リーダー、無双します 7
「そういやこの山、持って帰らなくていいのか? そこそこのお宝だぞ?」
大鎧百足の外皮は硬く衝撃にも強いため(さくさくとぶつ切りにされたのは、ひとえに相手が悪すぎたためだ)、冒険者たちの防具の素材として人気がある。
特徴的な、五本の角のような突起を持つ頭部の外殻、通称『兜』は特に高値で取引されていた。
「しかしこの量ですと、一度に処理するのは難しいかと」
「欲しかったらあとから取りにこればいいでしょ!
早く視界にコレがないところに行かせてえええっっっ!」
「……ということらしく」
「じゃこれだけでも」
と、シルヴァは、最後にイシュアが倒した大鎧百足に駆け寄った。
魔力を通したナイフを体節の隙間に差し込み、頭部の外殻を器用に取り外していく。
外し終わった頭部は大人の半身ほどの大きさだ。シルヴァは腰に下げた鞄から、魔方陣の刻まれた羊皮紙を一枚取り出した。
傍らの頭部を無造作に指さし、その指をついと羊皮紙の魔方陣にもっていく。
すると頭部の外殻が、魔方陣の中にするりと入っていった。
そのまま羊皮紙は、見えない魔法の手によって掌の上でくるくると巻き取られ、麻紐で結ばれる。
ポケットに仕舞えるほどの大きさになった『戦利品』を、イシュアに向けて放り投げた。
「王子、持ってけ。
王子が仕留めたモンだ。
売れば帰りの路銀の足しくらいにはなるぞ」
「いや、あれは……」
「エンリョすんな、こんなにあるんだ。
なんならもう二つみっつ……」
「シルヴァ!」
アリエッタの怒号にシルヴァと、それからイシュアも首をすくめた。
そして一同はなんとか無事、門をくぐることができたのだった。




