貧乏伯爵令嬢は推し活に精を出していたのです 2
***
気がついた時には、メルシアはメルセンヌ伯爵家の自分の部屋にいた。
血だらけになっていたであろう服は、着せ替えられ、妙にさっぱりしている。
ガバリと起き上がると、父と母と弟に抱きつかれた。
「あの、私……。っ、というよりあの騎士様は!」
「ランティス殿が、メルシアを助けてくださった騎士様は、無事だと言っていた」
「ランティス様?」
たしか、倒れた騎士はベルトルトと呼ばれていた。ということは、ランティスは、後から来たオリーブイエローの瞳の騎士に違いない。
「ランティス殿は、フェイアード侯爵家の長男だ」
「侯爵家?」
ずいぶんと、雲の上のお方だった。
(たしか、マチルダが素晴らしく活躍して見目麗しい騎士様がいると、盛り上がっていたわ。名前は、そう。ランティス様と)
思わず、鼻を触る。鼻血なんて見られて、恥ずかしすぎて、もう面と向かって会えそうにない。母が洗ってくれたらしいハンカチは、きれいに汚れが取れている。
父とランティスの父であるフェイアード侯爵は、学友だったという。
「はあ。素敵な人だった……」
ようやく落ち着いたメルシアは、すでに外が暗くなっていることに驚きつつ、美しい月を眺める。
黄色く輝く月の色は、どこかあの瞳を思い出させた。
その日から、メルシアは、ランティスを遠目に見ては、幸せに浸るようになった。
もし、次があるならもっと役に立ちたいと、光魔法の訓練にも力を入れた。
仕事で疲れた日も、ランティスの噂話を聞くだけで元気になれた。
何もない日も、毎日楽しく過ごすことができて、メルシアは幸せだった。
あいかわらず、光魔法はそれなりだったけれど、魔力量は上がり、治癒院でのお給料も少し増えた。
「うふふっ。推しっていうらしいの」
治癒院で、いつも話を聞いてくれるマチルダに、幸せいっぱいの笑顔でメルシアは、いつも噂で聞いたランティスの活躍を語る。
治癒院が休みの日には、公開訓練を見るため騎士団の訓練所に通った。
遠くから見るだけで、少しずつランティスのことを知るだけで、メルシアは本当に幸せだった。
そう、あの想定外の婚約の申し込みが来るまで、メルシアは、幸せいっぱい、ランティスの推し活を満喫していたのだ。
推し活いいですよね!
それから、いつも誤字報告ありがとうございます。
最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。