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 二つの鐘が鳴り響きながら混ざり合うのが彼女達の運命とも言えよう。私は二人の生末を何度も見てきた。憎悪に塗れながら愛する事を失った二つの魂は双子の姉妹李栄(りえい)白釉(はくゆう)の体へと吸い込まれて再び同じ運命を繰り返そうとしている。

 「白釉(はくゆう)どうしたの? 顔色が悪いわ」

 白釉(はくゆう)の中に浮き上がっていたのはざわざわとした感情だった。先ほどまで毬で遊んでいたのだが、急に様子がおかしくなった。李栄(りえい)には何の異変もない。まるで対照的な二人の様子を見つめながら、笑う事しか出来なかった。

 『ははは。私とした事が』

 笑っているはずなのに泣いている自分に気付く事などない。悲しいのか嬉しいのか分からないのだ。何の縁もない子供の体を器にしては生き返るそれが彼女達の形だったはずなのに、影響を受けていない李栄(りえい)を見て混乱している。

 『この子なら私の願い(・・)を叶えてくれるかもしれぬ……』

 空から見下ろす景色はどことなく儚げで美しい。陰と陽に分かれた存在になろうとしている二人の少女の姿を見ながら期待している私がいるのだから困ったものだ。

 「白釉(はくゆう)!! 白釉(はくゆう)

 そんな私に見られている事に気付く事もなく地面を伝って流れてくる声が天へと届く。それはまるで産声のようで新鮮に感じられた。


 私は何者でもない、この物語を見守る存在として語るだけの存在──


 眩暈に耐えられなくなった白釉(はくゆう)はぽたりと座り込み、胸を庇う。うう……と小さく呻くとぱたりと意識を手放した。何が起こっているのか分からない姉の李栄(りえい)は大きな声で『誰か、誰か』と叫んでいる。震える声をきゅっと噛みしめ、助けを求めているのだ。自らが動けばよいのだろうが、妹を一人置き去りにするのが心配なのだろう。

 「どうかしたのかい?」

 誰もいなかったはずなのに李栄(りえい)の声に導かれたように現れた一人の男が声をかけた。男は李栄(りえい)の顔を覗き込むように優しく微笑む。涙を溜めていても凛としている雰囲気を持つ李栄(りえい)に心を吸い寄せられたようだった。そんな男の様子に気付く余裕のない李栄(りえい)

 「お兄さん、助けて。白釉(はくゆう)……妹が」


 それが李栄(りえい)春宋(しゅんそう)の出会いだった。

 

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