初任務
私たち、新設された多目的任務部隊の50名と、国王救出作戦部隊である陸軍から派遣された精鋭部隊10名は、作戦の打ち合わせを行った。この作戦の指揮官は、私、マーレイが務めることになった。
早速、この作戦のために、特別改装を施された潜水艦のお披露目と、紹介が隊員と、政府及び、軍部高官に行われた。
大型3型潜水艦、我がサヴォーク王国の汎用型潜水艦の一つで、全長150m全幅8mの大型艦だ。
これを改造した特殊潜水艦タルクは、船体はそのままに、艦首魚雷発射管4機を残し、後方発射管を撤去、その代わり、艦内から、液体や気体及び、物資の出し入れを水中で行えるようにし、船体には、5つのタンクを用意し、3つは、空気、水、燃料で、これに加えて、空のタンクがあり、任務によって使えるようになっている。また、80mになるシュノーケルを装備しており、空気の吸気口は、迷彩が施されていた。
艦の形状は、第二次世界大戦時の潜水艦に酷似しており艦首と船体上面及び、下面を強化しており、底に、身を置いたり、敵の船底に体当たりして、穴をあけることも考えられている設計なのだ。更に、8.8cm両用砲を一門と12.7mm三連装機銃を甲板に持っており、最高速力は、21ノットである。最大登場員数は、艦内に、65人が乗れるようになっている。
一通り説明を終え、武装の整備、弾薬及び物資の積み込みを始めた。二交代制で準備を進めた。
三日後、準備を終えると全員に招集をかけた。そして、王国軍総司令部から示された初めの任務に取り掛かることにした。
タルク及び、その乗組員は司令部のある島から本土に向け出撃するのだった。我々は、道中作戦について確認した。今回の作戦は、捕らえられた国王の居場所を本土潜入部隊が突き止めたため国王のことが臨時政府にとってリスクが大きくなり、処刑されるとまずいため敵が国王を利用しているうちに救出することにしたのだ。本土は、軍部の臨時政府が戦争継続の道を選んだため本土では、講和派勢力や軍部の戦争第一の政策に対して、王政時代へ戻るのを望む反抗勢力が大量に結成されており、それぞれの勢力がネットワークを築き協力関係を組み臨時政府に対抗するものもあれば、自勢力の目的のために、他勢力と対立し、様々な方法で互いに妨害しあうなどしていた。また、評議会も周辺国との講和や旧王国領内での影響力の拡大に難航しており、それに失望した一部の民主勢力が王政や軍部に妥協をし協力しようという動きもあった。
そのような状況下で、我々は、王政復古を望む最大反抗勢力王国開放同盟との協力関係及び、解放同盟と一時的に協力関係を結んでいた民主勢力の中でも比較的中立的で王国の立憲君主制成立を望んでいる民主同盟会との協力関係を間接的に組めたものの王国とは、具体的な統一後の議会の権限を確認するまでは、解放同盟との協力にとどめ自組織の求心力を失ってしまうため、末端の加盟者は現在王国軍とは敵対関係にあるので注意するよう伝えられた。
今回の作戦参加勢力は、本土で、王国の王による再統一を望む勢力の中で、正当性や規模が一番大きい解放同盟と、王との妥協を目指し、民主主義勢力の中で2番目の規模を持つ民主同盟会と王国特殊部隊の3勢力で今回の任務に挑むことになっている。
陸軍特殊部隊は、上陸後速やかに解放同盟と合流し、一般加盟者のふりをする。その後、他抵抗勢力に、解放同盟や民主同盟会から各地で散発的な攻撃を行うよう要請し、それに合わせて民主同盟会が牢獄を包囲し攻撃、特殊部隊含む解放同盟は、突入し、国王を開放するという作戦だ。
「今回は、もしかすると国王救出の最後のチャンスかもしれない。現在の同盟国であるルーラシア王国の国王について知っているか?」私がそう問いかけると、フェーブがいち早く答えた。
「我が国の国王陛下の親戚だとして同盟を組んではいますがあの国の国王は高齢で、後継ぎがおらず戦時中に亡くなられると、支援が得られなくなる可能性があることでしょうか。」
「そうだ。我々は、単独では戦えない。長期戦になり、総力戦を避けるために我が国で、代理戦争を始めたものの、ルーラシアが支援をやめると直接攻撃の危険がある。ここで、内戦終結の糸口をつかまないと不味い。」そう私は、みんなの前で語るのだった。