女体化心霊少女と男体化言霊男子5 勝ち組と負け組
<同級生視点>
「今度、雇おうと思ってる中学生霊媒師、女体化男子らしいが」
「多様性の時代だし、仕事ができれば何でもいいんだが⋯⋯。それより、セットでついてくる言霊男子っていうのは誰だ?霊媒師単品で雇えないのか?」
「それが、アフターサービスのためだと言い張るんです」
「はあ」
「それはそうと、勝田のやつも呼ぶ?」
「なんで、そこ悩むんだ?」
「だって、犬島が過労死して地縛霊になったの、ある意味、勝田のせいみたいなもんじゃん。勝田がしつこくニートは情けないから家を出ろって煽るもんだから」
「いや、そこはさすがに本人の自己責任だろ」
<勝田視点>
俺の名前は勝田。
新卒の頃は就職氷河期だった。
だが、弱音は吐いていられなかった。
勝ち組の人生を歩むためにできることはなんでもした。
ボランティア、インターン、バイト、サークル、エピソード作りのためになんでもした。
就職科のイベントに参加する。
「就職を勝ち取るには、お笑い芸人を見習ってネタ帳を作ってください。この時代、普通に真面目にやってるだけでは、競争率の高さに埋もれてしまう。個性のある人間だと思われないといけません」
俺はネタ帳を作り、男芸者に徹することにした。本音を隠して、当時の年長者が好きそうなちょっと生意気だけど空気を読める当時の若手お笑い芸人をモデルにしたキャラの仮面を被ることにした。
俺にはよくわからないが、当時の大人にはその方が次の時代を切り開いてくれるホープに見えたらしい。
その結果、東証一部、現在のプライム企業に入社し、俺は順調に出世コースに乗った。組織の潤滑油を目指した。芸人の仮面はパワハラから身を守ってくれたし、女性にももてた。
あれから25年か。同窓会もなかなか開かれない。負け組になった連中がそれだけ多いってことか。
と、思っていたら、同級生から除霊カンパの呼びかけが。なんでも、クラスメイトの犬島が過労死して以来、地縛霊となって除霊をしたいという。
あいつら心霊なんて信じてるんだねぇ。ちょっとからかい半分に参加してやるか。
「勝田課長。ちょっと話がある」
「なんです?部長?」
☆ ☆ ☆
「祓え給え!清め給え!」
除霊は完了したらしい。
「ふん。地縛霊になるなんて死んだ後も社会性のないやつだった」
「勝田お前⋯⋯」
立ち去ろうとしたところ、言霊少年が立ちふさがる。
「な、なんだよ⋯⋯」
「強がらなくて良いんですよ。今日集まったメンバーは、みんなそれぞれの道を進み苦労しながら人生経験を積んだいい大人たち。あなたの本当の今の身分を知っても馬鹿になんかしたりしない」
頭に鉄槌がくだされったようだった。胸が苦しくなり、ひざまずいてしまう。涙が止まらない。
部長に呼び出された俺は部下のいない課長になった。いわゆるリストラ部屋で、会社の利益に寄与しない精神を消耗するような作業を強いられ、肩書は次長だが、実質リストラ執行人に連日怒鳴られながら過ごした。
俺は退職し、転職活動に徹したが、社内政治に特化したスキルセットは転職市場では役にたたない。本当の自分の市場価値を思い知らされた。ローンは返せなくなり妻とは離婚。転落人生を歩むことになった。
事情を話すと周囲は意外と暖かく受け入れてくれた。
「俺、デイサービスを開いててさ。職員を探していたんだ。ローンの足しになるかはわからないけど働いてみるか?次の仕事までのつなぎのつもりでいいよ」
「俺はなんて軽薄だったんだ⋯俺は⋯⋯」
☆ ☆ ☆
<心霊少女視点>
「大人って仮面をいくつも持ってるのね」
「そういうあなたも女の仮面、うまく使いこなしてるでしょ?」
「あなたが男の仮面被ってくれてるから⋯⋯」
「なにそれ?私の正妻役やってくれるの?」
「うるさいなあ」
「ふふっ。かわいいなあ」
私たちの冒険は続く。




