光魔法と夜の住人 3
(こ、この二人のご関係はいったい……?)
固唾を飲んで見守っているメルシア。
その様子に気がついたらしいランティスが、メルシアの腰に手を回し、そっと自分に引き寄せる。
「行こうか、メルシア」
「ランティス様?」
「どちらにせよ、時間切れだ。執務室に戻る」
「あっ……」
ランティスが、姿を変えてしまうまで、それほど時間がない。
「マーシス殿、報告があるのだろう? 申し訳ないが、私用で離れる。……アイリス、あとは頼んでいいか」
「任せられたわ」
メルシアの手を引くランティス手は、すでに熱を帯びている。
そのまま、執務室に入るとランティスは、鍵をかけて仮眠室へとメルシアを誘った。
仮眠室の扉が閉められる。
自然と魔道ランプにオレンジ色の光が灯った。
促されるままに、椅子のない部屋の簡素なベッドにメルシアは腰掛けた。
その隣にランティスが、腰を下ろす。
「あの。どうしてこの部屋に」
「この部屋は、俺の私室と同じで、魔力が外に漏れない。だから、潜入捜査などで狼に姿を変える時は、いつもこの場所だ」
「そうなのですか」
(たしかに……。ベルトルト様やアイリスさんは、知っていたみたいだけれど、ランティス様が狼に姿を変えることは、秘匿されているのだわ)
部屋の造りや備品は、他の騎士たちが使う仮眠室とおそらく大差ない。執務室や応接室は、対外的に豪華な作りにしているのだろう。
(むだに華美なことを好まない、そして他の騎士たちと同じ生活を好むなんて、ランティス様らしい……)
さすが推し、と思いかけて、推しのプライベートスペースををここまで見ることなんてないだろうことに気がついたメルシア。途端に頬に熱が集まる。
そして、目の前のランティスが、メルシアを見て微笑んでいることに、改めて気がつき時計を見る。
「……あれ? もう、30分以上経ちましたよ? お身体大丈夫ですか?」
「……平気だ」
ランティスが、メルシアに笑いかける。
「あの、もしかして狼になるまでの時間が伸びる理由」
「……少しだけ、わかったかもしれない。ところで、こんな部屋でラティになると、何をしでかすかわからないから」
「……え?」
「時間はまだありそうだが、先に変わっておく……」
「へぁ?!」
よくよく考えれば、仮眠室とはいえ、寝室に二人きり。無邪気なラティと一緒というのは、人間に戻った時に色々よろしくない気もする。
「ワフッ」
「ランティス様」
「ワフッ……」
しっぽを振るでもなく、メルシアに押し付けられた額。少し残念に思うのは、メルシアだけなのだろうか。
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