最強魔導士、働く 5
「シルヴァ! のんびり見てないであなたも働きなさいよ!」
「ひでえな……俺これでも結構頑張って働いてるんだけど?」
実際シルヴァはとんでもないことをこなしているのだ。
四人個別に、第二十七階層に耐えうる環境結界をまとわせる。
これだけでも、可能な魔導士は相当、数が限られる。
加えて前衛の二人にはそれぞれの武器に対応した力を付与し、煉獄蜥蜴の攻撃から身体を守れるだけの結界を張り、さらに強力な尻尾の攻撃や岩をも溶かす炎の息を、その時その時にピンポイントで遮る魔法まで施している。
魔物討伐に長けた熟練の高位魔導士が、数人がかりで成せるかどうかという仕事を、呪文の詠唱も発動の詞すらも発する素振りなく、あっさりとやってのけているのである。
が。
そう、その「あっさり」がよくないのだ。
死闘を繰り広げる仲間たちを、一歩も動くことなく、ただのんきにながめているようにしか見えないのだから。
なのでうっかりと、アリエッタのご無体なかんしゃくの標的になったりもする。
「頑張ってるかどうか判断するのはリーダーなの!」
「まじかよ、それブラック職場じゃん」
「つべこべ言ってないで働きなさい!
お給料ゼロにするわよ!」
「げ」
顔をしかめた。
「そいつは、困る」
シルヴァがはじめて、短く詞を唇にのせた。
『氷結』
瞬間、世界が凍り付いた。
赤黒く溶けた地面も岩肌も、燃えさかり蠢いていた煉獄蜥蜴の群れも、白い彫像に姿を変える。
「な…………?」
時間すら氷に閉じ込められたかのような刹那。
シルヴァが、にっ、と笑った。
手を高く掲げ、ぱちりと指を鳴らす。
パキン。
と、破壊音がして、煉獄蜥蜴であった白の彫像は、きらきら光る無数の氷片となり舞い落ちた。
イシュアは呆然として立ち尽くす。
踵を返し歩み寄ってくるギヨームは、やや呆れ顔だ。軽く溜息をつく。
「……相変わらず無茶苦茶な力ですな」
長い付き合いである。
その表情に含まれた成分もよく判っているシルヴァは、片眉を下げて笑ってみせた。
「邪魔して悪かった。そっちこそ余裕だったのにな」
くすりと笑い返すギヨームである。
二人は片手を挙げて、ぱん、とタッチを交わした。




