第三十話「蜜の味」
恋愛小説を書くに当たって、オレが思い浮かぶ方法は、いくつかある。
一つ目。
実際の恋愛経験を元に、ウソを混ぜて題材にする方法。
これはオーソドックスだし、経験から書けることがあるから、一番やりやすい。
それに、よりリアルな感情の表現を書くことが出来るだろう。
ただし、恋愛経験がないと、そもそもリアルな話が書けない。
当たり前だな。
コテンコテンな、漫画みたいな話をただ妄想して書くしか出来ないんだよ。
まあ、それはそれで成立するのが、漫画やラノベの良さだけどな!
二つ目は、女性に話を聞いてみる。
これは、身近な人や友達、ネットで知り合った女性に、恋愛話を聞いてみるやり方だ。
これも、リアルな話が聞けるだろうし、自分の経験できなかった経験も知れる可能性がある。
インスピレーションの増加に繋がるな。
が……そもそも、家族に聞きにくかったり、周りに女友達がいなかったり、ネットの知り合いもいなかったら出来ない。
それに、コミュ障なら、余計に難易度は上がるだろうな。
三つ目は、ネットで意見を調べる方法だ。
まあ、これは簡単で、SNSで『恋愛』とか、『恋の悩み』、『デート』、『馴れ初め』とかで検索すれば、その人の書き込みが見れるからな。
それを元に、女性側の『本心』や『行動の理由』などを知ることが出来る。
逆も然りだな。
まあ、人間は似てる性格や個性はあれど、この世に全く同じ人間なんて存在しないから。
思うことも違ってくるから、どれが正解かなんてものが分からない。
だからこそ、解釈と理解度が足りないと、作者の解釈を読者に押し付ける作品となりやすい。
まあ、それも個性であるから。
批判する人もいるだろうし、肯定する人も様々だろう。
それがファンに繋がるだけの話だ。
四つ目、これはすでにある漫画や小説から学ぶ方法だ。
まあ、作家志望のヤツなら、ほとんどが独身のうちに、ヒソヒソとやるから、恋愛もせず、童貞や処女のままなヤツが多そうな気もするが。
だからこそ、漫画や小説のベッタベタな展開がリアルに存在していると勘違いしているんだ。
まあ、オレの初体験は高一だったが、早くもなく、遅くもないくらいじゃないか?
その後は、とち狂ったようにセックスに明け暮れた時もあったな。フフッ。
今思うと、若気の至りとして懐かしい思い出だが……。
気をつけておいた方がいいぞ。
あれはある種の『薬物』だ。
何事も理性に留めなければならないことだって人生にはあるんだよ。
子供の頃は分からない。
ほんっと。大人になって理解することは山ほどあるよな。
話が逸れたが、経験のないヤツは、漫画を現実と思い込む。
それが悪いことではないが、純文学を書くならは別だろう。
漫画やラノベなら、ただのフィクション。娯楽とした楽しめるからな。
だが、純文学ならフィクションはフィクションでも、多少のリアルさが必要となる。
そして、その"リアルさの中"に、『リアル』と『理想』を詰め込まなくてはならない。
よく分からない?
つまりだ。
過度なフィクションではなく、リアルさを描かなくてはならない。
ただ、ただリアルを描くだけじゃダメなんだ。
そこに、『ロマンチックな愛』を込めろ。
読んでいて、思わず『きゅん』とすることや、『ドキっ』とするようなことを書け。
それは漫画やラノベのように使われるベッタベタなやつでもいいが、"表現の仕方を変える"んだ。
そうすることで、していることはベタな展開でも、読んでいる"感じ方"は違ってくる。
"比喩表現が重要"だぞ。
ただの単語を書くなんてもってのほかだ。
まあ、作者によっちゃあ〜、書くこともないことはないけどな。
例えば、『キス』という単語。
普通の文なら──
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主人公は○○とキスをした。
主人公は〇〇と口付けを交わした。
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とかだろ?
ただ、それに……まずは一捻り加えてみる。
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主人公は、ギュッと抱きしめた後にキスをした。
主人公は、〇〇の頬に手を当てながら口付けを交わした。
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これだけでも、かなり印象は変わる。
どんなシチュエーションかも分かるよな?
主人公の行動が頭の中で想像できないか?
さらに、ここにも一捻り加えると──
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主人公は、〇〇の背中にそっと腕を回し……〇〇の顔を見つめた。
そして、見つめあった後、抱きしめながらキスをした。
主人公は、〇〇の頬にゆっくりと指の腹で触れた。
〇〇の頬はあたたかくて、僕の胸も熱くなった気がした。
〇〇の顔を見ると、我慢できなくて……僕は口付けを交わした。
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とか、仕草や温度、視線の描写を追加することで、より肌が触れ合っているリアルさが出せる。
もっと言うならだ───
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誰もいない夕日が差し込む教室の中で、オレは〇〇の目の前に立っていた。
夕陽に照らされる〇〇を見ると、頬が赤くなっているように見えた。
そして、背中にそっと腕を回し……〇〇の顔を見つめた。
初めは、お互いの目線が泳いでいたけど……次第に……。
そして、見つめあった後、抱きしめながらキスをした。
明かりが消された部屋の中。
僕は、ベッドに仰向けになっていた彼女の上に覆い被さった。
彼女の顔が……いつもより近く見えた。
僕は手を伸ばし、ゆっくりと彼女の頬に指の腹で触れていく。
柔らかくて、あたたかくて……彼女が逸らす目を僕も追いかけた。
部屋の中はエアコンが効いていたのに……胸が熱くなった気がした。
抑えられない。愛おしくてたまらない。
僕が目を瞑った一瞬の隙に、彼女も目を瞑っていた。
僕は、再び瞼を閉じた後………口付けを交わした。
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まあ、こんな感じで
さっきは人の仕草を追加しただけだったが、今度は背景も追加した。
それによって、前者は、学校での夕方の出来事と分かる。
後者は、カップルの部屋での行為の始まりだ。
漫画やアニメで見ると、それは視界の情報として取り入れようとするだろ?
だから、どんな場面で、どんな間で、どんなテンポなのかが分かる。
でも、小説だとそうはいかない。
だからこそ、比喩表現などを使うことで、ロマンチックな。
色気のある表現を使うことで、想像させやすくするんだ。
ただキスをしただけだと、『結果』しか分からない。
だが、過程を書くことで、読者は──
より、『満足した結果』を読むことが出来るんだ。
そう。経験がないと……雰囲気は分からない。
蜜の味は………一時の幸せな『麻薬』と同じなんだよ。




