女体化心霊少女と男体化言霊男子9 本当の居場所
<木村>
「お前みたいなキャラ見たことがないよ。普通、変わり者といっても、たとえば、オタクならオタクらしいキャラがあるだろ? お前はノンカテゴリーだ。珍獣だよ珍獣」
野球部の練習前、僕は言われた。
僕、そんなにこの世にいないタイプかな……。
子どもの頃から孤独だった。男友達ができなかった。このままでは大人になっても社会になじめない。
心が弱いから体だけでも強くなるために野球部で頑張ってきたけど・・・。
悩んでいたら、部室に取り憑いた動物霊の除霊にやってきた言霊少年は言われた。
「友達に言われたことに呪われてるみたいだね」
「ほっといてよ」
「まあ、君みたいな男の子ほとんどいないかもね」
「ぐさっ。遠慮がないなあ」
「でも、君みたいな女の子だったら、実はそんなに珍しくないんだよね。変わり者枠ではあるけど、女の子にはよくいるタイプ。この少女漫画読んでみな?」
「うるさい! 人を馬鹿にして!」
と、いって帰る。
女の子なら、珍しくないねぇ。
少女漫画を眺める。
しわしわネームの内気な女の子が友達や男子と打ち解ける。少女漫画としては王道の一種らしい。
確かにちょっと僕と似ている。
よし、何か描いてみるか。SNSアカウントを開設する。
少女漫画のような絵柄は無理だけど、少年漫画のトレースならした小学生の頃したことがある。
少年漫画風の絵柄で男キャラと女の子が手を繋ぎおしゃべりする絵。
SNSのアカウントを開いて投稿したら、思いの他、いいねをたくさんもらった。楽しい!
正体を知られず純粋な漫画の面白さだけで評価される世界。それは夢にまで見た空間だった。
男性向けラブコメとして投稿して居たが、心の機微の書き方が女の子に刺さった。
女性が女性に向けて描いたものだと思われたらしい。気がついたら女子社会に組み込まれた。
女の子社会はちょっとギスギスすることもあるし、気も使うこともあるけど、野球部よりも居場所がある気がした。
繊細な心の揺れやちょっと依存性のある恋愛を描くと、その尊さを理解してもらえる。それで十分だった。
だけど、性別を明かしたとき関係は終わる。女の子同士でも縄張り争いや細かいルールがあるんだ。
幾多の男が過去に女社会を壊してきた前科がある。だから、警戒するのは当たり前。僕の本当の居場所はここではない。そんな後ろめたさもあった。いつか去ろう。そう考えていた。
『ほっかいどうだしこんぶさん。高校生で地元同じじゃないですか? 今度女子会しようよ! 御手洗あずさ』
ど、どうしよう。性別ぼかすために台所にある食べ物のハンドルにしたけど、いざ、ネット慣れしてみると、それが却って女子っぽくみえるようだ。
こういうのって早く返事した方がいいよね。でも⋯⋯断るにもどうやって断れば。
アカウント消そうかな。僕の本来の居場所は男社会のはず。
悩んでいたら、ついつい授業中もスマホを取り出してしまう。
「ああっ! ほっかいどうだしこんぶさんって木村くんだったの!?」
その声に見上げると、クラスでメガネを掛けたおとなしめの女の子、えっと、確か、島波さんだったっけか。
「ご、ごめんなさいっ!」
「なんで謝るの? 君の漫画いつも楽しませてもらってるよ。そうだ! 合同同人誌作ろう! 女子の友達たくさんいるけど、君なら大歓迎だよ」
僕は野球部をやめた。漫画を描くのが楽しくなったのもあるけど、もともと、受験が気になってたんだよね。スポーツ推薦もらえるほどの選手じゃないから。
さすがにオフの女子会は恥ずかしいのでそこまで参加できなかったけどオンラインで、同じクラスの仲間と交流を深めていった。
僕達が大人になったとき、僕達が夫婦漫画家として、名を馳せるのは、また別の話である。
<心霊女子>
木村くんの話を魂太から、聞かされる。
「羨ましいな」
「なんか言った?」
「な、なんでもない」
「素直じゃないんだから」




