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騎士のあなたを推したいです 2


「クゥン……」


 今日も、ラティが可愛い。


「うっ、今日もラティが、かわい………。全力で私をダメにしてくる」

「ワフ……」


 今日は、メルシアに飛び込んでくることのないラティ。

 なぜかいつもより大人しいことを不思議に思いながらも、メルシアはそっとラティのそばにしゃがみ込む。


「ラティ……」


 まぶしいものでも見るみたいに、ラティの緑を少し帯びた黄色い瞳が細められた。

 しっぽが揺れる。そっと擦り寄る頭を、メルシアは撫でた。


「ラティ……。とりあえず、離れていてくれる? そうね、まずは庭にいるから、部屋の窓からのぞいていてね?」

「キュウン!」

「――――ごめんね。とりあえず、私とランティス様が、どれくらい近づいてもいいものか、実験しないといけないから」

「クゥン……」


 全力で後ろ髪を引かれるほどの、哀愁を漂わせるラティに、胸を痛めながら、メルシアは庭の外へと出た。そこには、今日もお茶会の用意がされている。


 外に出ても、置いていかれたことを悲しむような「キュウン」という鳴き声が時々聞こえてきて、メルシアを苛む罪悪感が類を見ない。


(今すぐ駆け寄って抱きしめたい! でも、長期休暇といっても、いつまでも忙しいランティス様が騎士団を休み続けるわけにもいかないの。心を鬼にするのよメルシア!)


 早く推し活がしたいというわけではないのだ。

 もちろん、もう一度、推し活ができることに、心が躍ってしまっているのも、事実には違いないにしても。


 庭から3階にあるランティスの部屋の窓から、白い狼がこちらをのぞいている。

 風になびく青いカーテンと、一匹のモフモフ。

 最高に胸が高鳴る可愛らしさだ。


 そして、メルシアが瞬きをした刹那に、そこにいた狼の姿は消えて、美貌の騎士が現れる。


 その騎士は、窓辺に肘をついて、少し気だるげにこちらを眺めた。

 そして、メルシアと目線が合うと、口元を緩め軽く手を振る。


「――――ランティス様と目が合った! 私に手を振ってくれている!」


 天国とは、ここにあったのだろうか。メルシアの頬は、薔薇色に染まり、瞳は潤み、微笑みが口元に浮かぶ。その姿は、完全に夢見る乙女だ。


 先ほどまで、一緒にいたことも忘れ、すでに推し活を満喫しているメルシア。

 けれど、直後にランティスの姿は、窓辺から消えてしまう。


「あれ……? まだ、そんな時間は経っていないはず?」


 首をかしげるメルシアと、窓辺でしゃがみ込んでしまったランティス。


「――――あんな顔、離れている時に見せるなんて、反則だろう」

「ランティス様~?」


 可愛らしい声でメルシアがランティスを呼んでいる。


「今すぐ駆け寄って、抱きしめたいのに。……何の拷問だ?」


 この距離では、ランティスが狼姿に変わってしまうことはないらしい。

 30分後、その事実は判明した。


 しかし、もどかしいほど、じりじりと距離を詰めつつ、二人の実験はその後も続けられるのだった。

まだまだ、推し活満喫します( ^ω^ )


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[良い点] もどかしいほど、じりじりと距離を詰め(物理)
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