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25_リカバリーウェアを作るわ③

 リカバリーウェアが出来た。

 マーシーが火山灰を手配して、綿の繊維に火山灰を練りこむ技術――物を細かくして練りこむ工業用魔道具は既にあるらしい――も手配して、リカバリーウェアは完成した。


 それを受け取った私は、早速身につけて生活してみた。

 最近は少し肌寒くなってきたが、リカバリーウェアで身体じゅうの血の巡りが良くなったのを感じる。

 家の中を暖めなくても、いつもよりも元気に過ごすことが出来た。



 ****



 ギルベルトとの約束の数日前になって、私は寝具店へと訪れていた。マーシーとの話し合いをするためである。

「リカバリーウェア、使わせてもらったわ。いつもより身体の調子が良かったし、私の要求することは全部叶えてくれた。ありがとう」

「そいつは良かった。これでギルベルトのやつも納得してくれそうか?」

「…………」

「ネージュ? まだ気になることがあるのか?」



 私が迷っていることを察知したのか、マーシーはそう聞いてくる。

 私は正直に伝えるようにした。



「このリカバリーウェアは前着たのと同じくらいの効果を感じたの。そこが迷ってるところかな……」

「前と同じくらいならいいんじゃないか? 俺も試してみたが、効果は感じたぞ?」

「でも、劇的に疲労回復するかというとそうではなかったんじゃないかな。回復魔道具を使ったのと比べて、どう?」

「……それはまあ、回復魔道具の方が効果は高いとは感じたな」

「そうでしょ? リカバリーウェアは人によって効果を感じるか感じないかが分かれやすい。ギルベルトや他の兵士たちが効果を感じなかったら、インチキだって言われちゃうかも」

「だが、他の商品でも言えることだが、買った全員が満足するかというとそんなことはないと思うぞ? どこかで覚悟した上で発売に踏み切るべきだろう」

「それはそうなんだけど……」




 私は下を向いて考える。

 普通の新商品なら私もここまで悩まない。

 でも、今回はギルベルトという貴族が店を攻撃している状況だ。故に、いつもより慎重になっているのだ。



 何か無いだろうか。

 ギルベルトも他の人もみんなしっかり効き目を感じてくれるように、効果を底上げする方法は……。




(今回、勉強のために回復魔道具を使ってみた。あれがあるとまるで仮眠を取った後みたいに覿面に疲れが取れる。リカバリーウェアもあれくらいわかりやすく効いてくれたらいいのに。でも、あれは回復魔法ありきの効果であって、しっかり効く回復魔法は利権で独占されてるって……うーん)



 私はサンプルのリカバリーウェアの生地を指で触りながら、マーシーの言っていたことを思い返す。



 …………。



 …………!




「マーシー、ちょっといい? 教えて欲しいことがあるの」

「なんだ?」

「回復魔道具は一定の効果が認められるものが利権で独占されてるって、そう言ってたよね」

「そうだ。魔道具の中を占める魔素の濃さが一定量を超えたものが規制対象になる。公的な認定を受けていない回復魔道具もあるが、それらは魔素の含有量が基準値までいっていないものになるな。効力も認定を受けたものよりは薄い」

「じゃあ……私たちの作った道具に規定量以下の回復魔法を掛けるのは大丈夫なのよね?」

「まあ、それは問題ないだろうな。ただし、さっきも言ったように効き目は弱くなる。微弱な回復量ならわざわざ魔法を使う意味は薄いと思うが。コストが嵩むだけだ」

「でも、魔法抜きで道具そのものに癒し効果があるなら、回復効果を底上げすることは出来るよね? 0.5+0.5は1になる、みたいな感じで」

「…………」




 私の言葉を聞いて何か思いついたのか、マーシーは私が指で弄んでいるリカバリーウェアをじっと見つめた。



「そうか……そのリカバリーウェアに規定量以下の回復魔法を掛ける。そういうことだな?」

「当たり。それでリカバリーウェアの疲労回復の効果をもっと高くしたいの」

「確かに、それなら利権の問題もクリア出来るだろう。コストは……リカバリーウェアを今の材料で作る限り、製造コストはかなり低く済む。それに加えて回復魔法のコストがかかっても、問題にするほどじゃないな」

「……じゃあ!」

「ああ。やってみよう。うちのツテを使ってリカバリーウェアに回復魔法を付与するようにする。その上で、どれくらい効果が変わるものか試してみよう」




 紆余曲折あって、私たちのリカバリーウェア・改は完成した。

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