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二人の騎士 1



「あの頃、メルセンヌ領は、とても危なかったのに。どうして、わざわざ」

「……その場所に、メルシアがいると思ったら、居ても立っても居られなかった」

「……私は、元気でしたよ?」

「知っている。遠くから見ていたから」


 メルシアがいたのは、メルセンヌ領の中心地だ。激戦の地となった、北部に比べ安全だった。

 メルシアは、その頃から光魔法を本格的に使い始めた。

 傷ついた騎士や領民たちを、少しでも癒したくて。


 当時、光魔法を磨いたおかげで、それが毎日の糧になっている。


(人生って、わからない)


 そう、わからないのだ。


 こんな風に、ランティスとメルシアが、一緒にいられる、奇跡みたいな時間が訪れたように。


「……今は、騎士であることが俺の誇りだ。でも、初めは不純な動機だった。推しというものが、どういうものなのかは、未だわからないが、俺はきっと、理想の騎士ではない。……幻滅させただろうか」


 ブンブンと、メルシアは首を横に振った。

 幻滅なんて、するはずがない。


 あの時、メルシアは、魔獣の恐怖に怯えながらも、できる限りのことをして過ごしていたつもりだ。

 前線で戦う騎士たちの姿に、どれほど勇気づけられたかなんて、きっとランティスは知らない。


 そんな、メルシアの気持ちを知ってか知らずか、ランティスは、言葉を続ける。


「それに、苦しいことばかりでもなかった。仲間もできたしな。そうでなければ今もきっと、周囲との腹の探り合いばかりだっただろうから」


 当時、ランティスが、配属されたのは、十人に満たない小さな隊だった。

 だが、騎士団長の息子であり、侯爵家の人間であるランティスは、初めから隊長を任された。


 その時の副隊長が、ベルトルトだった。


 侯爵家で学んだ、お上品な人心掌握術なんて役にも立たず、上級貴族というだけで上に立ったと反発していた隊員たちが、次々と決闘を挑んできた。


 もちろん、全て返り討ちにして黙らせたが。


 それからは、隊員たちとランティスは、信頼し合い、背中を預けあってきた。


 ベルトルトとランティスは、その時からの付き合いだ。


「ランティス様?」


 メルシアが、瞳を瞬きすれば、まるで眩しいものでも見たかのように、ランティスが、オリーブイエローの瞳を細めた。


「……騎士になって良かったと思っている」

「……それなら、良かったです。あと……魔獣が、紛れ込んで来て襲われそうになった時、何回か助けてくれましたよね」

「……なんのことかな」


(今更、隠すこともないのに)


 今ならわかる。あの当時、ランティスに、メルシアは、何回も助けられたのだ。

 その度に、名前を名乗ることもなく、すぐにいなくなってしまったけれど。


 街中なのに甲冑姿だった上に、一言も喋らなかったから、少し変わった騎士様だな、とメルシアは、思っていた。


 その騎士が、まさかランティスだなんて、夢にも思わなかった。


「事実、半分は俺だが、残りの半分は」

「え、半分?」

「……ち。あいつ、このタイミングで来たか」


 二人のいた部屋の扉が、勢いよく開いたのは、ランティスが、ラティの姿になったのと、ほぼ同時だった。


もちろん、遠くで見ているだけで、済むはずはないのです( ^ω^ )


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