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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
36/38

第三十五話『第一章 転校生』


 イジメが続いていても、俺はただ平然を装っていた。どれだけ酷いことをされようが、俺は周りのヤツらと同じレベルにはなりたくなかったから。

 法律があるなら、アイツらは全員殺人未遂で捕まるハズだ。

 でも、俺は耐えた。

 どうしても心がもたなくなった時は、帰り道に泣いた。


 でも、泣いたのが親にバレたくなくて、いつも雨の日は濡れて帰っていた。


「ザァァァァ────」


 時刻はまだ夕方の四時頃なのに、外は夜みたいに暗かった。

 数えきれないほどの雨が、川に落ちる。

 周りの音が無くなり、雨の音しか聞こえなくなっていたのに、頭の中は何も聞こえなかった。

 

「くっぅ……うぅ…。 うぅぅ……。」

「…………!!」


 降り続いていた雨が突然消えた。

 でも、俺の周りでは雨がまだ降り続いていた。

 視線を上げた俺の目に入ってきたのは、傘を持つ手を伸ばす一人の女の子だった。


「どうしたの? 大丈夫?」


「えっ、あ、いやっ……」

「な、別に、何でもないし。」


 腕で目をゴシゴシと擦りながら俺は答えた。

 目の前の女の子は同年代っぽく見え、久しぶりに近しい年齢の異性と話した俺はテンパっていた。


「………」


「ねぇ、傘ないの? コレ、貸してあげようか?」

「え?」

「私はここから家が近いし、使いなよっ!」


「はいっ!」


 そう言って、彼女は俺に似合わないピンクの傘を渡して、降り続ける雨の中を去って行った。


─────────────


 次の日、俺は学校のホームルームで声を上げた。


「あっ!!」

「あっ──!! キミ─!!」


「ん? 何だオマエら、知り合いだったのか?」

「いや、違っ……!!」

「昨日の泣いてた少年じゃん!」

「なっ! 泣いてねぇし!!」


 しばらくの沈黙の後、担任の教師が俺を見て話し始める。


「何かあったんなら先生に言えよ〜。 あと、話が進まないから、おしゃべりは終わりな〜。」

「えー、親御さんの都合で、本日から転校してきたアマネトキさんだ。 皆仲良くしてやれよ〜。」


「カッ──カッ、カッ──」


 黒板に白いチョークで名前と振り仮名を書いた少女は、元気よく挨拶をした。


「雨音トキです! 訳あって、こっちに引越してきました。 これから残りの生活をよろしくお願いしますっ!」

「なら、席は一番後ろの空いてる席を使ってくれ〜」

「はい」


「!!」

「………! フンッ。」


 彼女が席を探していると、一番後ろの席に座る俺と目が合い、俺は咄嗟に目を逸らしてしまった。

 その後の彼女の表情は見えなかったけど、その時俺は……何故か、凄く心がモヤモヤしたんだ。


─────────────


「隣かよ……。」


 机に片肘をつきながら、窓の方を眺めながら俺は呟いていた。


「なに? 嫌だった?」

「別に。 まさか、昨日のバカが転校生だとは思わなかっただけだ。」


 俺は振り返り、手を広げながら隣に座る「雨音トキ」を挑発した。


「なっ─!! バカって、あなたに傘を貸してあげたのに失礼な人ね!」

「別にいらなかったし。 てか、どのみち濡れてたんだから意味ねーじゃん。」

「あっそ! 人の"優しさも知らない"のね! 可哀想に!!」

「なッ!!!」


 その瞬間俺は立ち上がっていた。

 何を言ったのか、自分でも分からないくらい周りの音がシーンとして、クラスの生徒がこっちを見ているのもどうでもいいくらいの声量で怒鳴っていたと思う。


「オマエに俺の何が分かんだよッ!! 優しさなんて"偽善"だ!!」

「誰かのために優しくするヤツがいつも損するんだよッ!! 優しくすればするほど、自分が傷つくんだ! そうやってオマエみたいに軽々しく自分は正義だと勘違いしてるヤツが俺は大っ嫌いだッ!!!」


「なっ……なんなのよ……。」

「そんなに怒らなくてもいいじゃない。 ごめんって。」


「……ハッ!!」


 俺が教室を見渡すとあまりの声量だったのか、さっきまで騒がしかった教室の中は一瞬にして無音となっていた。


「い、いや。」

「俺の方こそ怒鳴って悪かった。」


「とにかく……ほっといてくれ。」

「………。 あっそ。」


 お互いが反対側に振り返りながら、さっきまで青空だったのに、いつの間にか曇り空へ変わっていた空を唇の内側を噛みながら、眺めていた。

 それが、彼女との二回目の出会いだった。


─────────────


 雨音トキが転校してきて数日、彼女は明るい性格と態度で、友達が増えていった。

 その間にも、俺への嫌がらせは続いていた。

 でも、彼女には知られないように、オモテの顔は良くしていた。


 そんなある日、俺への嫌がらせを彼女が知ってしまった。

 そして───


「ちょっと、なによこれ……。」

「誰が……」


 周りを見渡すと、生徒はみな目を背けていた。

 その様子に雨音は声を挙げて叫んだ。


「こんなことして、何が面白いのッ!?」

「みんな無視してたの? ねぇ。」

「誰も先生に言ったりはしてないの!?」


「もういい。」

「えっ?」

「やめてくれ。」

「何言って……アンタそれで泣いて──」

「もういいって言ってんだろッ!!」

(やめろ。 それをしたら今度はお前が。)


「それ以上俺に関わんなよ。 キメーよ、その正義。」

「仲良しごっこでもしてろよ。」


 俺は机に『死ねっ』『消えろ!!』と書かれた落書きをそのままにして、カバンを手に取り教室を出ていった。

 サボりたければサボればいい。

 

 『(ひょうてき)』がいなきゃ、平和なんだから。



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