その野望、救援(レスキュー)するぜ! 5
「悔しいに決まってるだろう!」
驚くほどの大声で、イシュアは叫んだ。
「見返してやりたいに決まってる!
勝手に持ち上げてあっさりぼくを見捨てた家の奴らも、ぼくなんかに迷宮は無理だってあざ笑う奴らも!」
ずっと我慢してきた。我慢しているのだと思うことさえも、いけないことだと禁じてきた。
でも本当は、いつだって嫌だと叫びたかった。
自分の人生を、生きたかった。
「次代の王になんて興味ない!
ルーファス兄だろうが誰だろうが、やりたい奴がやればいいんだ!」
「王にはなりたくねえ、試練は受けねえ。
じゃ、迷宮からは尻尾を巻いて逃げ出すってことでOK?
あのクソ生意気な家臣どもには、笑われたまんまで無問題。
それでいいんだな?」
さらに油を注がれて、イシュアは完全にキレた。
「降りるさ!
どこまでだって降りてやる!
あの連中が今もたもたしてる第七階層も、目標の第十四階層もくそくらえだ!」
一度外れたたがはもうはめられない。
理性を吹き飛ばして無茶苦茶な望みを叫び続ける。
「第二十一階層に降りて!
炎蜥蜴を倒して!
でも神殿になんて絶対に供えてやるもんか!
馬鹿にした奴らに叩き付けてやる!
………………でもそれが出来ないからぼくは……」
涙で声がかすれる。
そのはじめての、心からの叫びを、シルヴァは待っていたのだ。
「よっし、よく言った!」
イシュアの両の肩を痛いほどの力で掴む。
晴れた空色の瞳が強い輝きを放ち、イシュアのなかの闇を一閃で薙ぎ払う。
「その野望、救援するぜ!
炎蜥蜴の核石、奴らに叩き付けてやろうじゃねえか」
「……え? あの……」
イシュアは濡れた目を見開く。
ギヨームはやれやれと肩をすくめた。
付き合いの長い相手だ。シルヴァがこれを狙っていたのだろうと予測はついたが、あまりに狙い通りに事が進んでしまうのも困ったものだ。
勢いに乗ったシルヴァは手がつけられない。また付き合ってひと仕事するしかないようだ。髭の口元に、愉快そうな微笑が浮かんだ。
アリエッタが慌てて叫ぶ。
「ちょっとシルヴァ! あなたまた勝手に……!
うちが契約したのは、迷宮で遭難した依頼者の救援よ!」
「なんだよ、先代も言ってたんだろ。
依頼者の野望を救援するのが、俺たち『黄金の鈴』の役割なんだって、さ」
「それは……!」
「こんな面白そうな殺し文句で隊に勧誘しておいて、いまさらあれはナシだったとか言うなよ? リーダー」
仕掛けたいたずらをまんまと成功させたシルヴァは、にかっと歯を見せ無邪気に笑う。
その笑顔を受け取ったものも、思わず一緒に夢を見たくなってしまうのだ。
「……あ~もう!」
アリエッタは地団駄を踏んで、くいと顔を上げると、高らかに宣言した。
「判ったわよ!
救援隊『黄金の鈴』、出動!
目標は第二十一階層の主、炎蜥蜴の核石よ!」




