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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
25/38

第二十四話「大人の都合と読者の吟味」


[現在]


 「この後の予定は?」なんて聞けたら良かったんだが……今のオレにそんな勇気もなく、解散の雰囲気が漂って来ている。


 まずいな。

 もっと(ヒナ)を見ていたい。

 チャンスなんだ。


 わざわざ、前の人生と同じ高校にまで行ったんだぞ。

 それなのに、雛がいなかった。


「んふ〜このケーキ、おいしっ〜♪」


 見てみろよ……ほっぺに手を当てながら、満面の笑みでショートケーキを頬張ってる。

 そんな仕草が似合う女……どこにいるよ?


 ここにいたわ。


 ん?ほっぺにクリームがついてんな。


 咄嗟に、オレはそのクリームを指で拭き取ってしまった。


「「あっ」」


「あっ! やっ! これはッ……!」


「あちゃ〜! ほっぺについてた? へへへっ。」

「あ、うん。」


 なんだその反応……。


(か、可愛すぎるぅぅぅ〜〜!!)


 ギュッ!!──…っ…いてて…。


 おっと、つい口元がニヤつくとこだった。

 膝を指でつねらなかったらヤバかったな。


 まさか、雛にこんな一面があったとは。

 付き合ってる時や同棲したり時とはまた違った一面が見れて嬉しいな。


「この後どうするー? スズメくんは予定とかあるの?」

「あ、てか、いま何歳だっけ?」


「あ、別に予定はないけど………十五。」

「えっ!? 嘘っ!?」

「まだ、未成年じゃんっ──!!」


「あんな深い内容の小説を書いてたから、てっきり……二十代後半かと思ってたのに……。」


 えっ……。ま、まあ、間違ってはない。

 正確にいえば、三十二だが。


「じゃあ、あんまり遅くなったらダメだね! そろそろ帰ろっか!」


 時間的にはまだ昼の二時だ。

 いやぁ〜、遊び足りねぇ。

 深夜までだっていけるわ。


 と、大人ぶったところで、見た目も年齢も、今は十五なんだよなぁ。


 まあ、『ヒワさん』が『雛』だって分かっただけでも、オレの中では十分な進歩と言える。

 今日のところは素直に引くか。


 だが、ここで終わらす気はねぇよ。


「分かったよ。 ヒワさんにまた小説読んでもらいたいんだけど、また会ってもらえるかな?」

「え! ホントにー!! 読みたい! 読みたいっー!」


「また新作が出来たら教えてねっ!」


 フフフ……。しめしめ。

 まあ、大人になればこんなもんよ。


 ガキだった……デートの後、そのまま彼女に何も言えずに、後日友人の男子生徒から「どうだった?」と聞かれ、「連絡先聞けなかったわ〜」と答えたら、「何してんだよ、バカッ!!」って、ビビりムーブを茶化されるヤツらとは違うんだよ!


 さりげなく、欲を出さないように見せかけて誘うんだ。

 まあ、心の中は欲まみれだけどな。フフッ。


「うん! 分かったよ!」


 それが大人の駆け引きってヤツだ。


 苦いコーヒーも飲めない、お子様は、こうして失敗を経て……だんだん成長していくもんなんだけどな。


 オレは二回目の人生だし、彼女のことなら誰よりも分かってるつもりだ!

 まあ、今回の人生では、これが初対面なんだけどな。


─────────────


 雛と解散した後、オレは本屋に寄っていた。

 本屋にはたまに歩みを止めに来る。


 本が好きだからって、必ずしもたくさんの本を読んできたわけではない。

 知ってる作家も少ないし、あの頃はSNSを本格的にしてなかったから、作家の知り合いもそこまでいなかった。

 

 ただまぁ、流石に有名どころの名は聞いたことはある。

 でも、好きな作品を上げろと言われると、すぐには思い出せない。


 人の名前を覚えるのは苦手だったし。

 そもそも………いや。

 考えると気分が冷める。せっかく本屋に来たんだ。


 色々と眺めてみるか。


「本屋ってだけで、中に入るとワクワクしちゃうよなぁ。」


 自然と口角が緩む。

 周りの客に変な目で見られてないかが心配だが……。


 それよりも早く見たい。


 オレは漫画本コーナーをさらりと流し見した後、『○ラクシアス』の最新刊がなかったことに腹が立った。

 あんな面白い作品がなんで置いてないんだよッ!

 他の店に行くぞ?


「ったく、重版はまだかよ……? 早く並んでくれよな〜。」


 それから、小説文庫のコーナーで再び足を止める。

 と言っても、文庫としてのラノベには興味がない。


 文庫本が出てるラノベは大体アニメから知る事が多いからな。

 今更読んだところで仕方ない。


 想像はよりできるだろうけど、それならアニメでいいしな。

 イラストがあって、動いてるものを超えるとは思えん。


「まあ、逆から入るなら素直に読めるんだけどな〜」

「あとは、大体人気なヤツが表にあってつまらん。」


「マイナーなやつがどんななのか気になるのに、本棚の中から、長ったらしい名前のタイトルを見ても、手に取ろうとはならんだろ。」


 そう、ラノベは何故か本棚のタイトルから選ぶ気になれないんだよな。


 まあ、それもこれも、○○う系のせいか。


 ただタイトルを長くしとけばいいだろって、考えだけで、(あっさ)い単語を並べてるだけの作品しかねぇ。

 そもそもタイトルでネタバレって……まあ、良くも悪くもだが。

 楽しみの一つが減ってるじゃねーか!


 まあ……メリットとしては、買う前に内容が分かりやすいし、興味を持たれやすいって引きの点では良いかもしれんが。


「でも、パターンやオチが決まってるからな。"ハードルが高い"。」


 そう、結末が分かってるなら、それまでの"過程が面白くないとダメ"なんだよ。


 内容な。

 設定も作り込まなきゃダメだ。

 あとは、物語(ストーリー)


 キャラは正直どうでも良い。

 だって、ネタバレされてんだから、ソイツは結局その結末にたどり着くんだろ?


 なら、読者は、その"成長する姿"や"変化"が見たいんだよ。


 単純ワンパターンの物語(ストーリー)はつまらないだろ。

 それ+でネタバレされてんだからな。はっは。

 何回、同じ事すんだよって感想にしかならん。


 これが、○○系ブームの最初なら良かったんだけどな。


 そう、最初なら"新鮮味があるから面白い"んだ。


 ただ、毎度毎度……恒例化されて量産。

 運営も何がしたいのか知らんが、"読者"がもう……そういうバイタリティなんだろうな。

 商売だし、運営サイドも何かしら思ってても、今更変えることは用意じゃないだろうしな。


 変化が"過ぎる"と、既存の読者は離れる。


 そういうもんだ。


 金の粒が消えていくのは耐えられんだろう。ははっ。


 しかしだ、ラノベではと言ったが。

 ラノベ以外だと話は別だ。


 なんでって?


 そりゃあ、"浅くねぇ"からだよ。


 タイトルで分からないか?


 日本語はいろんな『組み合わせ』や『読み方』、『意味』、『使い方』がある。

 それを"プロ"が考えてる。


 だから……

 

 謎めいたタイトル。

 届けたい想いを込めたタイトル。

 ド直球に伝えたいタイトル。

 伏線にしたタイトル。

 キーワードとなるタイトル。


 など、様々な『単語』や『言葉』、『文』を使って作る事が出来るんだ。


 ラノベはそれが出来ない。

 出来ない事はないが、そもそも層が違う。


 タイトルと表紙で引き入れるために、分かりやすくするしかないんだ。


 まあ、所詮……全てオレの考えに過ぎないけどな〜。

 真相なんて知らん。

 テレビの闇と同じようなもんだろ。


「タイトル……『キミの残影』か。 あらすじは? どれどれ ───」


 オレは基本、(そそ)られるタイトルしか見ない。


 単純なのはそのままだからな。

 内容が予測できて見る気が起きないからだ。

 そして、唆られたらあらすじを読む。

 まあ、ある種のネタバレだが、金を払うんだ。


 吟味(ぎんみ)はして良いだろ。


 そして、面白そうなら買う。

 もちろん立ち読みなんかしない。


 買うと決めたら買う。



 まあ、参考にしたいときや、ネタ探しの時はほんの数ページ、飛ばし飛ばしで立ち読みすることはあるけどな。

 それでも、買わない本を長く立ち読む事はない。


 ズルイだろ?

 読んでから判断するのは。


 金を払ってでも、出して良いとされた作品なんだから。

 オレはその作品に金を出して読んでやりたい。


 読んでから判断して良いのは、無料で読めるもんだけで良い。

 まあ、ポリシーみたいなもんさ。


 問答無用で立ち読みしてるヤツを見ると、殺意が湧くが、まあ、どうでもいいヤツなんてオレの人生に関わらせる事はない。


 ほっとくのがあんパイだ。

 どうせそんなヤツはロクなヤツじゃないしな。



 ほっときゃいい。

 関係ないヤツは。


 自分の世界から入店拒否だぜ。



 客は選ばれる時代から、選ぶ時代になりつつある。

 

 なんにせよ"吟味"が必要なのさ。


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