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悪戯と黄昏の刻に・第一紀(異能者の戦い)  作者: 嶋 秀
第二章(リアル世界篇(伝説の魔術師リヴ・レヴ(詩音)を中心としたルキフェルとの戦い))
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第32話(レヴの反省会)

レヴを襲撃していた黒幕は、エーリットと暴いたものの、取り逃がしてしまったレヴ。

空港に到着後、暴走してしまったことを反省させられることになる詩音レヴであった。


 HWI島の空港ターミナル内で、足止めとなったレヴ一行。


 結局、詩音レヴの命を狙っていたのは、ルキフェル五大良将の一人で、深い因縁関係のアルシア・エーリットであることが判明したものの、彼女を拘束若しくは殺害することに失敗し、取り逃がしたことで、相次いだレヴ襲撃事件の解決に程遠い結果となってしまったのだった。


 航空機内で、詩音レヴに対する襲撃を敢行した男は確保されたものの、マインドコントロールされていたことから、ロクに記憶が無いものと思われた。

 その後の取り調べで予想通り、エーリットやルキフェルに関する情報をこの男が持っている筈も無く、それどころか男自身半ば呆然自失の状態で、人種差別的な陰謀論信者であることにより、突然沸き起こった憎悪の感情から、今回の犯行を引き起こしたこと以外は、何も覚えていない状態であった。



 「シオンさん。 今回も多くの人々の命を救って頂き、ありがとうございます」

 事件を知り、駆け付けて来てくれた特別チームのシュミット中佐から謝意を述べられたものの、そもそも詩音レヴが搭乗していなければ、航空機が墜落しかける事態も発生しなかったと思われることから、素直に謝意を受け容れることの出来ないレヴであった。


 「あ~あ」 

 嘆き節ばかりが出てしまう詩音レヴ

 自身では万全の作戦であると自負していたものの、見事なぐらいの失敗に終わり、無駄に沢山予約した飛行機の座席の代金や長期予約した一棟借上げのコテージ代が重くのしかかるだけの結末に、金欠レヴも収入源の無いただのお嬢様である詩音も、ガックリきていたのであった。


 「もう少し、僕達のことを信用して欲しかったなあ~。 全部1人で決めるのではなくてさ〜」

 莉空にまで苦言を呈されてしまい、益々肩を落とす詩音。

 「ところで、刺されたお腹は大丈夫だったの?」

 「それはね......何度も刺されていたら、私が間抜けってことになるでしょ?」

 そう言いながら、防刃チョッキを莉空に手渡す詩音。

 確認すると、受け取った防刃チョッキには、大きな刃物傷が付いていたのであった。

 「これ、もし刺さっていたら、大変なことになっていたんじゃない?」

 莉空は予想された襲撃に対して、防刃衣で対処したことを、危険過ぎると批判。

 流石のレヴも項垂れる程の、危機一髪の状況であったのだ。


 「シオンさん。 犯人が持ち込んだ刃物には致死性の猛毒が塗布されていましたよ」

 部下から報告を受けていたシュミット中佐から、追加の事実報告を受け、顔面蒼白になった莉空。

 「ほら〜。 もし詩音が今回の襲撃で刺されて毒が回って死んでいたら、大変なことになっていたんだよ。 もっと仲間を信用して、対応策をみんなで話し合わなきゃダメ。 詩音もレヴも少し天然なところがあるから、自分だけで決めるのは、計画にヌケが出来て危険過ぎる......」

 厳しい言葉を連ねた後、莉空は少し涙ぐんでしまう。


 その姿を見て、

 「ゴメン。 ちょっと自信過剰過ぎたかもしれない......」 

 ようやく反省の弁を述べた詩音レヴ

 その言葉を聞くなり、詩音は莉空に抱き締められてしまい、少し困惑気味。

 こういう反応は、アールヴ・エルフには考えられない行動なので、どう対応すべきか全くわからないレヴ......

 実際のところ、刃物の毒は人間にとって猛毒だが、ハーフ・エルフであるレヴには効果の無いものであった。

 それに詩音レヴは魔術で体内の毒を取り除くことも出来るし、刺されても傷を治療する能力も有るので、莉空が心配する様なことには絶対ならないのだが、あまりにも悲しむ様子に、詩音は何も言い出せないまま、莉空の戒めの言葉を受け容れておくしかなかったのであった......



 その後、今回の2事件について、改めて色々な状況整理をしながら、シュミット中佐達特別チームの面々と詩音レヴや海未は話し合うこととなった。

 「中佐は、どのレベル迄異能者やルキフェルのことを知っているのですか? フェルト大佐の半分くらい?」

 話をする前提として、詩音レヴは知識レベルの質問をする。

 「詩音、ちょっと失礼じゃないか?」

 海未が窘めるも、

 「いや、全然構わないよ。 私が知っていることは、多分大佐の半分程度だろうね」

 その答えを聞いてから、詩音レヴは話を始めた。


 「OAF島での乱射事件と今回の航空機内での殺人未遂事件並びに航空機墜落未遂の事象について、その黒幕で計画者は、アルシア・エーリットなるE優諸国出身の女性だということなのですね」

 中佐は詩音に再確認する。

 意気消沈している詩音レヴは頷くのみ。

 「ただし、具体的な証拠は無いと?」

 「はい」

 「その証拠を集めるのは、私達の役目だと」

 「はい」

 その答えを聞き、天を仰ぐ中佐。

 ルキフェルが絡んだ事件の証拠集めは非常に難しい上、過去に起こした数名の異能者殺害事件も、それ以外の数多くのテロ事件も、ほぼ全てが迷宮入りしているからだ。


 「解決は難しそうだね」

 中佐は眉間にシワを寄せて、頭を抱えるような仕草をする。

 その姿を見て、一定の真実は知っておいて貰った方が良いと思い、詩音レヴは少しリップサービスを始めるのだった。

 「中佐、随分険しい表情ですね」

 「そりゃあね〜。 知っているかな? ルキフェルが絡んだ重要重大事件のほぼ全てが未解決なことを」

 「知っていますよ」

 「今回も1件、また未解決事件が増えると思うとね......」

 「中佐。 ではこの真実を知っていますか? 人間の世界では未解決でも、私の認識ではほぼ全てが解決済みであることを」

 詩音レヴのその言葉を聞き、表情がみるみる変化した中佐。

 「それって、まさか......」

 「伝説の魔術師リヴ・レヴが、未解決事件の黒幕を数多く斃していますから。 だから出来るところ迄の捜査はして下さい」

 そこまで教えると、ようやく笑顔を見せた詩音。


 「アルシア・エーリットはルキフェルの幹部では数少ない生者なのです。 それ故に、国際手配するだけで、彼女の行動範囲は狭くなります」

 「制限を掛けることが出来れば、彼女のテロ行為を一定レベル防ぐことが出来るということだね」

 「はい」

 「わかった。 捜査することは無駄では無いってことか......」

 「ルキフェルの幹部の大半は、生死の狭間に落ちた異能者を蘇らせた者達であり、生者であるエーリット等を含めて、人間が捕えて処罰することはほぼ不可能なことです。 それは人智を超越した存在のリヴ・レヴの役目ですから」

 詩音レヴは、自身の役割を他人称で説明する。

 中佐は、詩音がレヴだということまでは知らないようであったからだ。


 「付け加えると、ルキフェルは現実世界でも、多くの人間をさり気なく配下としており、あらゆる場面でその影響力を行使することが可能になっています。 伝説の大魔術師リヴ・レヴであっても、全ての事象を魔術だけで解明したり解決するのは、かなり難しい時代になりました。 特別チームのような存在は非常に貴重な組織なのです。 そのプライドを持って、今後も宜しくお願いします」

 詩音レヴは中佐を励ます為に、だいぶリップサービスをしてみせた。

 その言葉に中佐は、

 「シオンさん、ありがとうございます。 ところで若しかして、貴女は伝説のレヴの知り合いで......」

 そこでシーッという、唇に指を当てたポーズをした詩音レヴ

 「それ以上言葉にしてはダメですよ。 レヴが魔術で中佐の記憶を操作することになるので」

 悪戯顔の詩音。

 レヴに関する事実を、人々の記憶と記録から消すことは朝飯前なので、結構安易に秘密を明かしてしまうところはレヴの欠点であると同時に、愛らしい行動でもあるのだった......


 「一つ良いモノをお見せしましょう」

 詩音レヴは、突然そんなことを言い出すと、ブツブツと意味不明の言葉を呟く。

 どうも、アールヴ・エルフ語のようであった。

 その様子を見守る、莉空達3人とシュミット中佐とその部下2人。

 やがて、

 「はい」

と合図をすると、

 「中佐の部下のお二方は、今私が話した内容のうち、レヴに関することを全て覚えていませんよ」

と言い出したのだ。


 そこで中佐は、部下に簡単な質問をしてみる。

 リヴ・レヴはどういう存在かとか、今何処に居るのか、眼の前に居るのか等と。

 同席していた部下2人は不思議そうな表情で、上司の質問に答え始める。

 「レヴは、伝説の存在ですよね」

 「中佐、目の前に居るわけありませんよ。 我々が特別チームのメンバーとは言っても、レヴと会った人、誰も居ないですよね? だから、伝説なのでしょ」

との回答を聞き、詩音レヴの方を見た中佐。

 「こういうことです。 さっきの話は胸のうちに留めておいて下さいね」

 詩音はひとことだけ付け加えると、別の話題に変えるのであった。




 AM国軍特別チームとの会合を終えて、暫く空港ターミナル内での待機を求められたことから、場所を変えた詩音達。

 「何だか、慌ただしい1日になっちゃったね。 色々巡りたかったのに〜」

 紗良がせっかくHWI島に来たのに、観光も出来なかったことを残念がったので、

 「紗良は豪胆だなあ~。 こんな状況でも、そういう感想を述べるなんてさ」

 海未が少し呆れた表情を見せながら、感想をひとこと。

 「ごめんなさい、先輩達。 僕達のゴタゴタに巻き込んでしまって」

 莉空の謝罪に、

 「暇な一日よりも、変化の有る一日の方が楽しいさ。 だから気にするなよ、莉空。 それに伝説の大魔術師様の実力も見ることが出来たし」

 少し笑いながら答えた海未。

 「それって、レヴが大したことないってこと?」

 詩音が口を尖らせて、不満気な様子。

 「凄い魔術師には違いないけど、ポカも有って、思っていたより人間っぽいなあ~って感じたんだよ」

 その感想に、複雑な表情を見せた詩音レヴ

 「レヴの実力は、現実世界よりもパラレル世界での方が発揮されるからね」

 莉空のフォローにようやく笑顔に戻る。

 「現実世界だと、使える魔術に制限が有るでしょ? 強力な攻撃魔術は使っちゃうと、小国を滅ぼしてしまう威力があるから。 結構大変なのよ、周囲に気を遣うっていうのはね」

 饒舌に言い訳をする詩音。

 やっと、いつもの調子に戻って来たみたいであった。

 一安心の莉空。


 「でも今回、ちょっと暴走したことは反省してもらわなきゃだね、詩音」

 莉空の忠告に、耳が痛いという表情を見せる。

 コロコロ変わるその表情と、愛嬌のある態度や言動がレヴの魅力であると、改めて感じた莉空であった。

 「それでさ~詩音。 今回の作戦で掛かった費用、どう工面するの? 流石にクレカの家族カードに請求が来たら、お祖父様に怒られるんじゃない?」

 一気に現実へと呼び戻され、元気が無くなる詩音。

 レヴと詩音が実行した今回の作戦は、基本的に詩音の実家の財力をあてにしたものであったからだ。


 「この後、お祖父様のところに行って謝罪するわ。 ちょうどエーリットの尾行も途切れたし、HWI諸島から居場所を変えた方が良いでしょ?」

 余程謝罪するのが嫌なのであろう。

 今までにないくらい力無いトーンで、今後の予定を話す詩音。

 流石に海未と紗良も、同情を覚えるくらいのショボクレぶり。

 「詩音。 結局、幾ら掛かったの?」

 紗良のその質問に、指を一本立てた詩音。

 「1000万EN?」

 首を振る詩音。

 「一億EN?」

 再び首を振る。

 「わかった。 100万$だ」

 海未の言葉に小さく頷く詩音。

 「大したこと無いじゃん。 俺が......」

 海未がそこまで言ったところで、莉空に口を塞がれる。

 「先輩、だめですよ。 詩音には少し反省してもらわなきゃイケナイので、安易にその言葉を吐いては」

 一瞬笑顔になった詩音も、莉空の横槍に、渋い表情へ。

 そして、涙を浮かべて、悲しそうな表情に変化......

 「莉空。 そんなこと言ったって、まだ大学生では負担出来る金額じゃないぞ。 100万$はNH国通貨で3億EN以上だぞ」

 詩音レヴの涙に、本気で心配する海未。

 海未の配慮には感謝の意を示した莉空。

 「詩音の場合、お祖父様に謝罪すれば支払って貰える金額なのですから。 それに......」

 そこまで語ると詩音をジーッと見詰める莉空。

 「それに?」

 紗良が続きを話すように促すと、

 「その涙は嘘泣きですよ」

 流石、四六時中一緒に行動している彼氏である。

 それに、2度のルキフェル五大良将との戦いで、ある程度レヴの性格や行動を把握済みの莉空。

 詩音レヴの涙がニセモノだと、直ぐに見抜いてしまったのだ。


 「ちッ、莉空め〜。 余計なことを言いやがって。 あと少しで自己負担ゼロだったのに......」

 本性を露わにしたレヴ。

 その言葉に思わず笑い出す紗良。

 「詩音って変わったね〜。 初めて一緒に戦った頃は、絶対零度、氷の美女っていう雰囲気で、感情を表に出さない子だったのに」

 その言葉に、嘘泣きを止めた詩音。

 「良い変化だと思うよ。 これからはレヴとして、長い長い人生を歩んで行くのだから、明るい人柄の方が絶対得だよ」

 紗良の感想に、少し嬉しそうな表情を浮かべるのであった。



 しかし、現実は厳しい。

 そんな会話を続けていると、遂に詩音の端末へ連絡が......

 詩音の網膜には『お祖父様』と映し出されていた。

 ビクビクしながら、応答する詩音。

 すると、周囲に居る3人にも聞こえる大声が聞こえてきたのだ。

 「詩音。 これは一体どういうことなのかね?」

 最初は、怒りを少し抑えて問い質すだけのトーンであったが、

 「カード会社から問い合わせが入っているぞ。 限度額を大幅超過って、何の代金だ。 バカモノ」

 それに対し、ちっちゃくなる詩音。

 しどろもどろで、ロクに答えることが出来ない。

 「お前は、金を稼ぐ大変さが、全く理解出来ていないようだな」

 その後は延々と説教が続く。

 そして、

 「今回の分は特別に支払ってやるが、以後お前名義のカードは使用停止だ。 大学卒業まで残りの学費と生活費は自分で工面するんだな。 それも出来ないようなら、企業経営など出来る筈が無い。 いくら儂の血を引く唯独りの孫とはいえ、お前が後継という話も考え直すからな」

 最後通告を受け、茫然自失状態となる詩音レヴ

 やがて、本当に泣き出してしまうのであった...... 

 


 予想されたこととは言え、後先を考えない計画を実行したレヴの自業自得である。

 3人は、泣き止むまで詩音を放っておくことにする。

 「ねえ、レヴって金銭感覚無いの?」

 「踏み倒すのは当然だと思っているからね」

 「いくらお嬢様って言っても、無断で3.5億も使ったら、怒られるに決まっているよね? うちだったら勘当されているわ。 同じお嬢様の範疇だけど」

 紗良はあまりにも酷い状況に、莉空とそんな会話をしている。


 「ところでさ〜。 飛行機の代金はもう到着しているから、支払うしかないけど、宿代は大半が返って来るんじゃない? キャンセルすれば」

 「それがですね~。 返金不可のプランを予約しちゃったらしいんですよ。 値段しか見ていなかったみたいで」

 「何処の宿? 俺が掛け合ってみるよ。 今回のカード支払い代金の大半がその宿代でしょ?」

 海未の申し出に、詩音の代わりにお願いする莉空。

 海未はAM国の実業家なので、その力を利用しない手は無いからだ。


 何処かに連絡を取る海未。

 やがて、

 「決済済みの代金のうち、8割は返してくれるってさ〜。 一泊もしないのに、98万$も貰えないって。 でも、何でこんな高い宿を2か月分も予約入れたの? 俺だって、この超高級一棟貸し、借りる気は起きないよ」

 その会話を聞いて、ようやく泣き止んだ詩音レヴ

 そして、海未に、

 「その返金、まさかカード会社に行っちゃうの? 私の口座にしてよ~。 カード解約されちゃうかもしれないし......」

と言い出す始末。

 呆れる3人。

 現金なところは、レヴの性格が出ているのだ。

 「詩音。 とりあえず、お祖父様のところに行って謝罪しようよ。 それが今一番為すべきこと。 返金を自分の口座に入れて、3年間乗り切ろうなんて、あさましいよ」

 莉空に怒られてしまい、再び悄気げる詩音。

 よっぽど、お祖父様に会いたくないようだ。

 「僕も一緒に謝るし、先輩2人も一緒に来て事情を説明してくれるってさ。 お祖父様は異能者の件はご存知なのでしょ?」

 頷く詩音レヴ

 渋々だが、謝罪行脚を承諾したのだった。



 一方、海未と紗良は、

 「私達も行かなきゃダメかな~」

 「俺達、HWIで休暇中なんだよ?」

 璃月家のトラブルに、関わりたくないのは当然であったが、

 「乗り掛かった船だから宜しくお願いしますよ。 船頭がちょっと天然で、沈みかけていますが」

 素敵な笑顔でお願いする莉空。

 後輩のそんな顔を見せられては、無下に断ること、高校時代の先輩としてはなかなか出来るものではない。

 しかも、次回の異能者の戦いでは莉空に頼るしかないという事情もある。

 そんな小さな打算も有って、AM国LA市郊外に有る、詩音の祖父宅を4人で訪問することが決定されたのだ。

 「わかったよ。 詩音がカードを止められて、アルバイト生活をすることになるのは、可哀想だからさ」

 「その姿、見て見たいけどなあ~」

 海未と紗良は、そんなことを言いながら、承諾してくれたのだった。


 「ありがとう、みんな。 お馬鹿な私だけど、今後も宜しくね」

 詩音レヴは、3人の会話に聞き耳を立て、全てが決まってから、感謝の言葉を口にする。

 こうした殊勝な態度と、タイミングを図る術は、長年人類社会を巧みに生き抜いてきたレヴの体得した技だ。


 「詩音には敵わないな。 結局、僕達が自主的に解決への道筋を立ててくれることに、期待していたのでしょ?」

 莉空は、その思惑をお見通しだと言ったのだが、

 「僕達をもっと頼るべきだと、私を叱ったのは誰でしたっけ? その提言に今回は従ったのですよ」

 詩音レヴはそういうなり、莉空の口を自身の唇で塞ぐ。

 「莉空〜。 こりゃ一本取られたな。 詩音にお前じゃあ、絶対敵わないだろうな」

 海未が大笑いしながら、ひとこと感想を述べると、詩音は感謝のハグを海未に。

 そして、紗良にも。


 「私がレヴだけだった時には、こういうことする習慣は無かったけど、詩音と一緒になったから、少し人間の習慣も取り入れてみることにしたの。 先輩、莉空。 今日は本当にありがとう」

 その言葉を聞き、一同に心からの本当の笑顔が戻る。

 ずっと孤高の異人という立場を貫いてきたレヴであったが、詩音を取り込まざるを得なくなったことで、少し考え方に変化が起きているようだ。

 それが、良い変化で有って欲しいと、莉空は一緒に笑いながら、感じたのであった......

連載再開(再会)記念での3日連続投稿です。

今後も、レヴ(詩音)の活躍?を応援よろしくお願いします。

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