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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
35/38

第三十四話「『君と過ごした時間。』」


 タイムスリップ前から行きつけの喫茶店にて、ブラックコーヒーを嗜むオレは、『雨』を題材にした『恋愛』小説のプロットを練っていた。


 窓際の席で、全面ガラス張りとなっている為。外を歩く人々の景色が横目に入って来ていた。


「恋愛……か。」


 夏をテーマとするなら、学生がメインか?

 となると、学生同士の青春話となるわけだが。

 あいにく一度目の人生では、まともな恋愛なんてして来てないわけで、いかんせん脳内の小さなオレ達がワードを運ぶことが無い。

 小さなオレが、何人もいて。せっせと『あ行』から『ん』までの散りばめられた文字(ワード)を運ぶんだ。


 オマエはアッチ、オマエはコッチだ!ってな。

 筆が進む時は、自動で動き出すオレ達も。

 話が浮かばない今、脳内のオレ達は絶賛コーヒーブレイク中ってわけさ。

 一息ついて、みんな座ってる。


「さて、どうしたもんかな。」

「トン──トンッ───トン。」


 テーブルに指をトントン押し当てながら、数分の無言が続く。


「…………よし。」


 頭の中で最終回は決まった。

 キャラから考えていくか。


 まあ、現代恋愛だし。普通の日本人らしい名前が望ましいが……流石に何かしらのテーマか想いは込めたいな。


 主人公は男にするか。

 物語の展開的に、女がヒロインの方が良さそうだ。

 まあ、ヒロインと言えば、ヒロインだが。

 今回の話で言うならば、二人共が主人公とも言える。


 男主人公は、虹村(にじむら) 架流(かける)とかか。

 女主人公は……雨音(あまね) トキにするか。


 さて、次は内容だな。

 まあ、出会いとラストはもう浮かんでいるから、展開を考えなきゃいけない。

 無難に、ヒロインが転校生とかでいいか。


「架流は、トキに救われる形でいこう。」


 そう、ピュアな物語(ストーリー)だ───


─────────────[作品の内容]


 俺の名前は虹村架流(にじむらかける)

 中学三年生。成績はあまり良くなくて、いつも補習を受けてばかりだ。

 まあ、学校なんて通えればどうでもいいよな。

 好きで行きたいヤツもいれば、仕方なく行くヤツもいる。

 もちろん、行きたくないヤツだってな。


 無理して学校になんて行く必要なんてないんだよ。

 結局は本人の自由だし。

 ただ、その代わり……学ぶための機会を捨ててる選択をしている。と言うことは自分の責任なんだ。

 口で言うだけなら誰だって出来る。

 でも、その結果の責任は取ってくれないだろ?


 まあ、俺が考えたわけじゃなくて、先生から教えてもらったんだけどな。

 俺だって、ホントは学校なんか来たくねぇよ。

 今じゃあ、クラスの『(ひょうてき)』だからな。


 あれは、クラスのいじめられっ子を助けた後だった。


─────


「誰も、助けてくれなんて言ってないだろ。」

「ハァ!? オマエ、あのままやられっぱなしで良かったのかよ!!」

「何もしなければ、もっと酷くならないかもしれないだろ!!」

「余計なことすんなよ!! 偽善者が!!」


「なっ……なんだよ、それ。」


 次の日、俺が教室に入ると彼の取り巻きは消えていた。

 そして、自分の席に行くと、机の上に酷い言葉が書かれた落書きがしてあった。


「な、なんだよこれ。」

「おいっ!! 誰がこんなことしたんだ!」


 もちろん周りは知らないふりをした。

 答えると、自分が次の『(ひょうてき)』になるからだ。

 

 偽善者よりもよっぽど賢い立ち回りかも知れないな。

 でもな、ソイツらは……直接手を下さないだけで本当はただの『共犯者』だ!!

 イジメをするヤツが悪い?されるヤツが悪い?止めないヤツが悪い?


 そんなの、するヤツが悪いに決まってるだろ。

 しなけりゃ平和だ。

 見て見ぬふりじゃなくて、教師や親に相談しろよ。

 教師も、聞くだけ聞く体で、見て見ぬフリしてるクズもいる。

 世の中でどれだけイジメが起きてるか分からないだろうな。

 みんな我慢してるんだ。孤独で、耐えて、迷惑をかけないように黙ってる。

 気づいたヤツが、誰かに知らせてやらなきゃいけないんだ!!!

 

 でも、イジメをしてるヤツらも事情があるかもしれない。

 ヤツらはどこか壊れてるんだ。

 そう。壊れるヤツらは、みんな"愛が足りない"ヤツばっかなんだ。


 俺の父さんが言ってた。

 人はみんな弱いんだ。だからな、愛が足りないヤツは、誰かを傷つけやすくなるんだって。

 愛は人を強くさせる不思議な魔法なんだって。

 だから父さんは、父さんのことを愛してくれてる母さんと結婚したんだって。

 

 多分、俺をイジメるヤツらは可哀想なヤツらなんだ。

 だから、俺はなんてことない。

 俺は母さんや父さんから愛されてる。

 こんなどうでもいいヤツらなんて、無視してればいい。

 俺は強いから。他のやつの分まで背負ってやれる。


 そうして、二学期になるまで、俺は『的』になったまま耐え続けていた。


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