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ムレスズメ  作者: リンネ カエル/霖廻 蛙
売れない作家のリトライ
19/38

第十八話「種」



[二週間後]


 オレはヒワさんに会いに、太宰治賞を受賞した「巫卜占(ふぼくせん)行方(ゆくゆく)」の小説披露会の会場に向かうために、会場から五分ほど近場のカフェに先に着いてコーヒーを頼んでいた。


 スマホのDM欄からヒワさんを選ぶ。

 メッセージ欄を見る。


『なら、二十八日の午前九時に、ここのカフェで待ち合わせにしよう!』


 と、カフェの位置情報が一緒に添付されていた。


「流石に緊張するな……。」


 オレの服装は、白の無地のTシャツに、黒のヒラヒラした感じのサリエルパンツ。

 黒の靴先が丸いブーツ。


 腕時計は苦手だからしてない。ピアスは高校生だからな。流石にまだダメか。

 髪型はウルフカットの黒髪だ。


 まあ、一般的に見てもダサくはないハズだ。


 あ、相手が男だとしても、外出する時は香水も必須な。

 

「……ズスゥ〜〜。 にがっ。」


 あれ?アラサー時代はブラックコーヒーだったのにな。

 何で苦く感じるんだ?


 あ、舌がまだガキなのか。


「……はぁ…コーヒーすら美味しく飲めないとは。 子供の体は不便だなぁ。」



「あの、スズメくんですか?」


 その時、背後から声をかけられた。


 聞き慣れた声。

 優しくて、可愛らしい声。

 それでいてどこか……大人っぽく色気もある。


 ウソ……だろ……。



「なん……で…。」


「え?」


「あっ、いや……ハイ。 スズメです。」


 そんなバカな……。


 この時のオレは、瞳孔が開きまくってることが、自分でも分かるほどだった。


 オレの目の前に映っていたのは、かつての恋人。『木陰(こかげ) 雛子(ひなこ)』だった。


─────────────


「私、小説披露会に来たの初めてなんです!」

「へぇ〜、実はオレも初めて来ました。」


 会場に着いたオレは、いまだに心臓がバクバクして、落ち着けていなかった。


「そういえば、スズメくんはメッセージのやり取りとは話し方が全然違うんだねぇ〜! なんか違和感あるな〜」


 いや、驚きすぎてんだよ!


 そもそも、オレは……ヒワさんのことを男と思ってたんだ。

 それが、ヒワさんは(ヒナ)で、三年前から話してたんだぞ!?


 しかも、たまたま……ネットで知り合った相手がだ!!

 驚くに決まってんだろッ!!!


「それはヒワさんも同じじゃない? ツブヤキとか話し方が男っぽく話してたよね?」

「ああ! アレはね〜……ネットでは男性キャラとしてやってただけだよ〜!」

「女性だって分かってたら、変な人とか寄ってきちゃうのが怖かったからさ!」


「そ、そうだったんだ。」


 くっそー!!

 なんで元恋人に変な態度取ってんだオレは!

 ギクシャクすんな!奥手男子かよッ!


「うん!」


 うわっ、笑顔眩しっ。かわよっ。

 めちゃくちゃ可愛いな……。


 好き。


 じゃねぇッ!

 この状況はもう起きちまったから仕方ねぇけど、この先のことを考えないと……!!


 このまま雛と別れて、終わりなのか?

 何とかして、何か……


「「「ワァァァァァァァ───!!!」」」


 その時、会場から観客の声が上がった。


「わぁ〜! あれが行方(ゆくゆく)先生か〜!」

「ねぇねぇ、見て! 思った感じと全然違ったよ〜!」


 ん〜あぁ、まあ、確かに。

 丸いな……。何がとは言わんが。


「……!」


 ん?今、アイツ……こっちを見なかったか?

 

─────────────


「ええ──、それでは、巫卜占(ふぼくせん)先生による。」

「ファン占いのコーナーですッ!!」


「会場から選ばれた数名の方を、今回特別に巫卜占先生が占って頂けるとのことです!」


「「「キャ────!! 私を選んで──!!」」」


 たくっ、うるさいヤツらだな。

 占いなんて何が良いのかね。どうせ胡散臭い適当なこと並べてるだけだろ……。


「え〜! いいなぁ〜!」

「私の人生について占ってほしいかも!」



「………」


 あ、まじで?

 (ヒナ)って占い好きだったのか。


「知らなかった。」


「ん? 何が知らなかったの?」

「あっ、いや、何でもないよ!」



───ナタッ!


 ん?


「そこのアナタッ!! 占ってあげるから来なさい。」


 え?オレかぁ!?


「え! 凄いじゃん!」

「ほら、スズメくん! 行って来なよー!」


 雛に背中を押されて、進まない足を無理やり進めて歩く。


 白いテーブルクロスがかけられてある四角いテーブルの前に着く。

 テーブルの上には大きな水晶玉が台座の上に置いてあり、彼女は両手を前に出し、水晶玉を覆うような仕草をして居た。

 オレは、椅子に座る前に目の前の巨躯(きょく)を見つめた。


 ○ツコデラックスみたいだな。

 顔もそれとなく似ている。

 髪型だけ細木○子だ。

 髪色はピンク。派手だなぁ……。


 時間にして二秒くらいだったが、その後すぐに椅子に腰を下ろした。


「アンタ……妙だねぇ。」


「え?」


 マジか、何かに気付いたのか?

 勘が鋭いバァさんだな。


「何がですか?」


 なるべく平然を装え。

 動揺を見せたら怪しまれる。


 

 "ズキンッ"!!!


「ッ…!!」


 頭痛が……!!

 こんなときになんで…!?


「………」


 オレを見つめる彼女は、静かに、淡々と、声のトーン変えずに話し始めた。


「「このままだと、アナタはこの先とてつもない苦労に見舞われる。」」

「「そして、長い間──才能の芽が出ない可能性があるわ。」」


「どういうことだ!?」


「「戻ることはないのかい?」」



「は?」


 何を言ってるんだ?もう過去に戻って……

 もしかして、また戻れるのか?


 てか、何でそのことを知ってるんだ?

 オレがタイムスリップしたことに気づいてるのか?

 分かんねぇ……。


 それに、さっきから、こっちのことを無視してるみたいに話しやがって……。


「「ないことはないのかい。いや、限りなく少ないか。」」

「だから何の話をしてるんだ!」


「「そうか。」



「「数日、数ヶ月後か、それとも何年後になるか……」」


「「大切なのは声明だよ。」」

「「いいかい? しっかりと、声を前に出して知らせるんだよ」」



「「このまま行くと、失敗する可能性があるからね。」」


「だから、何の話を……」

「なぁ! バァさんオレの声、聞こえてんのか?」


「「どうさねぇ、希望は捨てちゃダメだよ。」」



「「大丈夫────────。──。」」


 あれ?聞こえない……?

 何て言ったんだ?


「バァさん!! おいッ! 聞こえねぇよ!」


 話の内容もよく分かんなかったし…。


「終わったよ。」

「席を離れな。」


「なっ、そんな一方的なことあるかよッ! ふざけんなッ!!」


「ちょっとー!! 暴れられたら困りますッ!」

「誰か! ボディガードなんとかしてー!!」


 オレは、ボディガードに連れられて、会場の外につまみ出された。

 そのすぐ後に、雛も外に出てきて心配された。


「災難だったねぇ〜。 まあ、何があったかは分かんないけど」

「相談ならいつでも乗るからねっ!」


 その笑顔と言葉に、オレは落ち着きを取り戻した。


「ありがとう、ヒナ」


 あっ……!!やべっ……つい名前で呼んじまった!!


「うん!」


 あれ?なんかセーフ?

 ヒワとヒナって似てるから、聞き間違いしたっぽいな……良かった。


「スズメくんはこの後予定とかある?」

「え? あ、いや、特に無いけど……」

「なら、ご飯食べに行かない?」


 満面の笑みで誘ってくる彼女の顔を見ると、ふと昔を記憶を思い出してしまった。

 いつも笑顔で、オレの心を照らしてくれる。

 そんな彼女が本当に愛おしかった。


「うん。 行き、ます。」


 なんだそれ、いまさら緊張すんなよオレ!

 全く、この頃のオレは童貞感丸出しだな……はは…。


「この辺に新しくできたお店があったんだよねー! オシャレなカフェでね〜!」

「行ってみたかったの!!」


 そうしてオレは、雛が行きたい店に行くことになった。

 

 そこでオレは、『ヒワさん』こと『木陰 雛子』に、完成したミステリ作品を見せることにした。


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