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24_リカバリーウェアを作るわ②

 万人によく効くリカバリーウェアを作ることが私の目標だ。

 でも、最初から「決定版」のようなものを考えるのはハードルが高いかもしれない。

 だが、とりあえずもととなるものが無いと始まらない。

 と言う訳で、まずは前世のリカバリーウェアに近いものを作ろうと考えた。



 私は傍らに置いたメモ帳と筆記具を取り、マーシーに話しかける。




「今回必要なのは、着心地のいい肌着。ちょうどコットンの寝間着を作ったから、それをベースにしたい。それに加えて、鉱石が必要になるの」

「鉱石……? 念の為に聞くが、服の話なんだよな?」

「鉱石の中には、熱を伝えるものがあるのよ。石を暖めて栗を焼いたら中までほくほくになるでしょ?」

「それは確かにそうだが……食い物とは訳が違うぞ。服の生地を焼く訳にはいかないだろう。コットンの生地をベースにする予定らしいが、滑らかな材質が台無しになっちまう」

「流石に焼きはしないわ。服の生地の中に、すごく細かくした鉱石の粒を練りこむの。それを着込むことによって、鉱石の成分の効果で人間の身体に熱を与えて、疲労回復に繋がる。そういう仕組みなの」

「それで本当に効果が出るものなのか……?」

「全員が疲労回復出来るかはともかくとして、私には効果があったわ。身体がぽかぽかする感じがした」



 私がそう述べると、それまで半信半疑で話しているマーシーの目つきが変わった。彼の中でリカバリーウェアのイメージが形を帯び始めたのかもしれない。



「なるほど……。冬でも暖が取れるくらいに発熱する服もあるが、それらは温度を変える魔法が付与されたもので、ギルドの利権が絡むし、相応に値段もかかる。だが物質を細かくして練りこむだけなら、ウチの商会のツテでも可能かもしれない」

「ほんと? なら、作れるかな」

「だが、鉱石というところがネックだな。その辺の石を砕けばいいなら原価はゼロに近いが、石屋で取り扱われるようなものは中々高価だ。それが使われた服もぐんと高価になる。それに使われる石はどんなものがある?」

「私が覚えている範囲だと……トルマリンとか」

「トルマリン? 宝石じゃないか。アクセサリーのために加工されていない、天然のトルマリンでもまあまあ値は張るぞ。それを衣料ひとつひとつに砕いて使うのは現実的ではないな」

「……でも、ギルベルトを納得させるだけなら、非売品でリカバリーウェアを作ればいいんじゃない? 多少原価が張っても、一人納得させればいいなら、それで……」

「いや。ギルベルトは『商品をもってこい』と言っていた。やつは俺たちが店頭に並べるような商品で効果を出せるかを見たいんだろう。特別な一品を持っていっても駄目なんだろうな」

「うーん……」



 こう話していると、中々条件が厳しい。

 いけそうなやり方を考えても、コスト面で弾かれてしまう。

 ちゃんと商品として流通させられそうで、かつ効果がありそうなものを考えないといけないのか。



 リカバリーウェアを作るには、トルマリンでないと駄目ということはない。他の鉱石でも大丈夫だったはず。

 石屋に行って、安価でめぼしい鉱石がないか探して、一つ一つ繊維に混ぜて実験してみようか。



 そんなふうに原料を考えているうちに、私の目に机の上の新聞が映った。

 ここ最近のニュースの報道で、火山の噴火した地域について書かれている。

 清掃作業の中で出た大量の火山灰をどう廃棄するかが課題――そのようなことが述べてあった。




 …………。




「そっか……火山灰だ」

「火山灰?」



 私の呟きに呼応して、マーシーが聞き返す。



「ああ、そこの新聞に載っていることか? 火山灰除去をどう進めていくかは俺の知り合いの業者も話題にしていた。灰を何かに活用出来ればいいんだが、今のところ有用な使い方が思いつかないんだと。せいぜい観光のみやげにして微量でも役立てるのがいいんじゃないかとか、それにも手間がかかるなら最初から廃棄してしまった方がとか、色々な話が出たぜ」

「そうなんだ。捨てるくらいなら……その火山灰、こちらで引き取ることは出来る?」




 私の提案に、マーシーは首を傾げる。



「俺たちが引き取るのか? 何か使い道はあるのか?」

「リカバリーウェアの素材として使えるかもしれない。火山灰の中には石の粒が沢山入っているでしょう?」



 マーシーがはっとした顔をした。



「そうか……火山灰を繊維に練りこんだら、鉱石を砕いたものと同じ効果が得られるかもしれない」

「そういうこと」

「しかも、仕入れ値もほぼかからない。今回の大規模噴火に限らず、街に降る火山灰の処置については話題になっていた。いつも持て余して困っているくらいようだった。俺たちが引き取れば喜んでくれるだろう」

「引き取るのにかかる時間は……」

「今日明日でいける。店を閉めないといけないこともあって、開発の作業に専念することが出来る。ウェアを作る実験は明日には取りかかれるだろう」



 それを聞いて、私はほっとする。

 これで材料の目処がついたわけだ。

 今提案した材料でうまくいかない可能性もあるけど……そのときはそのときで考えよう。


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