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六星高校妖怪研究部~ようこそ、妖研へ!~  作者: 望月おと
【ようこそ、妖怪研究部へ!】
12/22

ルームメイトの素朴な疑問

 鬼の目撃報告を受けてから五日が過ぎた。妖怪研究部は未だに何の手がかりも掴めていない。鬼たちは、どこへ姿を隠したのだろうか。


 六星高校の学生寮は二人一組で使用している。聖海にもルームメイトはいるのだが──


「……あのさ、もう少し離れてくれる?」

「妖研について話してくれるなら、離れてあげる!」


 聖海の口から、ため息が溢れる。先日ルーム替えがあり、ミステリー研究部の倉持と同室になってしまった。部屋の左半分が聖海のスペースで右半分が倉持のスペースとなっている。壁側に設置された勉強机で本を読んでいた聖海の背後に倉持が立っている。状況だけ見れば、倉持が家庭教師で聖海が生徒のような図だ。


「そもそも、なんで倉持さんはそんなに妖研に(こだわ)るの?」

「それは──」

「気になるから? でもさ、誰にでも【プライベート】ってあるじゃん。踏み込んでほしくない時もあるし」

「そうだよね……ごめんなさい」


 倉持は聖海から離れ、自身の壁側に置かれた勉強机の椅子に腰かけた。


 「──私ね、怪奇現象を見たことがないの」突然のカミングアウトに、壁側から倉持のほうへ聖海は体を反転させた。


「でも、ミス研のみんなは見たことがあるみたいで、【ミス研なんだから、見えなくてどうする】っていう空気が部内に流れててさ……」

「そっか……。それで妖研の謎を解明しようとしてるの?」

「うん! 怪奇現象は見えなくても、立派に謎を解き明かせることを証明したいの!!」

「なるほどね。その気持ちは分からないでもないけど……」

「それじゃ、妖研について教えてくれる!?」

「いいえ。それとこれとは、話が別。まぁ、お互い部活頑張ろう!!」

「はぁーあ……何か聞き出せると思ったんだけどなぁー」

「【百聞(ひゃくぶん)一見(いっけん)()かず】って言うし、人に聞くより自分で感じないと。見えなくても、何か感じたりしない? 例えば、背筋がゾワッとするとか」

「全然」


 どうやら倉持には霊感という類いのものは皆無らしい。散らかっている彼女の机の上を見ても、細かいことを気にするタイプではないのが分かる。それが霊感と繋がっているかは定かではないが、繊細な人ほど周囲に敏感だったり、少しの変化にも気づけたりする。どちらかと言えば、聖海は後者に当てはまるだろう。サバサバした性格ではあるが、割りと周りの変化に敏感だ。


 聖海の携帯が振動を始めた。ディスプレイに表示された文字を見て、聖海は部屋を飛び出した。倉持も聖海の後を追おうと部屋から出たのだが、背後から水守に呼び止められてしまった。


 本日は土曜日。学校は休みだが、部活はある。妖研メンバーは雷家に集合することになっており、寮を使用している水守は聖海と一緒に行く約束をしていた。


「立花さん、居ます?」

「あ、水守先輩。おはようございます。立花さんなら、今しがた電話が掛かってきて部屋から出ていきましたよ。私の勘では、妖研の部長からの電話だと」


 「そう」と短く答え、水守は聖海が消えた方向へ視線を向けた。倉持が言う部長からの電話だという可能性はゼロに等しい。部活動に関する電話なら、確実に聖海ではなく、副部長である水守に部長は電話するだろうし、妖研メンバー以外に聞かれたくない伝言であれば、妖力がある者にしか見えない式神を使って行うはずだ。


「私は先に図書館に行ったと立花さんに伝えてください」

「わかりました。あの……水守先輩」

「何か?」

「どうして、立花さんと仲良くなったんですか?」

「ふふ。可笑しなことを聞きますね。お友だちになるのに理由は必要ですか? ()いて言うなら、私と彼女の【趣味嗜好(しゅみしこう)が似ている】からでしょうね。では、ごきげんよう」

「ご、ごきげんよう……」


 水守は、校内一お金持ちとして有名なお嬢様だ。これまで彼女に友人がいたことはない。皆、彼女の肩書きに寄ってくるだけ。それが理由で、水守は友人を作ることをやめた。近づき難いお嬢様キャラを貫くことにより詮索の手を遠ざけ、自身が妖研メンバーであることを隠している。


 「……水守先輩と立花さんの共通する趣味って、一体……?」見えなくなった水守の背に倉持は質問を飛ばした。


 聖海が寮へ戻ると、部屋の前で倉持が待っていた。


「水守先輩から伝言をあなたに預かった。【先に図書館に行く】って」

「え!? 水守先輩、わざわざ迎えに来てくれたの!? 悪いことしちゃったなぁ……」

「ねぇ、どうして水守先輩と仲良くなれたの?」

「どうしてって……【趣味嗜好が合うから】かな」

「水守先輩に聞いても、同じ答えが返ってきたけど、私はその【趣味嗜好】が気になってるの!!」

「あー……」


 数日前、水守から提案され、聖海と水守は趣味繋がりで友人になった設定になっている。実際は妖研繋がりなのだが、(おおやけ)には出来ないため、【友人】ということにした。これから先、同じ女性部員として聖海と水守は行動を共にすることが増えるだろう。急に親しくなっては周囲から怪しまれる。そこで、徐々に距離を詰めていこうということになった。


「それで、水守先輩とは何繋がりなの!?」

「本繋がりと、ハーブティ愛好会の仲間なの。ハーブティは外部の会だから、先輩と会った時は驚いちゃって。そこの副部長さんなんだよ、水守さん。だから、つい【()()()】って呼んじゃうんだよね」

「ハーブティ……確かに、水守先輩の好物」

「あ、ごめん! 副部長を待たせてるから、私もう行くね!」

「ちょっと、立花さん!? はぁー……。私も水守先輩とお友だちになりたいなぁ……」


 水守は女子生徒から憧れの眼差しを向けられている。気品があり、いかにも【お嬢様】という雰囲気が彼女にはあるからだ。だが、聖海以外の生徒は彼女の()()()姿()を知らない。


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