表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/43

野望(ゆめ)のつづき

 冒険者ギルドの館に入ってすぐ、ぶち抜きになった広いフロアは、今日も仲間や情報を求めるたくさんの冒険者たちでにぎわっている。


 イシュアは、中でも経験の浅そうなものを探して視線をうろつかせていた。

 (パーティー)を組んで一緒に迷宮へ降りてくれる仲間を探しているからだ。


 今まで何度か、臨時で(パーティー)に混ぜてもらったり、一回限りの(パーティー)を組んで浅い階層に降りたりもしたが、そろそろ腰を据えて一緒に迷宮を攻略できる仲間が欲しいと思うようになった。



「王子様……? 冒険者になる……ですってえええっっっ?」



 アリエッタには肩をつかまれ延々と揺すられてしまったが、イシュアの決意は変わらなかった。


 幼い頃憧れた迷宮攻略譚の世界で、信頼できる仲間たちと冒険をしたい。

 『黄金の鈴』の皆のように。


 それがイシュアのはじめての、みずから望んだ夢になったからだ。


 故郷の老爺に手紙を送った。


 冒険者として独り立ちできるまでは帰れないことをわび、老爺の健康と幸せを祈る文面に、それはそれは嬉しそうな返事を寄越してくれた。


 ふと見ると、四人組の(パーティー)が、きょろきょろと辺りを見回している。


 新たなメンバーを探しているのだろうか。

 条件が合えば、イシュアの新しい仲間になってくれるかもしれない。


 イシュアはその冒険者たちに歩み寄った。


「……本当に、その救援隊なんてものとの契約が必要なのか?」


 剣士らしき男が、いぶかしげな口調で話している。


「迷宮に降りる前に契約を交わしたものの命に危機が迫ったとき、魔法道具の鈴の音に呼応し、たとえどんなに深い階層にでも駆けつけて救助する。

 迷宮最高の救助者にして、迷宮最強の勇者……。

 ……なんて、そんなおとぎ話、信じられないぜ」


 肩をすくめる男の様子に、イシュアはくすりと笑った。


(だろうな)


 でも、本当の話なんだ。


 そう言いたくて、イシュアは口を開こうとした。


 まさにその時、奥の酒場の方から、シルヴァがのんびりと歩いてきた。

 イシュアの姿を認めて、、陽気に声を掛けてくる。


「おう、どうだ調子は?

 ちょうどいいとこで会った。

 ちょ~っと金貸してくんない?

 すぐ十倍にして返すからさ! な?」


 迷宮最高の救助者にして、迷宮最強の勇者は、相変わらず常敗のようだ。

                                        了


救援隊レスキューパーティー『黄金の鈴』出動します!~最強魔導士パーティーはダンジョンで誰かの野望をレスキューする~第一話 依頼者イシュアをお読みいただきましてありがとうございました。

第二話は只今構想中です。シルヴァの正体に迫るお話になる予定です。

第二話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ