表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/73

箱推しの騎士団 6


 ***


 しばらく、ラティと戯れていたメルシアは、ふと我に返る。

 口の周りもベトベトだ。


(白粉だけは、頑なに拒否して正解だったわ)


 侍女たちは残念そうだったが、化粧は最小限にしてもらっている。


(あれ? 顔をなめられる前提)


 つまり、そうなるのが当たり前だと、どこかで思っていたことにメルシアは赤面する。


「あの、ランティス様?」


 いつのまにか、目の前に現れた美貌の騎士は、少しだけいじけてしまったようにも見える素顔を、すぐに無表情で取り繕い、黙ってメルシアの顔をハンカチで拭く。


「本当に、無防備だ」

「えっと」


 けれど、それをしてきたのは、ランティスだと抗議しかけた口をつぐむメルシア。


「……あの、ランティス様とラティは、同じなのですよね?」

「……え?」


 記憶が共有されている。

 そして、最近はその行動も重なり合ってきた。

 けれど、その質問にランティスの顔が密やかに歪められる。


「……ずっと、俺ではないと思っていた」

「ランティス様」

「認められなくて、人ではないのだと思い知らされるようで」


 そうだとすれば、メルシアがラティにしてきた行動は、ランティスを傷つけてきたのではないだろうか。


「あのっ」


 だが、軽く振られたランティスの首が、メルシアの謝罪を拒む。

 そして代わりに向けられたのは、複雑な心境を残したままの微笑みだった。


「……だが、メルシアの本音を聞いたあの日から、狼の姿も悪くないと、ほんの少し思うようになった」

「……え」


 メルシアを柔らかく抱きしめる両手。

 そこにはもう、戸惑いはない。


 そのまま、白銀の前髪がふれるほど耳元近くに口を寄せてランティスが、メルシアに告げる。


「今は、メルシアのそばで、沢山のしがらみを捨てて、ただ好きだと伝えられる時間が、好きだよ」

「っ、ランティス様」

「たぶん、メルシアが、俺と狼姿のラティを、同じだけ好きだと言ってくれるから。だから、俺は狼になることも受け入れられそうだ」


 言葉をかけられた耳元から、ゾワゾワと熱が全身を支配していく。

 ランティスとラティは、同じ人間なのに、ランティスにとっては違った。


「そ、それなら。私がラティに抱きつくのに」

「我ながら嫉妬していた。でも」

「でも……?」

「今は、素直にうれしいと思う気持ちを受け入れることにした。だから、今までみたいにしてくれて構わない」


 お許しがでて、嬉しい反面、メルシアの心中は複雑だ。


(えっと、ラティ相手だからできたことを、ご本人から改めてお許しいただくと、逆に)


 先ほど舐められた頬があまりに熱い。

 当たり前のように抱きついていた、腕も。


 真っ赤になってしまったメルシアを、少し楽しそうに見つめるランティス。


「その代わり、少しでいいから俺に翻弄されて?」

「あ、う……」


(されてます!)


 そんな言葉、もちろん今のメルシアが、口に出す余裕なんてとてもない。

 

最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです( ^ω^ )


いつも応援いただきありがとうございます。

いいね、とても励みになってます。

自分の好きなシーンにいいね沢山もらえると、うれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ