婚約破棄されましたけど、モフモフ愛でてもいいですか? 4
「ワフッ!」
白い毛並みが、今日もキラキラしていて、最高に幸せだ。そう、メルシアは今、幸せだ。
ラティのほうも、尻尾がぶんぶん揺れていて、嬉しそうだ。
「ラティ!」
思ったよりも元気そうで、メルシアはホッと息をつく。
そして、尻尾を振り続けるその姿が、あまりに可愛いから、メルシアは、感激のあまり太めの首にしがみついて、思わず深呼吸する。
「ううっ。かわいっ! かわいいよぅ。ラティは、お風呂、嫌いじゃないのかな? ……いい匂いがする」
「ワフゥ」
なんだか、自慢げなその姿に、メルシアの口元に、思わず笑みがこぼれる。
「あのね。ラティって呼んでいいんだって。いざ、ランティス様本人からお許しを得たら、まるで愛称で呼んでいいって言われたみたいで、ドキドキしちゃった」
「ワフッ!」
「それに、久々に会えたランティス様は、やっぱり……素敵だった」
ビクッと少しだけ、ラティが震えた。
「あのね。家の格も釣り合わないし、なんで私なんかを選んでくれたのかって思ってたんだ。そんなこと思ったら、何も話せなくなっちゃって」
首を傾げたラティが、神妙に聞いているように見えるのがおかしい。
「ふふっ。ランティス様は、お優しいよね……。約束も、守ってくれた」
ぐりぐりと頭を擦り付けてくるラティの頭をゴシゴシ撫でて、メルシアは微笑んだ。
婚約破棄された時には、こんなふうに穏やかに、この場所にいられるなんてこと、想像もしなかったのに。
「……はあ。好き」
「ワ…………ワフ?」
その言葉が、メルシアの口からひそやかに漏れ出した瞬間、なぜか、くったりと体を寄せてきたラティの様子に、首を傾げつつ、メルシアは、続ける。
「本当は、ずっと好きでしたなんて。迷惑だと思って言い出せなかったけど、どちらにしても婚約破棄になるなら、いっそ言えばよかった」
ラティが、あまりに神妙な様子で、ランティスと同じオリーブイエローの瞳で見つめてくるから、思わず本音を話してしまった。
でも、犬相手なのだ。誰にも告げ口なんて、されないだろう。
「ラティ、今日はありがとう。でも、やっぱりランティス様にこれ以上、迷惑……かけたくない。ランティス様の優しさに甘えるのは、これで、終わりにしようと思うんだ」
「クゥウン」
本当に、ラティは賢いな、とメルシアは、ふわふわの頭を撫でながら、ほんの少し不思議に思う。
しかし、メルシアがフェイアード侯爵家に訪れなくなったその日から、なぜか治療院には、ランティスと犬のラティが、交互に現れるようになったのだった。
次回からグイグイ行く予定です。(主に犬が)
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