表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/43

やりたいこと 3

 自分の堂々とした声に、思わず驚いてしまう。

 騎士たちからどっと笑い声が起こっても、「アリエッタは無茶しないとよいが」などと考える余裕が、今のイシュアには出来ていた。


 その態度が気に障ったのか、騎士がさらに増長し語気を荒らげる。


「どけと言っているのだ!

 本日は、殿下直々に第一階層の大回廊まで降りていただく!

 危険に身を晒すをいとわぬ勇気……さすがは我らが殿下だ。

 正しく次代の王に相応しい!

 勇者の試練に挑む殿下の邪魔をするなら、容赦はせんぞ!」


「勇者の試練……」


 つい先程、苛烈を極める環境の第二十七階層に身を置いたイシュアだ。

 帰りに通りがかった第一階層の大回廊の、あの、のんびりまったりとした様子との落差を思い出し、うっかりぷっと鼻息を吹き出してしまった。


「何が可笑しい!」


 騎士たちが一斉に剣の柄に手を遣った。

 主君を馬鹿にされては黙っていられないだろう。


 大通りに緊張が走る。


 相手は一小隊とはいえ、魔導士を含んだ騎士団だ。

 大通りの両脇に散らばる野次馬も含めて、怪我人を出してしまうのは本意ではない。

 シルヴァが魔法の展開に備える。


 その時、後方の馬上から、無駄に軽やかな声がかかった。

「よい、皆下がれ」


 ルーファスが騎乗のまま、しずしずと前に進み出てきた。


 二十歳をやや超えているだろうか。顔立ちはイシュアに似ていなくもない。

 ただ肌の白さが、高貴な育ちを物語っていた。


「殿下……しかし!」

「よいのだ。

 我が弟は、ものを知らぬだけなのだ。

 許してやれ」

「なんですってえ!」


 ギヨームがすかさずアリエッタの腕を捉まえる。

 一瞬の差であやうく大通りの石畳が粉々に砕け散るところだった。


 大斧をひょいと取り上げてシルヴァに放り、シルヴァはあっという間に羊皮紙の魔方陣に大斧を仕舞い込んだ。見事な連携だ。


 口を開こうとしたイシュアにものを言わせず、ルーファスは鷹揚にうなずく。


「そなたは知らぬのであろうが、グラータ地下大迷宮とは、それは危険な場所なのだ。

 わたしの勇敢な騎士たちは、これからその命を賭して、迷宮の奥深くまで降りようとしておる。


 第十四階層。


 そこに住まうといわれる大鎧百足の『兜』……。


 数多の勇者たちが挑み、討伐かなわず散っていったと聞く。

 困難な命題だが、わたしの勇敢な騎士たちなら必ずや……!」


「大鎧百足の……『兜』、だと?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ