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六星高校妖怪研究部~ようこそ、妖研へ!~  作者: 望月おと
【ようこそ、妖怪研究部へ!】
3/22

妖怪研究部 ➁

 すると、小さな穴からいくつもの亀裂が入り、バリンッ!と大きな音を立て壁は跡形もなく砕け散ってしまった。そして、現れた空き教室の扉。聖海の胸が高鳴る。妖怪研究部について知る権利を会得した瞬間。それは同時に聖海が【選ばれし者】であることの証明。


 何をやってもうまくいかない自分が、何の取り柄もない自分が、何も持っていない自分が、この手で道を切り開いた。聖海にとって、初めて得た達成感だった。


 偽りの壁を壊した右手で扉を開けた。足を踏み入れた空き教室は、もともと教室として使用されていたようだ。黒板と教卓、生徒たちが使用していた机や椅子がそのまま残されている。しかし現在は、赤色の三角コーンや黒・黄色のテープが交互に巻かれたポールなどが置かれ、物置と化している。


 室内には部長を含め、四人の生徒がいた。黒板の前の教壇には腕組みをした部長が立っており、窓の冊子に腰を下ろしているのは顔だけ現れた赤髪の男子生徒、その近くの席に小柄な黒髪の男子生徒が座っていた。彼らの中にいる唯一の女子生徒は美しいお手本のような姿勢で部長の右隣に置かれた椅子に腰かけていた。だが、みんな呆気にとられた表情で時間を忘れたように聖海を見つめている。


 「あ、どーも。はじめまして」異様な空気だったが、部長以外の生徒とはまだ挨拶を交わしていない。自己紹介を始めようとしたところ、十時十分の眉毛をした部長が迫ってきた。


「お前、何を使った!?」

「何も使ってません! 部長さんと同じように手を壁につけただけですよ! そしたら、バリーンっと。ズルは一切してないです!」


 強引に掴まれた手。部長の整った顔にジッと見つめられ、聖海の頬が赤く染まっていく。彼は疑り深い性格のようで、角度を変えては何度も聖海の手を確認している。一方の聖海も眉目秀麗な部長の顔から目が離せずにいた。肌がキレイで睫毛が長い。私よりも部長のほうがお肌の調子がいい気がする……。勝手にショックを受けている聖海に首を傾げつつ、部長は手を離した。


「まさか、あの結界を【素手】で解くとはな……」

「彼女の力、甘く見ていましたね。(いかづち)くん」


 座っていた椅子から立ち上がり、市松人形そっくりな容姿をした小柄な女子生徒がやって来た。立ち姿から、ただ者ではないオーラがある。童顔で少し幼くも見えるが、彼女の澄んだ 大きな瞳には意志の強さが宿っていた。身長が小さいことを気にしてか、5cmほど底を増したシークレットブーツを履いている。それでも156cmの聖海よりも少し身長が低く、元の身長は150cmないのかもしれない。


「私は、妖怪研究部副部長 水守(みずもり) (なぎさ)です。身長は小さいですが、学年は、あなたの一つ上になります。よろしく」

「あ、よろしくお願いします! 私は、立花 聖海です」


 本人も気にしているようだから、副部長に身長のことを話すのはやめておいたほうがよさそうだ。先ほど顔だけ現れた赤髪の男子生徒が窓の冊子から腰を上げ、こちらへ歩いてきた。遠めでも大きい人物だと思っていたが、近くに来たら見上げないと彼の顔が見えないほど大きい。190cmはあるかもしれない。ワイシャツを第三ボタンまで開け、中に着ている黒のタンクトップが見えている。首元にはドクロのついたシルバーのネックレスがギラリと存在感を放っている。ズボンの裾はダボダボで腰からシルバーのチェーンがぶら下がっていた。


 不良のような見た目をしているが、話した印象からそんなに悪い感じはしない。むしろ、気さくで

フレンドリーな人物だ。


「ンなに硬くなんなって! 俺は三年の風見(かざみ)颯志(そうし)。【颯ちゃん】でいいから! よろしくな、立花!」

「……なに、【颯ちゃん】て。初対面で呼べるわけないでしょ。風見さんこそ、硬くなったほうがいいよ」

「うわっ!? ビックリしたー!! えーすけ、お前マジで存在感無さすぎ! ただでさえ、おチビちゃんで視界に入らないのに」


 ムスッとした不機嫌な顔で彼は風見を下から睨みつけていた。確かに190cm近くある風見からすれば、彼は小さく映るだろう。聖海とそんなに視線は変わらない。若干、彼のほうが少しだけ高い。160cm~165cm辺りだろうか。目鼻立ちがしっかりした整った顔で、やや釣り目の猫目。涼しげな表情をしている。黒髪が似合う男子生徒だ。


「本当、デリカシーのデの字もない。あ……俺は、黒波(くろなみ) 影助(えいすけ)。君と同じ学年だから。よろしく」

「うん、よろしくね」


 軽く咳払いをすると、部長が「まだ名乗っていなかったな」と自己紹介を始めた。


「改めて、俺が妖怪研究部部長 (いかづち) 龍人(りゅうと)だ。……正式にお前を妖怪研究部の部員に招待する。──ようこそ、妖研へ!」


 部長の声に合わせ、他の部員達も「ようこそ、妖研へ!」と彼女の入部を歓迎した。


 ここへ来るまでは、妖怪研究部はオカルトチックで変な部活だと思っていたが、妖研の人たちと話してみて、自分で体験してみて、今は面白そうな部活だと聖海は感じていた。


「私、妖研に入部したいです! みなさん、よろしくお願いします!」


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