今の時代の社会の仕組みだとハイスコア型の努力をした方が出世しやすいし、若い頃は経済的に成功をおさめやすい。結婚とかもしやすいかもしれない。でも、いざ実力を求められるときって、意外とものを言うのは、ゲームオーバー的な体験も含めて、実績解除的な挑戦を増やそうとしたときに得られたことなんだよ。まあ、出世コースに乗る人は、いろんな部署や海外を回されるけど、それでも、解除される実績は意外と偏っていたりして。世の中の人物評価はハイスコア型で動いていると割り切りって、表ではほどほどにスコアレースから脱落していないふりをしつつ、裏で実績解除型の動きをする。今はそんな感じで社会の矛盾の海を泳ぎ切る時代だよ」
「ふーん」
わかったようなわからないような。
もやもやを抱え、次の日学校に向かった。
文化祭の出し物を決めるらしい。
「俺にチャンスをくれ!」
挙手をしたのは、戸馬くん。確か去年、3組で学園祭リーダーをやって大失敗をやったって評判の……。
「お前なんかにやらせるわけないだろ」と野次。
「頼む! もう一回チャンスを!」
私は魂太に目線と飛ばすが首を横に振る。特に言霊に憑かれていないようだ。悪霊にも憑かれていない。
「そんなこと言ったってなあ。2組の槍手とか、陸上部のキャプテンだし優等生だし、リーダー任せても安心だけど、戸馬はなあ⋯⋯」
反対意見は上がったが、他に立候補者がいないので、戸馬くんがリーダーを務めることに。みんな呆れた顔をする。
隣のクラスに行くと槍手くんがいた。魂太が鋭い視線を向ける。
どうやら、言霊に呪われているらしい。
「親からの圧力による推薦進学の呪いにとらわれている。槍手にとって、学園祭委員長はあくまで踏み台。そこまで真剣に取り組む気はない」と魂太。
「いいよなあ。2組は槍手で。うちのクラス3組なんて戸馬だぜ」なんて噂が耳に入る。
学園祭当日、3組の出し物、異世界水滸伝は大成功を収めた。裏方から役者から演技指導まで、戸馬は完璧な段取りをした。一方の2組は散々だった。ライトはあたってないは、マイクは消音だわ、演技もやる気ないわ。
明暗がきれいに別れた。
戸馬くんに話を聞く。
「俺、去年の失敗が悔しくてさ。失敗したポイントをメモして、同じことを繰り返さないシミュレーションをしたの。なんつーか。中学生のうちにプロジェクトの空中分解経験できて良かったよ。大人になってからだと大変なことになるからさ」
いつもの屋上の夕暮れ。
「男と女の経験、こうして、両方積むのも悪くないかも」
「そのうち女の子側の経験の方が豊富になるかもよ?」
「こらっ!」
私たちの冒険は続く。




