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最強魔導士、働く 4

 そのシルヴァは腰に手を当てて、高見の見物のようにみえる。


 肩の上のセトラは、先程からご機嫌だ。

 淡いベージュの外皮をほんのりピンク色に染め、細い目をさらに細めて、ぷくぷくと楽しそうな声でずっと鳴いている。


 シルヴァが頭を撫でてやると、さらにご満悦な顔で「ぷくにゅ」と甘えてきた。


「あ、こいつさ、熱いところのほうが好きなんだよ。

 拾ってきた場所がもっと熱かったからな。

 まあ地上でも寒いってわけじゃなさそうなんだが」

「……そう……なのか……」


 地面の岩が溶けて流れていくような場所なのだ。

 ここより熱い所など、イシュアには想像もつかなかった。


 炎蜥蜴の群れが、みるみるうちに(パーティー)に肉薄した。


 ギヨームが群れの中に飛び込むみ、鮮やかな一撃を食らわす。

 体勢を崩したところに、すかさずアリエッタの大斧が襲いかかる。


 炎蜥蜴は一体、また一体と倒されていった。


 しかし数が多い。


 しかもこの強さと、まき散らす炎の息の威力は尋常ではない。

 まるで竜種の群れを相手にしているようだ。


 アリエッタの息が上がっている。

 それを見て取ったシルヴァが、手を掲げてアリエッタの体力を回復させる。

 と同時にアリエッタが大きく飛びずさった。

 アリエッタのいた場所に、蜥蜴の吐き出した炎の息が直撃する。

 息を浴びた岩肌がじゅっと溶けて大きな穴が空いた。


「これ……炎蜥蜴じゃないんじゃない?」


 おかしい。

 炎蜥蜴と戦うのは初めてではなかったが、以前相対したときはもっと少ない手数で倒せたし、ここまで強力な炎の息をまき散らすこともなかった。


「上位種の煉獄蜥蜴かもしれませんな。

 だとしたら少々面倒です」


 ギヨームの表情にも余裕がなくなってきている。


 噛みつこうとする顎や炎の息に加えて、思わぬ方向から飛んでくる尻尾も厄介だった。

 そのたびシルヴァが強力な防御を施しているものの、直撃を喰らえば弾き飛ばされる。


 攻撃を加えながら避け続けるうち、アリエッタの膝がわずかに落ちた。

 すかさずギヨームがアリエッタの手を引き、後方へ押しやった。


「殿下、頼みます」

「ちょっと!」


 そのまま一人で煉獄蜥蜴の群れに飛び込んでいく。


 目で追うことも不可能な速さで剣を振るう。

 さらに威力を増した剣の軌跡は、青白い炎となって魔物を分断していく。


 イシュアは、託されたアリエッタをそのまま背後に回した。


 想像を超える戦いに、頭は空っぽだ。

 頬は引きつり、両手は見て判るほどに震えていた。


 だが、そんな腕でも剣を構え、前を向く。


「王子様!」


 かばわれたアリエッタは声を上げたが、その後ろのシルヴァはといえば、ひゅうと口笛を吹きそうになった。


 いやはや、十二分に『勇者の試練』に応えているではないか。

 思わず笑みがこぼれる。


 そんな様子に、斧の柄で身体を支えながらぜえぜえと呼吸していたアリエッタが切れた。


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