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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
21/38

第二十話「犯人とトリックの真相」



「聞いて来たわよ。 ソレで、コレがどう繋がるわけぇ?」

「教えてくれ。」


「フンッ。 まず、被害者の身長は167センチ。 チョーク・アウトラインでも分かる通り、体型は普通よ。」

「そして、容疑者Aは165センチで体型は普通。 容疑者Bは181センチ、さっきも言ったけど、体型は細型よ。 容疑者Cは153センチ、小柄な女性ね。 まあ、アタシと同じくらいかしら? 容疑者Dは168センチだけど、ウエスト周りが広いから、実際はもっと上のサイズの服を着ていたわ。」


「で? コレが何か?」

「なるほど……。 やはりな。」

「何がよ?」

「今の話を聞いて、この部屋の違和感に気がつかないか?」


 その言葉を聞いて、ハティは部屋の中を見渡した。


 部屋の中はシンプルで物は少ない。

 カーペットはなく、部屋の右奥にはベッドがある。

 左角には机があり、デスクトップ型のパソコンと倒れた写真立てが置いてあった。


 その手前には、ハンガーにかけられてある二着のTシャツ。両方黒色だ。


 その他にも多少の雑貨があり、洗面所の廊下には空き缶が入った袋が束ねられてあった。

 部屋の中には、特に違和感と呼べる物は見当たらなかった。


「別に……? ごく普通の大学生の部屋って感じがするけど?」

「さっき、ハティーは言ったな。 容疑者Dは、実際はもっとサイズが上の服を着ていたと。」

「え、ええ。 それが……あっ──!!」


「服のサイズが違うわッ!!」


「そう、サイズが違うんだ。 しかも、普通ならMとLサイズで違うなら、間違えていてもそこまで違和感はない。」

「だが、ここにある二着の黒い服は……明らかにサイズが違う!!」


「一つは普通くらいかしら? 被害者の体型は平均的な普通だったから、Mサイズくらいかしらね。」

           ・・・

「もう一つは、明らかに小さい……!!」


     ・

「そう。 彼が着るには、小さすぎる。」

「凶器は、"二つ"あったんだ。」


「エクセルを呼んでくれ。 犯人に直接確認しようじゃないか。」


* * *


「それで、犯人はこの部屋の住人なのか?」


 ドアの前に立つ三人の目の前にある表札には、『103』と書かれていた。


「ああ、間違いない。 動機もおそらくだが……予想はついてる。」

「本当か!? 流石は名探偵だな! ハハッ!」


(本来はアンタの仕事なんだがな。)


「押すわよ。」

「ああ。」


 インターホンを押した数秒後に、容疑者Cの小柄な女性がドアの奥に現れた。

 その服装を眺める。

  

 ブカブカな濃い暗めの赤いTシャツを着ており、裾が太ももの辺りに差し掛かりそうだった。


(やはりな)


「ジェラシーさん。 お話があります。 中に入れて頂けますか?」


 エクセルが話しかけると、彼女はその表情と声のトーンで、何かを諦めたかのように小さな声で三人を部屋の中に招き入れた。

 

「……はい。」


* * *


 部屋の中に入ると、一枚の写真を見つけた。

 それは会社の社員の集合写真だった。


(コレは、なるほど……。)


「アナタが被害者の男性を殺しましたね?」


 私は彼女に質問した。

 しかし、彼女はしばらく無言だったので、私は、事件の真相を話し始めた。


 窓の外は薄暗い雲が広がり、部屋の中は暗くなっていた。


「犯行当時、アナタは被害者の部屋の中に居た。」

「アナタと彼には面識があったんです。」


「それはそうでしょ? 同じアパートの住人なら、引越してきた時とか、ご飯のおすそ分けとかで挨拶はするでしょ?」

「いや、それ以前からの知り合いの可能性がある。」


「え? どういうこと!?」


「彼女は、彼と同じ職場で働いている。」

「うそ!?」


「いや、写真に見える人物の中に、被害者の彼と彼女がいる。」


「たまたま、同じアパートで、たまたま同じ職場だったってこと?」

「いいや、おそらくそれは違う。」

「彼女は……彼がここに住んでいるのを知っていて、引越してきたんだ。」


「はぁ〜? なんで、わざわざそんなことするのよ?」


「それは────、彼女が被害者の"ストーカー"だからだ。」



「「!!」」


「どういうことだ? 何故、彼女がストーカーだと分かった?」

「そうよ! そんな証拠ないじゃない!」


「………被害者の彼には、"恋人"がいたんだ。」


「そして、その事を彼女は知らなかったんだろう。 職場では彼のことを知れても、私生活まではなかなか分からない。」


「だから、彼女は彼の住むこのアパートに引っ越した。 そして、偶然を装い、挨拶をした。」

「それから、何度か差し入れと言って、缶ビールでも持って行ったんだろう。」


「彼の洗面所の廊下に、"缶ビールの空き缶が入れられた袋"があったからな。」


「そして、ある日。 彼の部屋で、あるモノを見てしまったんだ。」


「あるモノ?」


「ああ、机の上にあった"写真立て"だ。」


「あっ! 確かに写真立てはあったわ! あれ? でも、アタシたちが部屋の中で見た時は、倒れていたような……。」


「そう、彼女は見てしまった。 ────彼の、彼と恋人が写っている写真をな。」


「その時に彼女は、明確な殺意を抱いたんだ。」



「………。」


 彼女は何も言わなかった。

 依然として、俯いたままだ。


 外では雨が降り始め、静まり返った部屋の中に雨音が響いていた。



「だが、この時点では殺す気は無かったんだろう。」


「再び、彼の家に差し入れを持って行った時。 それは起こった。」

「玄関のドアを開けた彼は、おそらく恋人と通話中だったんだろう。」


「そこに居合わせてしまった彼は、咄嗟に彼女を部屋の中へ招いた。 そして、彼女に差し入れをテーブルか何かの上に置くように、通話を続けながらジェスチャーでお願いをした。」


「そして、部屋の中へ入った彼女は、あの写真立てをもう一度見てしまった。 今まさに、その恋人と仲睦ましそうに話す彼を見て、怒りが収まらなくなったハズだ。」


「電話が終わり。 ビールを飲みながら、しばらく話をして居たのだろう。 次第に彼は席を立ち、トイレに行こうとしたその時……」

「自分のものにならない彼に、殺意を向けた。」


「自分の持っていたスマホを振り上げ、彼の後頭部に思いっきりぶつけたんだ。」


「そんなっ……」


「…………。」


 ハティーが驚く中、雨はさらに酷くなり、彼女がいる床に水滴が落ちていた。


「ただ、スマホを直接ぶつけたんじゃない……」


「ハンガーにかけてあった───"赤黒いTシャツ"を手に取り、"スマホを覆うよう"にして殴りつけたんだ。」


「偶然にも当たりどころが悪く、彼はすぐに倒れた。 その後は、力が弱い女性だ。 おそらく……何度も、何度も殴りつけ、絶命させた。」

「そして、その血痕をTシャツで綺麗に拭き取った。 だが、どうしても"返り血は付いてしまっていた"。」


「しかし、"焦った彼女は動揺して"、咄嗟に返り血のついた黒いTシャツを脱ぎ、元々服がかけてあったハンガーに掛け直した。」


「今も被害者の部屋にある服を調べれば、血痕が見つかるでしょう。」


 エクセルが隣で唾を飲み込む姿が横目に入る。

 ハティーは手を口元に当てていた。



「"血の色が見えない"……アナタが今着ている服こそが。 犯行に使われた"凶器"だッ!!」



 指を指しながら、『トゥルース・キーラー』は決めポーズをした。


「そして、アリバイとして使ったスマホは、被害者のモノでしょう。」


「通話履歴の相手の名前は女性の名前だ。 だから、警察は違和感なく疑わなかった。」

「でも、その人物は……殺害する直前に被害者と話していた恋人だろう。」


「なるほど……確かに、筋は通っている。」

「だが、それなら何故、証拠となるTシャツを残したんだ? それに、今着ているって……。」


「そんなバカなことしたら、バレる可能性があるだろう? そんなリスクを……」


 そう。私にもそこが分からなかった。

 完璧な推理。のハズだ。しかし、そこだけが……。



「そうです。 そこの方がおっしゃる通りです。 ふふ……。」

「私が殺しました。」


「犯行に使ったのも、スマホや服は合ってましたよ。」


「なら、何故?」


 気になった。彼女が服を捨てなかった、私には分からないその理由を。

 追い求めても、いまだに辿り着くことのない……"理由"を。


 私は。追い求めている。



「それは────」


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