推し活は晴天とともに
推し活が書きたくなったので……。
是非ご覧ください(*^_^*)
青い空、白い雲。メルシアは、白いワンピースを着て、騎士団の公開訓練を訪れていた。
ランティスの姿を遠くに見つけると、黄色い声援を送る。
こちらを振り返ったランティスは、まるでメルシアの声が聞こえたかのように微笑みを浮かべた。
周囲から歓声が上がる。
「――――さすが、ランティス様。周囲の視線が釘付けです」
ランティスの視線に関しては、もちろんメルシアだけに向けられていることに、本人は気がつかない。
時々、ランティスがラティみたいになってしまったり、思わぬところで狼姿になってしまうことがあるにしても、今日もメルシアの周囲は平和だった。
「ランティス様……今日もかっこいいです。こうして遠くで見守っているだけで、隣の国の人にまでかっこよさを布教してわかり合いたいほど幸せ……」
「あなたの旦那だわ」
気がつくと隣には、上級魔術師アイリスがいた。
その瞳は、やはり紫色なのだが、日差しの下にいる彼女の瞳は、もう相手に不安を与えたりしない。
「え?」
「――――あなたの旦那だわ。あの人」
推しとして眺めているランティスは、自宅にいてもふもふだったり、甘えてきたりしてくるランティスとは、別人みたいにかっこいい。
そのかっこよさは、ここにいる婦女子全員と分かち合いたいのだ。
「…………騎士のランティス様は、みんなのものですよ?」
「難しいこと言うのねぇ……。私には理解しかねるけど、まあ、メルメルが幸せそうだからそれでいいのね、きっと」
少しだけ、ランティスがかわいそうに思えてくるアイリス。
この二人は、結婚したにせよ、きちんと距離を縮めることができているのか、心配になってしまう。
ランティスから、先日の精神が狼みたいになってしまった件を相談されたアイリスだが、メルシアがこんな調子で二人の距離が近づききれていないのが原因でないのかと思える。
だが、メルシアだけが悪いわけではあるまい。
普段の冷酷とも言える騎士ランティスが嘘のように、メルシアを前にしたランティスは意気地がないとアイリスは密かに思っている。
「本人達には、言えないわよねぇ。……まあ、見ていて楽しいし?」
そう、これが推し活というものだとすれば、アイリスの推しは現在フェイアード夫妻なのだろう。
メルシアは、すでに打ち合いの訓練を始めたランティスに視線が釘付けのようだ。
家で見ればいいのに、と思えなくもないが……。
しばらく、真剣なその横顔を見ていたアイリス。
すると、急に思い出したかのようにメルシアが、アイリスの方に顔を向けた。
「そうそう、アイリスさん! 今日は、マドレーヌを焼いてきたんです」
メルシアが抱えていたかわいらしいかごには、焼き菓子がたくさん詰め込まれていた。
かわいらしく、しかも優しいメルシアのお菓子は、味までよいので騎士団で争奪戦が起こるほど人気だ。
ランティスが、ほかの人間に渡したがらないのだが、家でも食べられるはずだと、周囲が一致団結して立ち塞がっている。
「一つ、いただいていいかしら?」
「はい! アイリスさんに食べていただけると、うれしいです」
「いい子よね……。フェイアード卿にはもったいないお嫁さんだわ」
「旦那様としても、ランティス様は素敵なお方ですよ? 私にはもったいないくらい」
「そうねぇ。相思相愛だったわね、あなたたち。はい、ごちそうさまでした」
アイリスが去って行く。なぜかランティスが、氷点下の視線でこちらを見ている気がするが、メルシアは気のせいだろうと片付けた。
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