第十九話「犯行現場と容疑者達のアリバイ」
「───へぇ〜! なるほど〜!」
「それで犯人のTシャツと、自分が着てたTシャツを取り替えたのね!!」
「すご〜い! そこに気付く探偵の『トゥルース・キーラー』も凄いわ!」
「さすが、名探偵って感じね!」
「はははっ、ありがとう! その反応が見れて嬉しいよ!」
「書いて良かった!」
そう───オレが思いついた凶器消失トリック。
まず、物語の初めから話そう。
─────────────[作品の内容]
「もしもし、聞こえるか?」
電話越しに誠実そうな男の声が聞こえてきた。
「どうした。 君から連絡がある時は、大抵ロクなことじゃない。」
電話を受け取った男は、背が高く弁護士のような服装をしていた。
ただ、ジャケットは着ておらず、白いカッターシャツに灰色のベストと赤いネクタイを身につけていた。
事務所の机に腰を軽くかけ、スマホを耳に当てながらコーヒーを啜る。
「キミに手伝ってほしい事件がある。 すぐに──に来れないか?」
「分かったよ。 君からの頼みじゃ、どのみち断れない。 二〇分後には着くだろう。」
「そうか! 現場の者には伝えておくから、部屋の中まで入って大丈夫だぞ。」
相変わらず手際がいい。
まあ、エクセルくんは非常に優れた刑事だからね。
その辺りも気に入っている。
「ああ。 分かった。」
* * *
事件現場に向かった私は、二階建ての少し錆びれた四部屋ずつあるアパートの一室に訪れていた。
部屋の場所は二階の一番左の部屋。
『201号』とドアの横に札が書かれている。
階段を登ってすぐ左側にある部屋だ。
エクセルくんの話によると、死亡推定時間から逆算して、犯行時刻の時間。
二階の住人は、被害者の男性を除けば……全員居留守だったことが分かっている。
そして、一階の四部屋の住人は部屋の中に居たらしい。
近くの道路には監視カメラもあり、通行人はその時間はいなかったらしい。
つまり、事件当時に犯行ができたのは、同じアパートの住民の可能性が高くなる。
「キーラー! エクセルに一階の四人の証言について聞いて来たわよっ!」
「ああ、ありがとう。 ハティー。」
彼女の名前は『タント・ハティ』。
幼い頃に両親を亡くし、その後探偵である私が事件を手伝った。
だが、この私が唯一。事件を解決できなかった未解決事件の被害者遺族だ。
それからは、私が彼女の世話をしながら、探偵事務所の助手、兼──相棒として働いてもらっている。
「それで? 証言は?」
「まずは101号室。 容疑者Aとするわ。 容疑者Aは男性。 体型は普通、よくある成人男性ってとこね。」
「事件当日、彼はテレビを見ていたそうよ。 内容はファンタジー映画ね。 その時、上から『ゴトッ』っていう物音を聞いたらしいけど、その時は映画の効果音だと思って、そのまま気にしなかったみたい。」
「アリバイはなく、その時間はどこにも出かけていないらしいわ。」
「なるほど。 二人目は?」
「ええ、次は102号室の住民も男よ。 容疑者Bは痩せ細った三十代後半の会社員で、デスクワークをしてたらしいの。 溜まった仕事を明日までに終わらせないといけないらしくて、昨日から一日中どこにも出てないって。 彼もアリバイはないわ。」
「まあ、今時の会社員なら不思議では無いな。」
「ええ。 三人目は103号室に住む小柄な女性よ。 彼女……容疑者Cは、当時友人と通話をしていたみたい。」
「彼女のスマホの通話履歴も確認したから、間違いないわ。 彼女はアリバイがある。」
「物理的な証言人がいるのなら、確かに犯行は難しそうだな。」
「そうね、最後は104号室。 住民はガタイの良いふくよかな男性よ。 容疑者Dは、オンライン上でゲームをしていたらしいの。 一緒に遊んでいた友人がいたらしくて、そのことも裏が取れてるわ。 よって、彼にもアリバイがある。」
「なるほど。 四人の内、二人がアリバイありで、もう二人がなしか。」
「ええ。 怪しいのは、102号室の容疑者Bね!!」
「101号室の容疑者Aは、二階の部屋が被害者の部屋。 そこから、物音が聞こえたってことは、その時に犯行が行われたことになるわ。」
「そして、容疑者CとDにはアリバイがある。 その時間に動けるのは……アリバイのない、残ったBだけよっ!!」
「………。」
部屋の周りを探すも、床には血痕もなく、被害者が倒れて居た場所に、『チョーク・アウトライン』が記されてあった。
『チョーク・アウトライン』とは、被害者の死亡状況を残すために、その時の型をチョークなどわかりやすいモノで形をなぞり描いたものだ。
それとは別に、番号が書かれた立札もあるが、今回はないらしい。
どうやら、丸腰のところを背後から襲われたみたいだな。
進行方向はトイレと玄関がある方向か。
おそらく、被害者がトイレ、または玄関に向かう際に後ろから襲われたんだろう。
両腕を前に伏せるような形で倒れている。
そのまま倒れて、抵抗するままなく死んだようだな。
「……何故血痕がないんだ?」
「そうなのよねぇ〜。 エクセルもよく分からないって。……それでアタシらに丸投げってわけ! ほんと都合がいいんだからっ!!」
そう、被害者の後頭部には、小さな窪みがあった。
何かの"角"で殴られてできたような。
「被害者の部屋からは、何か取られた物とかはあったのか?」
「金目の物は何も。 ただ、普通は誰しもが持っている。 "あるモノ"だけがなかったわ。」
「それは?」
「被害者の"携帯電話"よ。」
「なるほど、"ソレ"が凶器か。」
「ええ。 容疑者の部屋も探したみたいだけれど、見つからなかったみたいね。」
凶器は判明したが……血痕の問題はまだ解決していない。
どうやって血痕を残さずに殺したんだ。
他の場所で殺した後に、部屋の中に運んだ?
それにしてはリスクが高すぎる。
たまたま、事件当時……通行人が居なかったとはいえ、もし容疑者の中に犯人がいるなら、通路にある監視カメラにも気付いてるハズだ。
私が"犯人"なら、そこまでのリスクは犯せない。
ならば、やはり、犯行現場はこの部屋……
「────!!」
その時、被害者の部屋の中にかけてあった、ある"モノ"に目がいった。
(おかしい。)
「ハティー。 エクセルに聞いて来てほしいことがある。 それと、容疑者はまだ部屋にいるんだな?」
「え、ええ。 そうだけど、何を聞いてくればいいわけ?」
「それは────」




