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さらにステップアップしたい人のためにブラッシュアップ

 1話では、テンプレートを使って『桃太郎』に下記のレビューを書いた。



「おばあさんが川で拾った桃から男の子が誕生する。桃太郎と名付けられた彼はすくすくと育っていった。大きくなった桃太郎は村を襲い略奪を働く悪い鬼の存在を知る。


 鬼を退治するため、桃太郎は敵の本拠地である鬼ヶ島へ向かった。その道中で犬、サル、キジと出会う。きび団子をもらった三匹は桃太郎の仲間となった。


 鬼ヶ島に辿り着いた一行は敵と戦い勝利。奪われた財宝を取り戻し、郷里へと帰還する。


 不思議な出自の英雄が、悪い鬼を退治する勧善懲悪の話。この世に悪が栄えた試しなし!」



 このまま投稿してしまってもいいが、2話ではもう少し工夫を凝らしてより良いレビューを作る話をしていく。


 まず「①作品の内容紹介」の部分だが、もっとシャープな形にすることが可能だ。その際は、以下のことを意識しよう。



 Ⅰ.固有名詞はなるべくカット

 Ⅱ.いらない描写を削る

 Ⅲ.「その作品のウリは何か?」を考える



 ****



 Ⅰ.固有名詞はなるべくカット


 皆様は「マジカルナンバー」という言葉をご存知だろうか。人が一度に記憶できる情報量……つまり短い期間に覚えられる新しい単語のことで、その数は「4±1」だそうである。


 これをレビューに当てはめると、「本文で出してもいい新規の固有名詞(=その作品内でしか使われていない言葉)は最高でも五つ」となる。それ以上は情報爆撃となって覚えられないのだ。


 だからと言って、「そうか! 五つまでならいいんだな!」と素直に受け取っていただいては困る。最高でも400文字しかないレビュー。そんな中にいくつもの耳慣れないワードが出てきたら、読み手は混乱してしまう。


 なので結論から言えば、「オリジナルの固有名詞は一つか二つくらいにしておく」のがオススメだ。


 となると、出せるのは主人公の名前くらいだ。これもフルネームで書く必要はない。桃太郎に名字があったとしても、切り捨ててしまって構わないのだ。


 このように、レビューを読んでくれる人の脳の容量を圧迫しないように気を配ろう。何なら新規の固有名詞はゼロだって問題ないくらいだ。


 先ほどの『桃太郎』のレビューも主役の名前は残しておくとして、「鬼ヶ島」という単語は削除しても問題ない。


 するとこうなる。


「鬼を退治するため、桃太郎は敵の本拠地である鬼ヶ島へ向かった」

 →「鬼を退治するため、桃太郎は敵の本拠地へ向かった」


「鬼ヶ島に辿り着いた一行は敵と戦い勝利」

 →「鬼の根城に辿り着いた一行は敵と戦い勝利」



 ****



 Ⅱ.いらない描写を削る


 これも基本の考え方は固有名詞のカットと同じ。なくても意味が通じるところは消そう。大分すっきりとした印象になるはずだ。


 『桃太郎』のレビューで削れそうな箇所は以下の通り。


「おばあさんが川で拾った桃から男の子が誕生する。桃太郎と名付けられた彼はすくすくと育っていった。大きくなった桃太郎は村を襲い略奪を働く悪い鬼の存在を知る」

 →「桃から生まれ桃太郎と名付けられた少年は、村を襲い略奪を働く悪い鬼の存在を知る」


 何を残し何を削るかは悩みどころだが、「その作品の魅力と関係のある部分か?」を基準に考えていくといい。


 先ほどの改稿でも、「桃太郎という少年」ではなく「桃から生まれ桃太郎と名付けられた少年」としたのは、「果物から人間が生まれるという不思議な出来事」がこの作品の面白さの一部であると解釈したからだ。



 ****



 Ⅲ.「その作品のウリは何か?」を考える


 もしあなたがレビューを書きたいと思っている作品に、ウリと言えそうなほど面白みのある要素がたくさんあったとしても、プッシュするのは一つに絞ろう。


 レビューには文字数の制限がある。あれもこれもと欲張るとまとまりに欠け、結局何が言いたいのか分からなくなってしまう。初心者は手堅く攻めるのが無難である。


 さて、『桃太郎』のレビューだ。ここでは作品のウリを「桃太郎と仲間たちの交流」とする。


 まず「①作品の内容紹介」の部分。ここに推したい要素を盛り込んでいこう。今回は「桃太郎と仲間たちの交流」なので、原作から印象的なセリフを引っ張ってきたり、登場するキャラクターたちの属性を書き加えたりする。


 ……と言っても、原作の桃太郎には各キャラの詳しい描写がないため、以下は私の妄想となるがご承知置きいただきたい。


「その道中で犬、サル、キジと出会う。きび団子をもらった三匹は桃太郎の仲間となった」

 →「その道中で出会ったのは、ぶりっ子の犬、ツンデレなサル、忠誠心が厚いキジだった。


「鬼退治? ふええぇ……無理だよぉ」

「べ、別に着いて行きたくなんかないんだから!」

「どこまでもお供いたします!」


 個性豊かな三匹を桃太郎はきび団子で買収し、仲間とする」


 さらに改稿。「ウリは仲間との交流」と決めたのなら、「起承転結」のいわゆる「結」の部分はいらなかったりする。


「鬼の根城に辿り着いた一行は敵と戦い勝利。奪われた財宝を取り戻し、郷里へと帰還する」

 →「愉快なメンバーを引き連れ、鬼の根城に乗り込んで行くのだった」


 「①作品の内容紹介」は物語の結末にはっきりと言及せず、このように締めくくってしまってもいいのだ。


 次は、「②その作品を一文でまとめると?」と「③最後に一言」の変更である。このように、「ウリは何か?」は、レビュー全体に影響を及ぼす問いかけなのである。


「不思議な出自の英雄が、悪い鬼を退治する勧善懲悪の話」

 →「英雄が仲間と協力して悪に立ち向かう話」


「この世に悪が栄えた試しなし!」

 →「桃太郎パーティのチームワークに舌を巻くこと間違いなし!」



 ****



 さあ、まとめてみよう。



「桃から生まれ桃太郎と名付けられた少年は、村を襲い略奪を働く悪い鬼の存在を知る。


 鬼を退治するため、桃太郎は敵の本拠地へ向かった。その道中で出会ったのは、ぶりっ子の犬、ツンデレなサル、忠誠心が厚いキジだった。


「鬼退治? ふええぇ……無理だよぉ」

「べ、別に着いて行きたくなんかないんだから!」

「どこまでもお供いたします!」


 個性豊かな三匹を桃太郎はきび団子で買収し、仲間とする。愉快なメンバーを引き連れ、敵の根城に乗り込んで行くのだった。


 英雄が仲間と協力して悪に立ち向かう話。桃太郎パーティのチームワークに舌を巻くこと間違いなし!」



 最初に書いたレビューと比べると、印象がかなり異なるはずだ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  いきなり変化球を投げるのではなく。  直球の軌道を見せてから、つぎに変化球の軌道を見せてくれるような。  いきなり、自分なりの描きかたをするのではなく、テンプレを下敷きにすれば、だいじ…
[一言] 一話目の内容だと レビュー文というより 魅力的なあらすじの書き方 のように見えていましたが 二話目になって、 ぐっとレビュー文らしさがまして おおっ、となりました。 レビュー文の書き方を学…
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