第三十四話「『君と過ごした時間。』」
タイムスリップ前から行きつけの喫茶店にて、ブラックコーヒーを嗜むオレは、『雨』を題材にした『恋愛』小説のプロットを練っていた。
窓際の席で、全面ガラス張りとなっている為。外を歩く人々の景色が横目に入って来ていた。
「恋愛……か。」
夏をテーマとするなら、学生がメインか?
となると、学生同士の青春話となるわけだが。
あいにく一度目の人生では、まともな恋愛なんてして来てないわけで、いかんせん脳内の小さなオレ達がワードを運ぶことが無い。
小さなオレが、何人もいて。せっせと『あ行』から『ん』までの散りばめられた文字を運ぶんだ。
オマエはアッチ、オマエはコッチだ!ってな。
筆が進む時は、自動で動き出すオレ達も。
話が浮かばない今、脳内のオレ達は絶賛コーヒーブレイク中ってわけさ。
一息ついて、みんな座ってる。
「さて、どうしたもんかな。」
「トン──トンッ───トン。」
テーブルに指をトントン押し当てながら、数分の無言が続く。
「…………よし。」
頭の中で最終回は決まった。
キャラから考えていくか。
まあ、現代恋愛だし。普通の日本人らしい名前が望ましいが……流石に何かしらのテーマか想いは込めたいな。
主人公は男にするか。
物語の展開的に、女がヒロインの方が良さそうだ。
まあ、ヒロインと言えば、ヒロインだが。
今回の話で言うならば、二人共が主人公とも言える。
男主人公は、虹村 架流とかか。
女主人公は……雨音 トキにするか。
さて、次は内容だな。
まあ、出会いとラストはもう浮かんでいるから、展開を考えなきゃいけない。
無難に、ヒロインが転校生とかでいいか。
「架流は、トキに救われる形でいこう。」
そう、ピュアな物語だ───
─────────────[作品の内容]
俺の名前は虹村架流。
中学三年生。成績はあまり良くなくて、いつも補習を受けてばかりだ。
まあ、学校なんて通えればどうでもいいよな。
好きで行きたいヤツもいれば、仕方なく行くヤツもいる。
もちろん、行きたくないヤツだってな。
無理して学校になんて行く必要なんてないんだよ。
結局は本人の自由だし。
ただ、その代わり……学ぶための機会を捨ててる選択をしている。と言うことは自分の責任なんだ。
口で言うだけなら誰だって出来る。
でも、その結果の責任は取ってくれないだろ?
まあ、俺が考えたわけじゃなくて、先生から教えてもらったんだけどな。
俺だって、ホントは学校なんか来たくねぇよ。
今じゃあ、クラスの『的』だからな。
あれは、クラスのいじめられっ子を助けた後だった。
─────
「誰も、助けてくれなんて言ってないだろ。」
「ハァ!? オマエ、あのままやられっぱなしで良かったのかよ!!」
「何もしなければ、もっと酷くならないかもしれないだろ!!」
「余計なことすんなよ!! 偽善者が!!」
「なっ……なんだよ、それ。」
次の日、俺が教室に入ると彼の取り巻きは消えていた。
そして、自分の席に行くと、机の上に酷い言葉が書かれた落書きがしてあった。
「な、なんだよこれ。」
「おいっ!! 誰がこんなことしたんだ!」
もちろん周りは知らないふりをした。
答えると、自分が次の『的』になるからだ。
偽善者よりもよっぽど賢い立ち回りかも知れないな。
でもな、ソイツらは……直接手を下さないだけで本当はただの『共犯者』だ!!
イジメをするヤツが悪い?されるヤツが悪い?止めないヤツが悪い?
そんなの、するヤツが悪いに決まってるだろ。
しなけりゃ平和だ。
見て見ぬふりじゃなくて、教師や親に相談しろよ。
教師も、聞くだけ聞く体で、見て見ぬフリしてるクズもいる。
世の中でどれだけイジメが起きてるか分からないだろうな。
みんな我慢してるんだ。孤独で、耐えて、迷惑をかけないように黙ってる。
気づいたヤツが、誰かに知らせてやらなきゃいけないんだ!!!
でも、イジメをしてるヤツらも事情があるかもしれない。
ヤツらはどこか壊れてるんだ。
そう。壊れるヤツらは、みんな"愛が足りない"ヤツばっかなんだ。
俺の父さんが言ってた。
人はみんな弱いんだ。だからな、愛が足りないヤツは、誰かを傷つけやすくなるんだって。
愛は人を強くさせる不思議な魔法なんだって。
だから父さんは、父さんのことを愛してくれてる母さんと結婚したんだって。
多分、俺をイジメるヤツらは可哀想なヤツらなんだ。
だから、俺はなんてことない。
俺は母さんや父さんから愛されてる。
こんなどうでもいいヤツらなんて、無視してればいい。
俺は強いから。他のやつの分まで背負ってやれる。
そうして、二学期になるまで、俺は『的』になったまま耐え続けていた。




