第三十一話「ジェイド」
夜水翡翠とクラスの学級委員となったその日、オレは帰宅してからも次に書き進めるための『恋愛小説』について考えに耽っていた。
夕飯も風呂も済ました後は、一日の中で一番自由な時間となる。
「構想を練るか」
そう思っていた矢先、スマホの通知オンが鳴った。
ん?誰だろう。
なんだ、『ジェイド』か。
『ねぇ、聞いてよっ! 今日学校の委員を決めたんだけどさ、嫌いなやつとなっちゃったんだよね〜〜。 はぁ、最悪。』
『スズメも学生だったよね? アンタの学校は、もうクラス委員とか決めたりした?』
「──か。」
『奇遇だな。オレも今日あったばかりだよ。』
『オレなんか、友人に勝手に推薦されてなっちまったよ……。全く、勘弁してもらいたいぜ。』
『そんなことに時間を割くなら、小説のネタを考えるじかんにしたいっての。』
「送信っと」
まあ、嫌いな奴とクラスの委員をやらされんのは確かに嫌だな。
ジェイドには少しだけ同情するぜ。
送信してから一分も経たずに、返信が送られて来た。
『そういえば、新作書けたってツイートしてたけど、内容見せてよ』
『ちょっと時間かかる』
そう返信したオレは、PC内に保存してあったファイルをスマホにコピーしていた
ヒワさん。いや、雛に見せたのは原稿に印刷した内容だ。
一度目はアナログで下書きし、そこから本書書きはパソコンで入力する。
データの管理もしやすいし、何より文体が読みやすいからな。
他人に見せるなら尚更だ。
面倒だが、昔から手書きの方でやってきたから、手本となるもんがないと、入力が遅い。
そっちの方が時間がかかることに気づいたからな。
オレが新人時代だった時は、手書きの原稿だけ書いてたっけ。
猫柳さんはずっとアナログだったし。
その真似で、オレもそうしてた。
『ジャンルはミステリだ。 目を通してもらうようだから、四話分しか無いぞ。』
『読んだら感想よろしく』
そうメッセージとコピーした文書のPDFファイルをジェイドに送った。
─────────────
まあ、今日で読み終わるまではいかないだろうな。
んー……せっかくだし、『ツブヤキっター!!』のタイムラインでも眺めてみるか。
「……まあ、相変わらずの面々だが」
「ッハハ! ニコ丸がまたメンタルブレイクしてるッ、次はいつ帰ってくるかな?」
毎度毎度、執筆作業に躓くと、『旅に出ます。』って言って、一週間くらい更新がなくなるんだよな。
まあ、その分、出来上がった時のアイツの作品は面白い。
才能はあると思うが、ソレが頻発するのが難だな。
継続して続けることが大切な小説家にとって、休んでる暇はもったいないからな。
まあ、インスピレーションが湧かない時も確かにある。
それでも、一週間の旅行は長いけどな。
それがキャラ立ちしてファンも多いのは事実だし、見ていて面白いのも確かだが……ライバルとしては負けてられない。
ヤツのインスピレーションが湧くまでに、オレも新作を考えるぞ。
「……へぇ〜。 良いこと書いてんじゃん。」
「まぁ、オレなら──」
時間にして十五分くらいは眺めていたと思う。
時刻は二十二時過ぎ。
そろそろ考えるとするか。
「恋愛……テーマは……」
『雨』にしよう!
無難と言えば無難だが、まあそれがいい。
といっても、恋愛はあまり得意ではない。
雛との出会いは特殊だしな。
それに、過去の他の女には、いい思い出がない。
あとは、セフレか。
まあ、アイツらは恋愛とは呼べんしな。
待てよ……。
風俗に行くのはありか?
意外とたわいもない話とか出来て面白いからな〜
いろんな客の話を聞くのも面白い。
まあ、風俗は金がなくて仕方なく働く女が多いからな。
失恋……いや、そんな感情すら持ち合わせてないか。
頼ることが出来ない、離婚したシングルマザーや借金がある女性が大半の理由だろう。
それでいうと、夫婦間のトラブルや思っていることなんかも分かりそうではあるが。
ただそのためだけに大金をかけて行くなんて……
「って! オレまだ未成年じゃねぇかッ!!」
完全に忘れてた……おっさん気分で話してたけど、まだ十五の高校生だぞ。
ここはもっと身近な所でやるべきか。
ちょうどいいし、明日の夜にでもジェイドに聞いてみるか。
にしても、夜は寂しくなるな。
会っちまうと尚更……。
「今、何してるんだろう。 ヒナ。」
会いたいなぁ。
─────────────[翌日]
翌朝、オレたちはクラスの委員として、当番を決めることになった。
そう、オレたち。
「なによ。」
「こっち見ないでくれる?」
朝から怒られてんの意味がわかんねーよ。
コイツの頭は単細胞で出来てんのか?
「たくっ、まあいいわ。 アタシがみんなに何の係があるか聞くから、それを黒板に書いてね。」
オレは書記官か。
「へいへい」
「じゃあ、まずみんなが思う係を挙げてってもらえるー?」
「日直──!」
「花瓶の水換えとか?」
「学習係とかもあるよね?」
「そんなんあったっけ?」
「ウチが中学の頃は、集配係もあったよー?」
「黒板はー?」
「それは日直でよくなーい?」
「確かに」
「給食係がいいと思いまァ──すっ!!」
「いや、弁当だろッ!」
「「ハハハッ───!!」」
まあ、何とも賑やかなこと。
「ちょっと、ちゃんと書いてんの?」
「すまんすまん。 まとめてくれると助かる。」
「しょうがないわねぇ〜。 ハ──イ!! みんな──!!」
「とりあえずまとめるから静かに──!!」
こうして、夜水がまとめたものを黒板に書き写した。
・日直
・花の水換え
・学習係
・集配係
まあ、他にもあるかは覚えてないが。みんなも同じらしい。
先生も何も言わないし、そんなもんだろう。
「それじゃあ、日直は二人一組で毎日交代ね!」
「時間もないから、とりあえずは席の最初から最後の二人から内側に進んでいくペアでいきましょう!」
「異論ある人はいる──?」
「なさそうね!」
「なら、次。 学習係は、主に次の授業に必要なものとかを、先生に確認したりする係よ。 あとは、提出物とかの連絡を確認したり、みんなに呼びかけたり。 先生の元に届けるのが内容ね!」
「あと、集配係は帰りの時間の前までに、先生の元にプリントとかの配布物を取りに行く係よ。」
「花瓶の水は、まあ、二、三日に一回くらい水を変える感じかしら?」
「誰かやりたいって人はいる─?」
「「………………。」」
まあ、そうだよな〜。
案だけ挙げるだけ挙げて、あとは放置だもんな〜。
オレもそうする。
「誰もいないの──?」
「なら、くじ引きにしましょうか!」
「適当に作っておくから、明日の朝にまた決めましょ! 先生もいいですよね?」
「ああ〜、それでいいぞ〜」
相変わらず、仕事はテキパキこなすな〜。
中身はアレだが……見た目と仕事の速さは尊敬したいとこだ。まあ、中身はアレだが。
そうこうしてる間に、時間は少なくなっていた。
「おーい。 オマエらが手を挙げないから、ヨミズに面倒な仕事を作らせちゃっただろ〜?」
「もっと協力するよーに。 くじ引きは公平だから、結果には文句言うんじゃないぞ〜」
担任がそう言うとチャイムが鳴り、午前のホームルームが終わった。




