長期休暇はモフモフとともに 6
フェイアード侯爵家に連れ帰られたメルシアは、集まって来た侍女たちに、瞬きするほどの間にランティスのシャツに着替えさせられ、ベッドに寝かされた。
メルシアの額に温かくて大きな手が触れる。
魔力がそっと流れ込んでくるのを感じて、メルシアは少し気を抜くだけで閉じてしまいそうになる瞳を開く。
「……メルシア。命に別状はない。念のため治癒師を呼んでくるから」
「――――ランティス様」
「少し、席を外すが……」
「ランティス様……。寒い」
寒さと、上がりかけた熱と、先ほど感じた恐怖のせいで、ひどく心細くなってしまったメルシアは、ふらふらと上体を起こし、ランティスの上着の裾をつかんだ。
「怖い。行かな……で」
「……メルシア」
次の瞬間、メルシアは温かい体に抱きしめられて、押し倒されるようにベッドに沈んでいた。
まるで、ラティがそばにいる時みたいに、ランティスの体温は高い。
「…………そうだな、もう逃げるのはやめよう。俺が逃げ続けたせいで、君を守れなかったようなものだ」
「ランティス様?」
「すまない……。メルシアが、無事で……。無事でよかった」
きっと今、ランティスは泣きそうな顔をしているに違いない。震えた声が、そのことをメルシアに告げている。
抱きしめられた体は、徐々に体温を取り戻していく。
温かくて、幸せで、申し訳なさ過ぎて、メルシアは思わず泣きそうになる。
ベッドの上で抱きしめられているという恥ずかしさよりも、なによりも、温かくて、魔力が枯渇しかけた体はもう限界で、メルシアの瞳は半分以上閉じられる。
「く……。先に謝っておく。許してくれとは、言えないが」
次の瞬間、ランティスの体が、ひときわ強く熱を帯びる。
フワフワの感触と、変わらない温かさ。
気がつけば、メルシアの横にはラティが擦り寄っている。
まるで、もう絶対に離れないとでもいうように。
「――――ランティス様?」
「ワフ…………」
呼び方が違うとでもいうように、ラティは不満気だ。
メルシアは、思わずラティの太い首元に腕を回して抱き着く。
「ラティ」
「ワフ!」
この状況から考えられることなんて、どう考えても一つしかない。
けれど、メルシアの思考はそこでいったん区切られる。
急激な眠気と、温かい幸せ。
「ラティ……」
メルシアは、抗いがたい夢の世界へと落ちていった。
そう、モフモフ騎士様なのです( ^ω^ )
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