表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六星高校妖怪研究部~ようこそ、妖研へ!~  作者: 望月おと
【ようこそ、妖怪研究部へ!】
19/22

同時特殊召喚


 部長は攻撃を避けながら、長々と【型】を書き連ねた和紙をねじり、左手の人差し指と中指で挟んだ。


「”同時特殊召喚、【火雷(ホノイカヅチ)】・【析雷(サキイカヅチ)】”!!」


 投げ放たれた和紙は青白い炎を(まと)い、ごうごうと燃え盛る。次第に炎は小さな赤い竜と白い竜へと変化した。これで三対二と形勢は逆転。部長は電流を飛ばし、赤い竜【火雷】は雷を炎に変え口から発射、析雷は雷の爪を敵に飛ばして攻撃した。


「くっ……」

「なかなかやるな……」


 それでも鬼たちには大きなダメージを与えられない。「これでもダメか……」室内戦に向いているあやかしはそういない。屋外であれば、もっと強力なあやかしも召喚できるが、この狭い室内では火雷と析雷が最大限の戦力だ。


 火雷と析雷は日本神話に出てくるイザナミノミコトの腐乱した体から生まれたとされる八柱の雷神の内の二つで、火雷は胸、析雷は股に生じたとされている。雷が起こす現象を示す神とも言われている。同時に八柱の雷神を召喚すると、イザナミノミコトを召喚できるという伝説が雷家に残されているが、かつてそれを成し得た者はいない。部長の祖父でも同時召喚は六体が限界だった。


 通常召喚と異なり、同時召喚は倍の妖力を消耗する。召喚する数が増える事に倍になっていくため、術者にかかる負担も相当なものになる。六体も同時に召喚できた部長の祖父。彼が【最強】と言われ、妖術師会の長と認められていた理由もこれだ。だが、部長は四体同時が限界。並の召喚師では難しい数だが、六体同時を経験している祖父からすれば、まだ足元にも及ばない。「お前が後継者とは……」と部長は祖父に言われ続けてきた。部長にとって祖父は越えたい壁であり、越えなければいけない壁。目の前の鬼たちに負けている場合ではない。


「ならば、我らも本気を出せねばな!」

「覚悟なさいな!」


 二体の鬼から蒸気が立ち昇っていく。沸々と妖力が沸騰している音が聞こえてくる。人の姿から完全なる鬼へと変貌を遂げた彼らの体格は、先程より二倍近くも大きい。はち切れんばかりの筋肉は鋼の輝きを放ち、さきほどにも増して体の強度が増していそうだ。


 部長も攻撃を強めたいが、背後には聖海がいる。万が一、強力な技を弾き返され、避けた先に聖海がいたら──即死も有り得る。背後を庇いながらでは、思うような攻撃は繰り出せない。


「あらら、 先程までの威勢はどうしたの? 攻めてみなさいよ! ……ほら、ほら、ほらっ!!」

「そんな生ぬるい攻撃など我らには効かぬぞ!!」


 部長に焦りの色が滲む。火雷と析雷にも、それは伝わっていた。鬼たちの攻撃を(かわ)し、反撃を繰り出すと部長たちは間合いを取った。


「俺たちを召喚しといて、敗北は許されないぜ? 分かってんだろうな?」

「そうですよ。私も嫌ですからね。あっちに戻って他の連中にバカにされるのは」

「……では、火雷様も析雷様も竜ではなく、【ヒト】の姿になっていただけませんか?」

「あー、その手があったか!」

「神は【竜】だと考える人間に合わせて、この姿で参りましたが……。いいでしょう」


 バチバチと電流を放ちながら、二体の竜は人型に変化していく。神というのは、実質を持たないため、信仰する者によって形が変わる。析雷も言っていたが、【万葉集】や【日本霊異記】の伝承には中国の雷神信仰の影響などから、雷神は竜や蛇の姿と関連づけて考えられている。それに合わせ、彼らは竜の姿で現れたのだろう。


 火雷は燃えるような赤い髪に筋肉質な武闘家の男性に、析雷は長い水色の髪に忍び装束を着た男性にそれぞれ変化した。


「いいねー! 手足があるってのは自由だ!」

「そうですね! こちらの方が先ほどの何倍も速く動ける」

「お二方ともよろしくお願いします!」


 「当然」の声と共に二人は鬼たち目掛け、駆け出した。まさに電光石火の速さ。鬼たちが反応する前に一撃、また一撃と攻撃を与えていく。鋼のボディとなった鬼たちも雷神二人の攻撃を受けては平気でいられない。


「おい、雷の! 叩くなら、今だぜ!」

「一気に片をつけましょう!」

「そうですね!」


 三人同時に印を結び、「来雷落雷(らいらいらくらい)!」と叫んだ。どこからか暗雲が現れ、鬼たちの頭上に立ち込めると、地響きを伴った雷鳴と共に縦に激しい閃光が落ちてきた。逃げる暇など与えないほどの速さ。あれを直に受けては鬼といえども再起不能だろう。室内に漂う不快な焦げた匂い。鬼たちは黒焦げの状態で畳に伏せていた。


「これで仕舞いだな」

「あなたにしては上出来でしたね、雷の」

「ありがとうございます。力を貸してくれたことに感謝します」

「いいってことよ! これが俺たち、神様の仕事だからな!」

「火雷、何を言ってるんです? あなたはただ暴れたかっただけでしょ?」

「析雷こそ、『腕が鳴る』ってニヤニヤしてたくせに」

「なっ!? 戦闘狂なあなたと一緒にしないでいただきたい!」

「お二方とも、お疲れ様でした!」


 部長が一礼すると、いがみ合っていた火雷も析雷の姿も消えてなくなった。これで残るは、聖海が戦っている能面の鬼のみだ。部長は背後で奮闘している聖海に視線を移した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ