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家族として寄り添い合いながら生きてきた李栄と白釉。生まれた時から神木の下で育った彼女達を『神からの贈り物』と喜び育てたのは少数民族に育てられた特殊な生まれを持つ。その事を知らずに12歳と10歳と年齢を重ねた。隠された真実に気づくのは彼女達が本当の運命の渦の中へと堕ちていく未来にあるのだ。
春宋は李栄から視線を移し白釉を知る。苦しそうに脂汗を額に靡かせる白釉の姿を見て、我に返った。
「私はこの子を抱えていくから君は着いてきなさい」
「!! 助けてくれるの?」
見ず知らずの男について行こうとする李栄からは警戒心が全く感じられない。その純粋な姿に幻影を見ている春宋がいた。ある女と重ねてしまうとズキリと胸が疼く。その感覚を見て見ぬふりをしながら、白釉を助ける事だけに意識を向けた。
「大丈夫だよ、私の名前は李春宋。もう少し歩けば四合院がある。そこに住んでいる者だよ」
「四合院?」
不安そうに首を傾げる李栄の表情を包み込むようにふんわりと微笑む。まだ子供の彼女に説明するのは難しいと考え、あえて他の言葉で隠した。
「大丈夫。悪くはしない」
そう言うと、白釉を抱え上から自分の上着を被せた。本来ならば急いだ方がいいだろうが春宋は李栄がついて来れるとは考えてなかったのだ。だからこそ速足で進む。
「急ごう。熱があるようだ」
ついていく事が精一杯の李栄を気遣い時折振り向き歩く速さを落としていく。
「お兄さん、私ちゃんとついていくから急いで。白釉が苦しそう」
そう叫ぶと春宋は風のように進んで行く。コクリと頷いた事を確認するとホッとした顔の李栄。
前に進む二人に追いつく事は難しく息をあげる李栄。
一本道の向こうには彼女の知らない世界がある。
「足手まといにはなりたくない、白釉すぐに追いつくから」
自分に言い聞かせるように呟くと乱れた息を整え、限りなく走りだした。