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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

『推し』の双子の兄に興味を持たれた場合の対処法は無害アピールをすることと相場は決まっている!

作者: 天狐御冬

「ゲームのまんまだ…!」




目の前には夢にまで見た光景があった。


城かと間違えそうになるくらい立派過ぎる校舎、その校舎に続く美しいメインストリート、綺麗に整えられ、四阿まで完備された校庭、荘厳な校門。


全てスチルでしか見ることの出来なかったものばかり。


それが今、目の前に広がり、今日から通うのだと信じられるだろうか。







前世は普通の社会人をしていた。どうして亡くなったのかは覚えていない。



そして今世の私はシャルロッテ・ミッレ伯爵令嬢として生を受けた。優しい両親に可愛い弟がいて、何も心配することなく、ただ楽しく日々を過ごしていた。




しかし、5歳の時に開かれた王家主催のお茶会で気づいてしまった。


ここが乙女ゲームの世界で、私の『推し』である、ポルクス・ポールスト侯爵令息がいることを。そしてその彼が苦労する未来が待っていることを。



それからは必死に努力した。


彼と同じ学園に行けるように勉強に励んだ。


魔法のある世界で貴族は扱えて当然という認識に、彼の力になれるように、これも頑張った。というより魔法が使えることが楽しすぎた。


そして最も大事な『推し』に貢ぐため、助けるための軍資金調達。


これは前世の知識を生かした商売や領地経営を行い、所謂知識チートをした。お陰でこの国でも有数の資金家になり、『推し』の生家が領地経営に苦しんでいる際には資金援助をすることが出来た。




そして迎えた15の春。


見事に『推し』の通う学園に合格することが出来たのだ。もちろん泣いて喜んだ。家族も我が事のように喜んでお祝いしてくれた。



校門を潜り、メインストリートを進む。花弁が舞うこの風景がゲームの始まりを告げている。



きっとこの学園のどこかに『推し』が、ヒロインが、攻略対象者達がいるだろう。その人達を見ることが出来る毎日が今からとても楽しみだ。



入学式に出席するために先輩や教師に指示に従って講堂へ向かい、席に座り、式が始まる。


どこの世界も共通なのか、学園長の長い挨拶がやっと終わる。


すると、「「「キャー!!」」」という黄色い女生徒の歓声と共に壇上に上がってきたのは第3皇子であり、攻略対象者でもある人物だった。


確かにイケメンで王道王子さまって感じ!しかもゲームのまんま!生徒会長挨拶が始まると辺りはシーンッと静まり返って生徒会長の美声だけが響き渡り、話し終わった瞬間に講堂に溢れんばかりの拍手が巻き起こった。


私も精一杯拍手をする。声も内容も素晴らしかった。





そうして私の学園生活はスタートし、最高以外の言葉が見当たらない程に充実した日々を送っている。



「ごきげんよう!シャルロッテ様!」


「ごきげんよう、リリアーナ様」


まず、ヒロインであるリリアーナ・レバン男爵令嬢と友人になれた。


ゲーム同様にいじめられていたので令嬢達を黙らせてやった。主に資金の差や商売をチラつかせるとすぐに逃げていった。



「キャー!!第三皇子殿下よ!!」


「今日もなんて麗しいの…!」


次に攻略対象者達を遠目で観察することが出来る。しかもほぼ毎日誰かは拝むことが可能なのだ。



「ポールスト様方は本当に美しくていらっしゃるわぁ」


「わたくしは特に、ポルクス様をお慕い申し上げておりますの…」


そして最後に『推し』であるポルクス様のファンクラブに加入することが出来た。お陰で他のファンたちと交流が増え、たくさんの友人が出来た。





しかし今、私は裏庭でピンチに陥っている。



その理由は目の前にいる攻略対象者であり、『推し』の双子の兄、カストル・ポールスト。


ポルクス様にそっくりな黒に近い濃紺の髪に同色の瞳。常に笑顔でありながらもミステリアスな雰囲気を醸し出しているこの人に正直どうしていいか分からない。何が起こっているんだろうか…。


彼はにっこりとした笑みを私に向けて、優しく問いかけてくる。



「貴方方ミッレ伯爵家は私達侯爵家に何を要求しますか。」



いきなりの質問に頭には「?」が浮かんでいる。


だって貴族同士のことなんかただの令嬢が知るわけもない。しかも理解できる程私自身、賢くもない。



「…仰っている意味が分かりかねます。どういうことでしょうか?」


「別に惚けずとも良いではありませんか。ミッレ伯爵家からポールスト家は資金援助を受けています。その見返りとして何を望んでいるかを聞いているのです。」



…あー…。そういうことね…。


合点がいった。

彼らの領地に限らず、この国の多くの土地ではストーリー通りに干ばつによる多大な被害を受けて資金繰りに困り果てている。


だからこそ、資金援助を我が家に申し込んでくる貴族は少なくない。


その中で確かに私は伯爵家名義で彼らの生家に多額の援助をした。そのことを言っているんだと思う。



「御心配には及びません。ポールスト家に支援した資金のほとんどは私の資産から出しております。ですから、貴方方に対してミッレ伯爵家から何かを要求するようなことはございません。御安心下さい。」



事実を説明したから理解してくれると思う。


しかし理解はしても、納得はして貰えていないようで目を眇められている。


こういう時にやれることは決まっている。



「カストル様。私、ポルクス様のことをお慕い申し上げております。」


「…それは、弟との婚約を望むということではないのですか?」


「違います。私の願いはポルクス様が幸せになることです。資金援助に関しても、しなかった時よりも不自由しないだろうと思ってのことです。彼自身が私との婚約を望むのであれば考えさせて頂きますが、そうでないならばご遠慮させて頂きます。」



そう、ヲタクとして貢いでいるだけですよ、ということを遠回しに伝える。



私は断じてガチ恋ではない。



「…それを私に信じろと?」


「信じて頂かなくて結構です。ただ、良かれと思って、とかいう気の遣い方はしないで下さい。迷惑です。」



そこまできっぱりと言われるとは思っていなかったのだろう、訝しげに見つめられてしまった。


これ以上話すこともなかったので「失礼します。」とだけ告げてその場を後にした。






すっごく緊張したーーー!


『推し』と同じ顔面してるの、本当に狡い。声も口調も全然違うけどかっこいいことには変わりがないから心臓に悪い。





そしてあの日以降、カストル様がよく私に話しかけてくるようになった。



例えば。


「丁度そちらも昼食ですか?宜しければご一緒しませんか?」



とか。


「1年生は今頃この辺りを学んでいるのではありませんか?その範囲は試験で出される可能性が高いですから、宜しければ、一緒に図書室に行きませんか?お勧めの本を紹介します。」



更には。


「もうそろそろ期末試験ですから、勉強会でもいかがでしょう?」





そのおかげでポルクス様と話せる機会も何回かあったし、何よりすごく為になる情報ばかりで感謝しかない。


本人としては少しでも恩を返しておこうっていう考えだと思う。多分だけど。


そしてそのおかげもあってか、ヒロインであるリリィちゃんはポルクス様ルートに入っている。


見た感じ好感度もだいぶ上がっているし、一緒に居る二人が楽しそうで、幸せそうな『推し』を見ると自分も幸せな気分になれるから是非そのまま頑張ってほしい。





期末試験が終わると夏季休暇に入る。


皆に会えなくなるのは残念でしかないけど、やらないといけないことがある。


まず、立ち上げている商会の経営確認や指導。それから学園の夏季課題。あと領地にも一度帰らないといけない。



最後にポールスト領の干ばつの対処。



これ自体は前々から考えていたことで、魔法を使って雨を降らようと思っている。


そんなことをすれば普通は術者が倒れてしまうが、頑張って鍛えた技術があるし、領地でも練習させてもらった。


正直勝算は高いと思っている。


そうすればポールスト兄弟も少しは安心できるし、他家に頼る必要もなくなるかもしれないし、心配事がなくなったらリリィちゃんとの恋愛に集中できることだろう。




夏季休暇後半に差し掛かる頃に漸く諸々を済ませてポールスト領に赴く。


でもあくまで他家の領地なのでお忍びで回っていく。


魔法を使って疲れてしまったら休憩したり、街を散策したりしてしっかり満喫することも忘れない。


雨が降ることで領民の皆さんもとても喜んでいたからいい気分にもなれた。


池や湖、川、貯水槽、井戸。色々なところに水を提供していく。


根本的な解決にはなっていないのは分かっているけど、何もしないなんてことは出来ない。



だって、『推し』達が困っているんだから。



…夏季休暇中に全ての街を回ることが出来た。きっとこれで少しは現状が良くなると思う。





忙しかった夏季休暇が終わって新学期。



いきなりカストル様に呼び出された。もしかして私がしてたことバレてる?


恐る恐る会いに行くとそれはそれはいい笑顔で待っていた。



「貴方、夏季休暇中に領地に来ませんでしたか?」


「いいえ、行っていませんよ。どうかしましたか?」


「いえ。領地の状況が良くなりまして、伯爵家からの援助がなくともやっていけそうなものですから。」


「それは良かったですね。」


「ええ。ありがとうございます。」



資金援助の件もあって私が何かしてないか疑っただけっぽいからバレてなさそう。うまくいったようで本当に良かった。



憂いのない美しい微笑みを向けてくれる。不覚にもドキッとしてしまった。







これは『推し』のいる世界に転生した少女の推し活のお話。

きっとこの先も推し活は続いていく、はず…?

読んでいただきありがとうございます!

双子、良いですよね…!


「面白いなぁ」

「続きが見たいなぁ」

と思ったら!


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つまらなかったら★☆☆☆☆、


正直に感じたままの気持ちでいいのでぜひ!


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双子の兄とのフラグが経っているのにここで終わりですかっ!! 続きを……
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