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その野望、救援(レスキュー)するぜ! 4

「そうよ、気に食わないけど、王位なんてお兄さんにあげちゃえばいいじゃない」

「そうもいかぬ、試練への招聘は神聖なものだ。逃げれば家の恥ともなる」

「家って……そんな薄情な実家に義理立てしなくたって……!」


 自分の代わりに怒ってくれるアリエッタに、イシュアは微笑んだ。


「仕方ない、わたしは、そういう運命なのだ」

「……っ」


 アリエッタが勢い込んで口を開こうとした瞬間、シルヴァが咽喉の奥で短く笑った。


「仕方ない、ねえ」


 それまでの飄々とした口調が一転、わずかに冷ややかなものに変わる。


「で、どうなんだ王子」


 イシュアが、虚ろなままの目をシルヴァに向ける。


「…………どうなんだ、とは……?」

「王子は本当はどうしたい? それを聞いてる」

「どうしたいと言われても……。

 わたしは試練を受けるしかない。

 そう決まっているのだ」


「決まっている、ね」


 片眉を上げてにやりと笑う。


「もう決められたことだから、王子は馬鹿正直に従うんだな?

 イカサマだろうが無茶振りだろうが、家臣に便利に扱われようが、言われたとおりにグラータくんだりまでほいほいやってきて、あっさり遭難して指さして笑われて。

 それでもまだ試練を受けるしかないんだ。へえ、そりゃ大変。ごくろうさん」

「ちょっと……!」

 あまりの物言いにアリエッタが立ち上がる、と、その袖をギヨームがそっと引いた。

 黙って首を振ってみせる。


 シルヴァは、あからさまにイシュアを煽っている。


 訳もなく人を傷つけるような言葉を吐く人間では、決してない。

 ならばここは任せるべきだ。

 アリエッタにそう目で訴えた。


 イシュアは顔を歪め、わずかに震えながら、それでもうつむいたままでいる。


「ふうん、黙って大人しく下向いてるんだ?

 まあ仕方ないもんな、仕方ない仕方ない」

「……………………くっ…………!」


 きつくかみしめた奥歯がぎしりと鳴る。


 口を開いたらダメだ。

 仕方ないと呪文をとなえ、ずっと諦めて蓋をしてきたものが溢れだしてしまったら、もう取り返しが付かなくなる。


 シルヴァは肩をすくめて首を振ると、イシュアの横に回り込んだ。


 顔をのぞき込んで耳元で、くぐもった暗い笑い声を立ててみせる。


「人生なにもかも誰かの都合。

 自分の命すら自分の好きに使えねえ」


 イシュアが自分を閉じ込めるため自分に施した『封印』に、シルヴァは容赦のない一撃を放つ。


「それで悔しくないのかよ。

 なにかやりたいことがあるんじゃねえか? 王子」


 こらえていた感情が、一気に爆発した。


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