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リーダー、無双します 5

 なぎ倒された百足の欠片が勢いよく飛んできては、防御結界に当たって弾け散る。そのたびにイシュアは首をすくめた。


「あの……加勢しなくてもよいのか……?」

「やめとけ、下手に近づいたら俺らまでぐしゃぐしゃの細切れだぞ」


 思わず肝がひゅんとなる。確かにあの嵐の中に身を投じる勇気は、イシュアにはなかった。


「それにしても……彼女はあの体格でよく軽々とあの大斧が扱えるな……」

 アリエッタは格別に華奢というわけではないが、上背は十四歳の少年イシュアとそれほど変わらない。

「ああ、アリエッタは大地の民の血が混じってるからな。人間族よりは剛健なんだ。

 なにより鍛錬を欠かさない。

 頼りになる戦士だよ」

「へえ……」


 イシュアは、今度は別の意味で目を見張った。


 やがて嵐が止む。


 うずたかく積み上がった百足たちの屍の山を背に、アリエッタがぜいぜいと肩で息をしていた。

 もっともその上がった息は、おもに戦いながら絶叫しまくった所以である。

 イシュアはようやく我に返り、アリエッタに駆け寄ろうとした。

「大丈夫か? アリエッタ」


 その時、視界の隅で何かが動いた。


 屍の山から、切り裂かれながらまだ生きていた百足が飛び上がり、背を向けたアリエッタに襲いかかる。


 とっさに、イシュアは百足とアリエッタの間へ身体を踊らせた。


 刹那。

「……へえ」

 シルヴァがその晴れた空色の目を見張る。


「やるじゃん、王子」


 イシュアは剣を両手で掲げ、振り下ろされる百足の顎肢を受け止めようとする。


 反応は素晴らしかった。

 何よりその勇気は賞賛に値する。

 命の危険も顧みず、自分の身の何倍もある巨大な魔物の攻撃に身を晒すことは、誰にでもできるものではない。


 だが惜しいことに、イシュアの身体も技も、未だ大鎧百足を相手にする域には達していない。

 このまま打ち下ろされた顎肢を受け止めれば、完全に力負けして、間違いなく叩き潰される。


 シルヴァはつい、と手を挙げ、イシュアの身体とその剣に『力』を『付与』した。


 ガキィン!と重い金属音が炸裂する。イシュアは歯をくいしばってその衝撃に耐えた。


「え? 王子様?」

 アリエッタが驚きの顔で振り返る。


 攻撃を跳ね返された百足は、その反動で大きく反り返った。

 胴ががら空きだ。


「行っちまえ! 王子!」


 その時、イシュアは、確かにその背を押された気がした。


 そのまま大きく踏み込む。腰に力を貯め剣を振りかぶる。


 剣を握る両手に、経験したことのない力が宿り練り込まれていく。

 刃に満ちた大いなる力が揺らめき、輝きに変わった。


「おおおおおおおおおおおお!!!」


 声を上げ、イシュアは横一線、剣を薙ぐ。


 一刀のもとに二分された百足は、ずるりとその身を分かつと、地響きを立てて床に崩れ落ちた。


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