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箱推しの騎士団 5


 ***


 執務室は、隊長というだけでなく、フェイアード侯爵家の嫡男に相応しく設えてあるのだろう。豪華な造りだった。


「すごい、奥にも部屋があるのですね」

「……仮眠室だ」

「そうなのですか? なるほど、お忙しい騎士様は、帰れない日だってありますよね」


 どこかウキウキと楽しそうなメルシア。

 そんなメルシアを見つめるランティスも、表情を和らげた。


「でも、私なんかが入ってよかったのですか?」

「許可を取っておいた。問題ない」


 当たり前のように告げられた言葉。

 メルシアは、ランティスを見つめ返す。


「えっと、あらかじめ許可を?」

「ああ。メルシアが、見学に来ると言っていたから、取り急ぎ。それに、仕事を再開したばかりだ。午後からは、有給を取っている」


 メルシアは、嬉しい反面、ランティスの気遣いにようやく気がついたことを反省した。


(いつもそう。知らない間に、ランティス様は、私のために色々としてくれている)


「あ、仕事中の俺を見に来たのに、余計なことをしただろうか」


 そして、いつもメルシアのことを優先させた上に、自分の行動に自信が持てないらしいランティス。

 メルシアは、真っ直ぐにランティスを見つめたまま、一歩近づく。


「うれしいです」


 ポスッとおでこをランティスの二の腕に軽くぶつけるメルシア。

 その顔は、先ほど箱推し騎士団に興奮していた時よりも、さらに赤い。


「うれしいです。ランティス様が、私のことを考えてしてくれたこと、全部」

「メルシア……」

「たまに気を使いすぎて、すれ違ってしまうことがありますけど、それでもその気持ちがうれしいんです」


 メルシアは、そのままランティスの腕に、自分の腕を絡めた。


「甘いものが好きだと言ったら、いつもミルクティーと美味しいお菓子を用意してくれていたことも。危険な目にあったら、いつだって助けられるよう見守っていてくれたことも。メルセンヌ伯爵領が災害に襲われた時、戦ってくれたことも」


 メルシアは、絡めた腕を引き寄せる。


「でも、ランティス様がしてくれたこと、私のためにしてくれていたなんて知らなかったから」

「……メルシア」

「もっとたくさん、私の気がつかないうちに、色々助けてくれていたんですよね、きっと」


 引き寄せた腕のせいで、少し斜めに傾いたランティスの体。

 メルシアは、めいっぱい背を伸ばして、ランティスの頬に口づけする。


 人命救助だと、言い訳できた前回と違い、今のメルシアには、これが精一杯だけれど。


「好きです。でも、これからは、私もランティス様のために、もっと色々したいです」


 ランティスは、頬を押さえたまま俯く。


「…………俺はただ、メルシアがそばにいてくれるだけで、十分だ」

「欲がなさすぎます。でも、私がしたいんです!」

「そう、それならば…………。はあ。もう時間か」


 あっという間に過ぎる時間。

 目の前には、真っ白な毛並みを輝かせたラティがいる。


「……もっとランティス様のことが、知りたいです」

「ワフ」

「かわい……。ランティス様が、世界で一番好きです」


 すり寄って来たラティに、メルシアは思いっきり抱きついた。

 ランティス様と、呼ばれてもラティはもう、怒ることもなく、ただ鼻先をすり寄せてくるだけだった。


最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです( ^ω^ )

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