狼騎士と婚約者 4
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ランティス・フェイアードと、メルシア・メルセンヌの婚約。
ようやく両家から公表された二人の婚約は、王都でもすでに話題になっている。
「……メルシア、すごい話題になっているわ」
「え? なにが」
光魔法が使えなくなってしまったメルシアは、孤児院の手伝いをさせてもらっている。
もう、資金面の心配はないのだが、仲良くなった子どもたちとは、離れ難い。
「あなたと、フェイアード卿の婚約」
「っ……。釣り合いが取れない、とか?」
「ん〜。そういうのじゃないの。魔獣の脅威が去った後、領民たちのため、全ての私財を投げ打ち、さらに王都の民のため、治癒院で働く令嬢。そして、メルセンヌ領を愛する人のため救った騎士の電撃婚約」
「わぁ」
(……すごい盛られている感が、あるけれど、大筋間違っていない?!)
おそらくメルシアのことは、ものすごく美化されていそうだ。ランティスに、並んで立つ自信すら持てないというのに。
「…………ねぇ、どう思う? ラティ」
「ワフッ、ワフッ!」
「え、また犬と会話するの? でも、賢いのね。肯定しているみたい……。と、いうよりこの犬から、メルシアの魔力。…………あ、あれ? メルシアからもこの犬の魔力?!」
「ワフッ?!」
「え、マチルダ?」
不思議そうに首を傾けたマチルダ。
その長い黒髪が、サラリと揺れる。
(そういえば、シンと上級魔道士アイリスさんも黒髪だけど、この三人以外、黒髪なんて見かけたことない)
「…………まぁ、いいわ。首を突っ込まない方が、長生きできるって話は、世の中に溢れているもの」
微笑みを浮かべてつぶやいたマチルダ。
表情と言葉が、どこかチグハグだ。
(そういえば、マチルダのこと、ほとんど知らない)
黒髪に生まれると、生まれつき魔力がものすごく強い。それくらいの認識しかないメルシア。
一方、今日は自分の意思でラティの姿になってついて来たランティスは、どこか思案げだ。
「ねっ、もっと遊んで!」
「今度は、僕だぞ!」
「かわいい!」
そんな、ランティスの上には、交互に子ども達が三人乗っている。特に怒る様子も嫌がる様子もなく、じっとしている。
鍛えた体は、狼になっても有効なのだろうか。
そんなことを考えながら、ランティスに一気に五人で乗ろうとした子ども達を、メルシアはそっと止めたのだった。
ほのぼの回( ^ω^ )
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