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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
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第三十三話「プロになるために」


 次の日、オレは学校をサボり喫茶店に訪れていた。


 行きつけの店。そう、大人だった時に通ってた店だ。ブラックコーヒーがとにかく美味しくて、店主の趣味とも合うと思う。


 特に店の外装や内装だ。

 物静かな薄暗いオレンジ色の優しいライトの室内に、黒っぽい木材でできた内装の全ては、自然の歴史を感じることができるような幻想的な空間だからだ。

 

 オレンジのライトに、レトロな木材の家具。

 素晴らしい芸術空間だ。


 オマケに本棚まである。

 まあ、作品の大半は店主の好みだとは思うが、中には渋いのや子供向けの本も並べてある。


 客の暇つぶしも兼ねているんだろう。

 気の利く店主だ。


 その店主もダンディなおっちゃん?いや、おじさんかな。体型は細めで、優しいそうなおじちゃんだ。

 コーヒーを淹れる仕草にいちいちプロ感がある。

 いや、プロか。


 なんなら、プロの淹れるコーヒーよりも美味いまであるしな。


「おっと、もうなくなってしまったか。」

「マスター、もう一杯同じのを頼む。」


 隅にあるテーブルゆったりと手帳を開き、オレはアイデアを出そうとしていた。


 結局、体調のことも考えると……一つに絞った方がクオリティはいいかもしれない。


 だが……どれだけ自分の中で傑作だと思っていても、それは読者にとっては分からないし、違ってくる。

 全員が全員、同じ感想なんて持ち合わせていないからな。


 それだけファンが大事な存在なんだってことだ。

 無名のやつがいくらいい話を書こうが、それが目につかなきゃ意味がない。


 それに、評価を得る機会がなければ、人間は初めの一人になろうとしない。

 人の心理的な問題だな。


 周りからの評価が無ければ、それは面白くないの"かも"しれない。評価されてないから別に自分もしなくていい"かも"しれない。


 そのかもしれないに怯えて、初めの一人にはならないのさ。


 まあ、それだけ知名度ってのは大切なんだよ。

 だから、賞を獲るッ!!


 売名じゃねぇ、実力で勝ち取った本物の評価を。

 オレは"売れる作家に"なりてぇんだ!!


 偽りのファンじゃなく。

 本物のファンが欲しい。


 いつか、本を出して、オレの書く物語が好きなんだ。って言ってもらえる作家になりてぇ!!


 読者に認められる作家になる方が、カッケェし……自信がつくんだよな。

 自分の子供を、駄作になんかしたくねぇんだ。


 だから、必ず賞を取らなきゃならない。



「お待たせしました。」


 『コトッ』と、テーブルの上に置くコーヒーの皿には、シロップも砂糖も乗っていなかった。


「ありがとう。 マスター。」

「いいえ。 ごゆっくりどうぞ。」


 なんて素晴らしいんだ。

 声のトーンまで、客の心を静かな空間へと置き去りにしたまま、やることをやって素早くその場をさっていく。

 完璧すぎてるよアンタ。

 昔もそうだが、あ、この世界では未来だな。


 とりあえず、必ず賞を狙うんなら……数を出すしかねぇ。

 内容が良くても、編集の好みが違えば、それは駄作と判断されちまう。

 直接駄作なんて言われはしないが、目をつけられ無ければ価値はないんだ。


 そんな悔しい思いは何度もして来た。

 だから、今回はプライドは捨てる。


 数が正義だ。


 評価される可能性がある作品を作り続けるしか、作家になる道はないんだ。

 だから、上等だ。


 この三年間で……何作も作ってやるッ!!


 待ってろよッ!!

 必ず三年後、賞を獲るッ!!!


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