リーダー、無双します 6
「よおっしゃあああああ!!!」
シルヴァの歓声が高い天井へこだました。
自分が何をしたのかわからず、イシュアは呆然と立ち尽くす。
「……………………あ……」
「王子様!!!」
アリエッタがとびきりの笑顔で、イシュアに飛びついた。
「すごい! すごいわ王子様!
まさかあなたに助けてもらうなんて!
嬉しいわ! ありがとう!
本当にありがとう!!!」
「い、いや! あの! これは……!」
焦ってどもるイシュアに、ギヨームも目を細めて賛辞を送る。
「お見事でしたぞ殿下。
まさか一撃で大鎧百足を倒してしまわれるとは……いや素晴らしい」
「ち、違うのだ。あれは……」
イシュアはシルヴァの方を見遣る。
百足の攻撃を受け止めたときも、そして討ち取ったあの一撃も、自分の膂力や技倆だけでは到底有り得ない。
「……あなたが、魔法で『力』を『付与』してくれたのだな」
シルヴァは軽く息をついて首を振った。
「ちょっと足りねえ分を足してやっただけさ。
それに、王子が一歩踏み出したから、俺が補助出来たんだ。
ま、チームプレイって奴だな」
ぐいと力強く親指を立てると、全開の笑顔を向ける。
ギヨームも、そしてアリエッタも、皆の笑顔がイシュアを囲む。
イシュアは泣きそうになるのを必死にこらえた。
今することは泣くことじゃない、笑うことだ。
くしゃくしゃにゆがめた顔は、それでも間違いなく最高の笑顔だった。
「よおっし、『黄金の鈴』プラス王子パーティー、完全勝利~ッ!」
坑道の高い天井に歓声が響き渡った。
「あ、シルヴァ。
あなたは後からお説教よ。
覚悟しておきなさい!」
「……イエッサー……」
「だからさ~、万に一つを当てなかったら最速超優秀な安全ルートなんだってば」
「当てたら超危険ルートじゃない!」
「つまり常時危険なルート、ということですな」
「ぷえぷえ」
「おいこらセトラまで!」
第十四階層の坑道に降り立った場所からほんの目と鼻の先、向かいの岩壁に転移門がある。
百足の残骸の山を先に超えたシルヴァは、岩壁に手をかざし、転移門の場所を確かめた。
「い~や~~~~ああああああ!
無理! 足の下の感覚がもう無理いいいいっっっっ!」
わずかな距離だが、死骸を踏んで歩かなければ坑道の反対側へは来られない。
きつく目をつぶってよろよろと進むアリエッタを、ギヨームとイシュアが両側から支えてやっている。
さすがのシルヴァも申し訳なさで眉をしかめた。
とはいえイレギュラー中のイレギュラーだったことは間違いない。
天才、常勝賭事師とて、たまの手違いはあるものだ。
切り替えて坑道を見渡す。




