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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
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第二十六話「テーマ」



 ジャンルは『恋愛』だ。


 次は『テーマ』を決めていく。

 ただし、テーマにしたい題材が………夏は多過ぎるな。


 良いものがありすぎなんだ。


 ざっと思いつくだけでも、海。花火大会。夏祭り。ひまわり。スイカ。かき氷。夏休み。そうめん。風鈴。蚊取り線香。お化け。


 だったか。

 まあ、その内いくつかはボツ候補だ。

 そのボツを使うのも、逆に珍しいし、オリジナリティを出せる良さもある、が………


 無難(ぶなん)なのは、『海』、『花火大会』、『夏祭り』……花火大会と夏祭り、この二つはセットか。

 あとは、『夏休み』『風鈴』とかだな。


 こういったテーマは、誰もがきっかけを作りやすく、"夏をイメージしやすい"。


 だから、選ばれる。



 あ、『雨』を忘れてた。

 『雨』は個人的に、かなり好きだ。


 題材にもしやすい。



 何故しやすいのか、それぞれ解説してやろう。


 まず、『海』。


 海を題材にした場合、『運命の出会い』を作りやすくなる。

 孤独を抱えた主人公やヒロインが、海で散歩をしていると偶然同じ境遇の人物と出会う。とかな。


 それか、『悩みを打ち明ける場所』としても優秀だ。

 ある程度、関係値が進んだ後、朝日が昇る早朝や夜に浜辺や堤防(ていぼう)を歩きながら、自身の話を打ち明ける。とかか。


 次は『花火大会』と『夏祭り』だな。


 これはまあ、無難だなぁ〜。

 そもそも、夏を丸々題材に取り入れる中での、一つのイベントだからな。


 『一つの小節』みたいなもんだな。


 各章のメインテーマの一つとして扱えば良い。


 内容はまあ、純粋に楽しむのもありだが……


 多くありがちなのは──


①最初は祭りを楽しむ

②何かしらヒロインにアクシデントが起こる

③主人公だけが気付くorみんなで探す

④解決して、二人で花火を見ながらキスorみんなで花火をみながら、こっそりと手を繋ぐ


 とかだろうな。

 まあ、そこにどんな描写を挟むか、それともサプライズやミステリーを入れるかとかが、オリジナリティに繋がりそうだ。


 『夏休み』に関しては、そもそも大組みのテーマとして使うから語る事はない。


 あ、一つあったか……。


 まあ、その人物にとって、夏休みに"特別な思い入れ"がある場合だな。

 それ以外は『舞台』として扱われることが多数だろう。


 『風鈴』は個人的には好きだ。

 

 少し特殊だが、キャラたちの『共通の思い出』として使う事ができる。

 しかし、そのキャラごとに思い出の内容は違うんだ。


 そこにヒューマンドラマを感じやすい。


 それでいて、最後の最後に、『風鈴』という『テーマ』に何故したのかについての『理由』を明かす事で───全てが"風鈴というピースで繋がっていた"。


 という、『物語』が綺麗に完成する。


 こういった、ある種の『特定のモノ』に"焦点を当て"ながら、"キャラの掘り下げをする"話は好きだ。


 最後に『雨』。


 恋愛において、最も『心の心情描写』を書きやすいと思っている。


 そう───雨は良いイメージを持たれにくいんだ。


 

 雨とイメージすると、『寒い』、『冷たい』、『暗い』、『静か』とかのイメージが湧くだろ?


 ただ、人によっちゃあ、『幻想的』とも感じ取れる。

 実際にオレも好きだしな。


 

 それ(ゆえ)に、"人の心とリンクさせやすい"。


 "悲しい表現"が書きやすいんだ。



 だから、『失恋』や『喪失』の場面として取り入られる。


 よくあるのは、"涙を雨で隠す"とかだな。

 

 例えるなら……


─────────────────────────


 暗く、静かな空が私を(なぐさ)めるように。

 冷たい雨が───私の頬を(つた)った。


─────────────────────────


 とか


─────────────────────────


 沈黙を遮るように、雨の音が聴こえ始めた。

 ボクの体から、体温を奪っていく。


 寒い。


 体の『芯』が……どんどん冷たくなっていくみたいだ。


─────────────────────────


 みたいな感じか?


 まあ、こういう表現を書く時は、なるべく比喩表現を使うと良い。

 分かりやすく言うと、"直接的な言葉を使わない事"だな。


 具体的に言うと、最初の例えなら。

 

 『女性は悲しくて泣いている』ことを、作者としては伝えたいんだ。



 それを『心』の視点から考えると、『暗く、静かな空』が『女性の心』を表してる。


 それでいて、『場面』は『曇り』であると分かるよな?

 もうすぐ雨が降る"かも"しれないと想像できる。


 そして、女性の『身体的』な視点から考えると、作者が伝えたいのは───悲しみに暮れ、女性が泣いていることを伝えたいハズとさっきも言ったな。



 だから、『雨』を利用した。

 


 "雨が頬を伝う事"で、"頬をもともと伝っている涙"はかき消されてしまうだろ?


 それか、"雨の降り始め"を使って、"不安定な感情を抑えていた涙が、こぼれ落ちてしまった"。という表現にも捉える事が出来る。


 比喩表現の『良さ』は───


 『作者』は感じ取って欲しい"真意"や"願い"を込める事が出来るし。


 『読者』は"様々な解釈"をする事が出来る点だ。



 想像力を掻き立て、その"人物に自分の姿を重ねる"。

 

 そうやって、"作品に没入する追体験を楽しむ"んだ。


 せっかくだから、二つ目の例も解説しようか。

 

 まず、「沈黙を遮るように、雨の音が聴こえ始めた。」


 これは、男性の"心の整理"がまだ終わっていない『虚無の心』の状態なのに。

 雨が実際に降り始め、その『音』によって、"物理的・心理的"にも『うるさい雑音』になって聴こえて(感じて)しまった。


 という表現だ。


 そして、雨の"物理的な寒さ"と、心の心理的寂しさ"を重ねて、『心の寂しさ』を表現した。


 さらに付け加えるなら、『心』と使わない事だ。

 『体の芯』にする事で、体の奥にあるモノ。


 そう───"心なんだな"。と思わさせる。


 こうやって、『伝えたい表現』と『想像する解釈』の"駆け引きを誕生させる"んだ。


 それが作品をより、ドラマチックに…。

 物語(ストーリー)性のあるモノへと作る事が出来る。


「人生も、思い描くようなストーリーになれば良いのにな。」



「いらっしゃいませー」


 店員の声と入店の音が微かに耳に聞こえる。

 だが、オレは小説を眺め続けていた。


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